インタビュー

ゲームの「音屋さん」になるための心得、タイトー「ZUNTATA」インタビュー


以前、海外の大手ゲームサイト「1UP.com」が選んだ「ゲーマーなら知っておきたいゲーム音楽における10人の名作曲家」という記事をお伝えしました。ここに選出されていた土屋昇平さんが所属するタイトーのサウンドチーム「ZUNTATA」に、インタビューする機会ができたので、ゲームサウンドクリエイターのお仕事について、たっぷり聞いてきました。

今回インタビューするZUNTATAのメンバーは以下の3名。

株式会社タイトー ON!AIR事業部 開発部 サウンドクリエイター 石川勝久さん


小塩広和さん


土屋昇平さん


◆「ZUNTATA」のメンバーはこんな人たち

GIGAZINE(以下、G):
タイトーのサウンドチームが、ZUNTATAとして活動を開始するようになった経緯について教えてください。

ZUNTATA 石川勝久さん(以下、石川):
私は1990年入社なんですが、タイトーのサウンド開発専門部署というのは、1983年ころからあったそうです。1987年にアルファレコードから「TAITO GAME MUSIC Vol.2 ダライアス」というタイトルのレコードが発売されることになったのですが、それを機に、「チーム名をつけてみたらどうか」という話が出て、ZUNTATAという名前がついたと聞いています。

G:
ゲームコンポーザーになり、ZUNTATAに入るまでの、各自の経緯について教えてください。

石川:
入社前は日本電子専門学校という専門学校でレコーディングエンジニアの勉強していました。学校が東京にあって、周りに沢山ゲームセンターがあったもので、学生時代はよくゲームセンターに通っていましたね。それから、新卒で1990年にタイトーに入社しました。ここにいる3名の中では、唯一曲を作らない、効果音を作ったりサウンド全体を調整するサウンドディレクターという職種です。いつの間にか私がZUNTATAでは最古参になりました。

G:
専門学校に入った時から、ゲーム音楽の仕事がしたいという気持ちはあったのですか?

石川:
そういう考えがあったわけではありませんでした。ゲーム音楽に興味を持つようになったきっかけは、もともと中学生のころからバンドをやっていて、中学のころはまだゲームに興味も無かったんですが、高校時代に友人にゲームセンターに連れて行かれたんです。それまで私は、ゲームの音楽なんて「ピコピコ音」だと思っていたのですが、ゲームセンターではFM音源の音が流れていて、驚きました。

当時ヤマハがDXシリーズというFM音源を採用したシンセサイザーを発売していて、キーボードをやっていた子たちにとってはあこがれのキーボードだったわけですが、そのキーボードと同じ音がゲームから流れていました。それ以来、ゲームというよりゲーム音楽にハマってしまいまして、すっかり「ゲームミュージックオタク」になりました。


G:
1980年代の半ばころでしょうか、当時からゲームセンターではFM音源が使われていたのですね。

石川:
ちょうどFM音源を各社が取り入れ始めたころですね。それまでファミコンも持っていなかったので、ゲームにはアーケードから入った形です。アーケードからというよりも、アーケードの音からですね。実際、友人と一緒にゲームセンターに行っても、ゲームをやらずにスピーカーに耳をくっつけて音を聴いていることも多かったです。

ZUNTATA 小塩広和さん(以下、小塩):
私は大学院を卒業してからタイトーに入社したのですが、大学のころから音の仕事につきたいと考えていました。なおかつそれが、ゲームだったらいいな、とも思っていました。作曲についてはそれを専門の仕事にしようとは考えていませんでした。作曲というよりは、音作りをするということを目指していました。

大学は当時の名称で九州芸術工科大学、現在の九州大学の芸術工学部ですね、そこで音響設計というのを学んでいました。音響設計には音に関するあらゆることが含まれます。例えば、ホールの音響を設計したり、騒音制御のような分野も学ぶのですが、私が専攻したのは音響心理学でした。簡単に言えば、「どんな音が気持ち良いか」を考える分野です。気持ち良い音はどんな成分を持っていて、不快な音はどんな成分を持っているのか、そういうことを研究していました。


就職の時には、もともとゲームが好きだったので、ゲームの仕事に就きたいなと思っていたのですが、中でもアーケードに強いタイトーで、サウンドデザインがしたいと考えました。アーケードというのは筐体があって、周囲の環境を含めてサウンドデザインの対象になりますから。そんなことを面接でも言っていたら、運良く採用となりました。

ZUNTATA 土屋昇平さん(以下、土屋):
私はもともと別の会社でゲームの音楽を作っていたのですが、タイトーには2008年の8月に中途で入社しました。ZUNTATAに入る、という意識はなく、タイトーのサウンド部門に入社したということですね。

◆サウンドクリエイターに聞く、音楽の素晴らしいゲームタイトル

G:
ゲーム音楽に興味を持ったきっかけとなったタイトルは何でしたか?

