人気口コミサイトで上位に表示してもらうための広告費はスーパーボウル以上に割高
by yuki*
口コミサイトを参考にしてモノを購入する人は結構多いため、その影響力を期待してマーケティングを行う企業は少なくありません。しかし、専門家によると、口コミサイトへの広告はただただ割高なだけで意味がないケースがあり、表示される回数あたりの広告費で比較すると、アメリカで多くの人が観戦するNFLの優勝決定戦「スーパーボウル」のハーフタイムに流されるCMよりも割高となっています。
Yelp advertising is a rip-off for small advertisers | VentureBeat
近年、アメリカで注目を集めている口コミサイトに「Yelp(イェルプ)」というサイトがあります。どのようなサイトかというのは、こちらの説明がかなりわかりやすくまとまっています。
アメリカで大人気のクチコミサイト-Yelpとは? | サンフランシスコのWebコンサルティング会社 -ビートラックス- スタッフブログ
日本からアメリカに出張等で来られた方々からよく耳にするのが、 “Yelpがめっちゃ便利だったよ。あれのおかげで良いレストランが簡単に見つかった。” の言葉。Yelpとはアメリカではかなり人気の、レストランやローカルなお店等のクチコミ情報サイト。多くの人がお店探しを行う際にまず訪れるのがyelp.comであり、予定が決まった際に友達に場所をメール等でお知らせする際にも、Yelpのお店リンクを送るのが一般的。
日本でのレストラン系クチコミサイトと言えば、食べログやホットペッパー等が挙げられるが、実際にYelpと比べてみると、コンテンツ内容や使い易さを始め、多くの点においてYelpの方が利用価値が高いと感じられる。また、お店によってはサイトが無くても、Yelp上のプロフィールページがあれば十分であると考えられている程、アメリカではYelpが定着している。
San Francisco Restaurants, Dentists, Bars, Beauty Salons, Doctors
http://www.yelp.com/
reDesign mobileのメインアナリストであるRocky Agrawalさんは、小規模なビジネスを営んでいる事業主と話をすると、「口コミサイトに広告を出すとデタラメなほどお金を請求される」ということを耳にします。上記のYelpは特にそのやり玉に挙がるサイトで、多くのネット広告のCPMが60セント(約46円)なのに対して、Yelpは地元広告主には600ドル(約4万6000円)というCPMを請求しているそうです。「CPM」とはCost Per Milleの略で掲載1000回あたりの料金のこと。つまり、地方でお店を営んでいる人がYelpに広告を載せようとすると、1000回表示ごとに4万6000円かかるということで、1回表示させるのに46円かかる計算になります。これは通常のバナー広告の100倍の価格です。
これがYelpのページの一例。ココにバナーを掲載するためのCPMは6ドル(約460円)。このバナーをクリックすると、出稿している企業のサイトへ移動したり、キャンペーンページへ移動したりできるわけです。
一方、こちらが地元のお店向けに行われているターゲット広告事例。特定の地域を検索した際に表示されるお店リストのトップに表示されるもので、ここのCPMが600ドル(約4万6000円)。今回は「New York」というフレーズで検索しました。
クリックした時に移動するのはYelpの中のお店情報ページ。お店のサイトが独自にあったとしても、そちらへリンクすることはできません。
実際にYelpへ出稿したことがある企業によると、価格は下記のようなパターンになっています。
月300ドル(約2万3000円)=500回表示
月540ドル(約4万2000円)=1200回表示
月825ドル(約6万4000円)=2100回表示
月1100ドル(約8万5000円)=3000回表示
この「500回表示」というのは、検索結果のリストの上の方に固定表示される回数。この回数分だけ表示されると固定は外れ、検索結果の元の位置に戻っていきます。
割高なプランだとCPMは先ほどの話に出てきた600ドル、最も割安になるプランでもCPMは367ドル(約2万8000円)。ちなみに、広告効果が非常に高いことで知られるNFLのスーパーボウルのCPMが35ドルなので、見られる数が同じならスーパーボウルで30秒のスポットCMを10回流せるということになります。
さらにひどいことに、Yelpはこのレートで12ヶ月契約が必要になります。あくまで広告は表示回数に基づいたものなので、たとえ1人もクリックしなかったとしても、Yelpは1回の契約で最低3600ドル(約27万8000円)を得られるということになります。
他のサービスと比較してみると、例えばFacebookの場合は予算が1日1ドル(約77円)というところから実施可能、最低契約期間という縛りもないため、1週間お試しでやってみて本格的に実施するかどうかを考えるという使い方ができます。Agrawalさんはグルーポンにはかなり厳しいそうですが、それでも「グルーポンにしておきなさい」とアドバイスするレベルで、Yelpに出稿してプラスになるというシナリオは思いつかないとのこと。
表示回数ベースで価格が決まっているようなネット広告について、Agrawalさんは他のサービスを考えるのも手だとアドバイスしています。例えば、レストランなら、誰かがサービスを使ったときだけ広告料を支払い、契約も不要なGrubHubのようなサービスを使う方がマシです。
Yelpの通常バナーの価格設定は特にヒドイというほどのものではないのですが、Yelpにとって不幸なことに、その収益の70%が先ほどのターゲット広告(地元の小事業主が出稿している)によるもの。直近の四半期で、Yelpは利益が前年比74.5%増、前四半期比で11.7%増と大成長を遂げています。しかし、ビジネスモデルのコアの部分がこのようなメチャクチャな価格設定になっていると、今後、投資家や出稿している広告主がYelpに「一つ星」を付け、見限って去ってしまうまで長くはかからないのではないかと、Agrawalさんは指摘しています。
ちなみに、上記の話はあくまでYelpでの事例なので、その他の口コミサイトでも同じだとは限りません。そもそも日本のネット広告相場はアメリカの1/3程度だそうですが、口コミサイトはみんなこうやってバリバリ稼いでいるのでしょうか……。
・関連記事
「アイテム課金」や「二重価格」の問題点を消費者庁がついに公表 - GIGAZINE
これからは人を軸に情報が流れるようになる、佐々木俊尚が語る「次世代テレビ」「脱テレビデバイス」「ミドルメディア化」 - GIGAZINE
Amazon.co.jpの悪質なレビューを削除するサービスが登場、価格.comや楽天も対象に - GIGAZINE
メーカーの「信者」は本当にいるのか?成長著しい「価格.com」を運営するカカクコム社でいろいろ聞いてきた - GIGAZINE
ネット上にあるリスクの芽を見付けたり風評を迅速に把握して報告してくれたりする「ネット風評被害バスターズ」 - GIGAZINE
・関連コンテンツ