石川:
タイトーのタイトルを挙げるとカッコイイんですが、本当のきっかけは違って、セガの「カルテット」というタイトルと、カプコンの「セクションZ」というタイトルがきっかけでした。この「セクションZ」のBGMを作っていたのが、実は後にZUNTATAのメンバーとなる河本圭代さんなんです。この2つのタイトル、プレイ自体はそこまで極めるほどにはやっていないんですが、曲については誰よりもよく聞きましたね。

1/5 Quartet(SEGA) - 1CC - YouTube


[HD] Section Z 1985 Capcom Mame Retro Arcade Games - YouTube


小塩:
石川とは10年くらい歳が違って、世代も違うんですが……


石川:
見えないでしょ。私のほうが上なんですよ(笑)

小塩:
そういう話は置いておいて(笑)

私の世代は完全にファミコン世代で、ファミコンの初期の頃に入って、スーパーファミコン、初代PSと遊んできた世代です。大体の周りの人間はドラゴンクエストとファイナルファンタジーをやっていましたね。その中で、当時としては珍しく、家にPC98があったんですが、それにドラゴンクエストの楽譜を打ち込んで、鳴らして楽しんでいたのが、ゲーム音楽に興味を持ったきっかけだったのかな、と思います。

G:
初めにプレイしたドラゴンクエストは1ですか?

小塩:
私は「ドラゴンクエスト2」からでした。なぜか楽譜が手元にあって、小学校の1年生か2年生からPC98をいじっていました。

FC ドラクエ 2 オープニング - YouTube


土屋:
私と小塩が大体同じ世代で、家庭用世代です。ずっとゲームをやっていました。こう見えてゲーム好きなんですよ。でも、ゲームの音楽が特別なものっていう意識は無くて、普通に街で流れているほかの音楽と変わらない感じで受け取ってきました。

G:
やはりファミコンからゲームに入ったのでしょうか。

土屋:
ファミコンも持っていましたが、最初はセガのマークIIIですね。きっかけとは違うんですが、ゲーム音楽がすごいと思ったタイトルとしては、「R4 -RIDGE RACER TYPE 4-」「ストリートファイター 3rd STRIKE」「ビューポイント」の3つです。これらはゲーム音楽としてエポックメイキングな作品で、印象深いタイトルですね。

「リッジレーサー4」で言うと、車のゲームなんですが、とにかくオシャレです。雰囲気づくりや、走っている感覚を表現するために、それまではロックだったりテクノだったりっていう音楽を使っていたところを、まったく違う角度から表現していました。ジャンルで言うとハウスとかなんですが、ハウスを入れたからどうだという話ではなく、「レースゲームの音楽はこうだ」という固定概念を変えることができた、ということがスゴイですね。

【PS】R4[RIDGE RACER TYPE 4]最速の車「ユートピア」でタイムアタック - YouTube


「ストリートファイター 3rd STRIKE」もそうで、格闘ゲームには各社やはり「アツイ」感情を入れようとするんです。「アツイ」とか「激しい」という「動」のイメージの曲が主流だった。それに対して、「3rd STRIKE」では「静」のイメージの曲が入ってきた。裏路地で闘っている感じとか、闘いの中の虚無感みたいなものを音楽で出してきた。それはこれまでの格闘ゲームの音楽がまったく見ていなかった方向でした。使われているHIPHOPも、偽物のHIPHOPじゃなくて、本物のHIPHOPがゲームから流れている。度肝を抜かれましたね。

(Demo) ストリートファイターIII 3rd STRIKE / SF III 3rd Strike (C)Capcom 1999 - YouTube


「ビューポイント」はクォータービューでやるシューティングです。ものすごく難しくて、私もクリアできないです。1992年の作品ですが、敵が幾何学模様だったりして、そういう意味でも奇抜な作品でした。個人的にはシューティングが特に好きとか嫌いってことは無くて、普通にプレイする程度なんですが、「ポピュラス」とか「シムシティ」みたいな、斜め上から見る視点ってけっこう好きっていうのもあります。

その斜め上から見る感覚に加えて、曲に当時最先端だった音楽を普通に持ってきているタイトルでした。まだ日本ではそういう音楽を作っている人があまりいなかったのに、それがゲームで流れてきたんです。

NEO-GEO Viewpoint Stage-1 - YouTube


石川:
これ、ネオジオですね。サントラも出ています。

◆入社して初めてのお仕事

G:
ZUNTATAに入って最初に取り組まれた作品は何ですか?

土屋:
タイトーに入ってからは、「ファンタジーコロシアム」の効果音ですね。それまで作っていた音とはまったく違って、けっこう大変でした。それまではコアユーザーに向けての音作り、深く深く作っていく方向でした。それがタイトーに入ると、バラエティが豊富なんです。ターゲットが小学生であったり、女性向けであったり。今となってはデバイスなんて関係無かったりしますが、いろいろなデバイスを対象にしますし。すごく幅広いゲーム制作が求められるようになりました。

小塩:
当時、まだ入社したばかりで、そんなに大きな仕事は任せてもらえなかったんですが、開発に同期がいて、彼が携帯電話用のFlashゲームを作ったんです。それに曲をつけたのが、初めての作曲の仕事でしたね。当時Flashが流行りだしたころで、会社でもFlashでいろいろなものを作ってみようという方向になっていました。実はその曲はiTunes Storeで配信されていますので良かったら聞いてみてください。「タイトーモバイルフォンゲームサウンドコレクション Vol.1」収録の「Blink Your Heart!」という曲です。あ、恥ずかしいのでやっぱり聞かなくて良いです(笑)
入社して半年くらいのころ、2005年の秋くらいのことです。


石川:
初めて効果音制作で関わったゲームは、1991年の「メタルブラック」でした。中学生からバンドをやっていて、ゲーム音楽にハマってからはアレンジとかはやっていたんですが、効果音というのは作ったことがなかったですね。ただ、専門学校で勉強していたので、レコーディングエンジニア的な知識は少しだけありました。……でもそれが活きているかっていうと、そうでもなくて、むしろゲーム音楽のオタク的な知識のほうが役に立っています(笑)

ゲームミュージックオタクなんで、ゲーム音源チップのこととか大好きなんですよ。FM音源の型番であったり、チャンネルはいくつあってとか、学校に通っていたころに主に勉強したのはそこでしたね。タイトーのF2ボードという基板がありますが、実はあれはネオジオと同じ音源チップを使っているとか。そういう無駄な知識が今に活きています(笑)

メタルブラック デモ~1面~ボーナスステージ - YouTube


G:
効果音作成について、それまでやってきた音楽の作り方とはまったく違うものだったのでしょうか。

石川:
全然違いますね。「メタルブラック」はシューティングゲームですが、シューティングゲームには独特の効果音の作り方があって、特にアーケードでは聞こえないとダメなんです。自分で撃つ弾の音、弾が当たっている音、弾が当たって壊れる音、それが分からないと、爽快感が薄れてしまいます。

しかも敵がいっぱい出てくるので、それをどんどん撃って破壊していかなきゃいけない、ということを、音でも分からせる必要があるんです。「アタック」を立てる必要があるんですね。音のアタックが立っていないと、連射したときに音のピークに行かずに音が終わっちゃって、「シュワッ」みたいな音だと「シュ」で終わっちゃったりする。だから「ピュ」にして、アタックを立てる。すると連射しても「ピュピュピュ」って聞こえる。

爆発音も「ボワーン」じゃなく「チュドーン」にする。すると「チュチュチュチュドーン」になる。そういう感じで、シューティング独特の作り方っていうのがあるんです。そういう部分は、メタルブラックの作曲をした渡部恭久さんに教えてもらいました。

土屋:
それはすごく感じます。石川さんたちとアーケードの仕事をするようになって、一番感じたのはアーケードと家庭用の違いですね。家庭用はやっぱり静かなところでプレイできるので、言ってしまえば、制限無く音を出せるんです。アーケードの制限は、容量とかの制限ではなく環境的な制限なので、その中でどう楽しめる音を作るのかってところですね。

私が今まで作ってきた音と比べると、石川さんの音はすごく短いんですよ。すごく短いので、単品で音だけ聞くと「これはどうなるんだろう?」っていう感じ。でも、実際に操作してみると「ああ、なるほどな」って思う。そこは面白かったですね。

G:
初めてサウンド制作チームに入って仕事をすることになった時、驚いたことや困ったこと、楽しかったことなどを教えてください。

土屋:
初めて作ったゲーム音楽はXbox用のタイトルで、「効果音を全部やって」って言われて、Xbox用のツールがあるんですが、その使い方もまるで分からず、ゲームの音の演出にはどういった素材が要るのかがまったく分からない状態で放り出されました。それまでずっとプレイヤーとしてゲームをプレイしてきたんですが、いざ自分が作るとなると、どうしたら自分がプレイしてきたゲームのような形が組み上がるのか一切分からなくて、ずっと困っていました。


G:
誰かが教えてくれたりしないのですか?

土屋:
まったく教えてくれなかったですね。プログラマーさんに相談したり、ディレクターに「音がついてないぞ」って言われて「音自体はあるんですが、どう組み込んだらいいか分かりません」ってところからスタートしました。そうして何本か作るうちに、音や素材を作るだけじゃなくて、どうつけていけばゲームというのは音で楽しめるんだろう、という意識になってきたかな、という感じです。

G:
すごく基本的な質問なのですが、出来た効果音やサウンドを組み込むのも、サウンドチームが行う仕事なのでしょうか。

土屋:
各社によって全然違うところだと思いますが、プログラマーさんか、サウンドチームが行います。ただ、最終的な組み込みはプログラマーさんじゃないとできません。我々としては、ある程度想像しながらの作業で、ここに当てようという感じで音を聴きながらゲームをやって、「こういう感じで鳴らしてください」と言ってプログラマーさんに渡します。

ただ、最近はゲームの作り方も多様化していて、ゲームのサウンドであればこう、という決まった作り方は存在しなくなっていると思います。各社でバラバラでしょうね。

小塩:
土屋の話にもありましたが、ゲームにサウンドを入れるにあたっては、サウンド用の開発ツールが必要になるんです。それは携帯電話用もそうですし、家庭用もそれぞれのハードに対応したツールがあります。もちろんすべての使い方を理解するのは大変なんですが、逆に私はツールを触るのが楽しかったです。

私自身、サウンドを志す以前は、ずっとプログラマーになるものだと思っていて、プログラムの勉強もしていたんです。なので、そういうツールをいじるのがすごく楽しくて、当時、DSやWiiといったの最新ハードのサウンドツールは、周りの人も誰も使い方を知らない状況でした。石川に聞いても「いや、知らない。勉強してやってみて」といって、ツールとマニュアルを渡されただけ。で、なんとか研究してみて「これはこう使うんですよ、石川さん」みたいにフィードバックする。それはすごく楽しかったですね。


小塩:
あと、音作りとあまり関係ないんですが、悩んだことがひとつあります。入社した当時、小倉久佳さんと仕事をすることが多くて、小倉さんが作曲をして、私が効果音を作るんですが、小倉さんはいつも作曲をしているので、作った音を聴いてもらおうと思っても、声をかけて良いタイミングがまったく分からないんです。一回、悪いタイミングで声をかけたみたいで、すごく怒られました。

大体みんな、ヘッドフォンをつけて集中して作業しているので話しかけづらいし、そう言うときはたいてい話しかけて貰いたくないんですよ。私自身もすごく集中してやっている時に声をかけられたら、表には出さないけど、「なんだよ!」って思いますし(笑)。小倉さんはけっこうそういうところをはっきり言うタイプで、そういうタイミングを掴むのは難しかったですね。やがて、休憩の後とか、朝礼が終わったタイミングとか、節目節目で声をかけるタイミングを掴めるようになりました。

石川:
私の話は古いですよ(笑)

サウンドチームに入ってまず驚いた所は、意外と音楽的ではない、プログラム的な開発環境でサウンドを作っているなという点です。私の入社したころの時代は、基板にROMを焼いて挿してという世界だったので、現在のようにキーボードで弾いた曲がそのまま鳴ってそれがそのままゲームに乗っかるなんて、夢のまた夢の世界だったわけです。

当時は、基板に直接PCを接続して、MMLと似た感じの、数字とコマンドの組み合わせで音楽を打ち込んでいくんです。MIDIですらなくて、Cのオクターブ上とか、ビブラートはどういう感じでかけて、ピッチベンドをどうかけてっていうのを、すべて数字とコマンドで表すんです。曲を一部分作ってコピーするっていうのも、今であればセレクトしてスポッとはめ込むことができますが、当時はそんなことできなくて、データが格納されているアドレスを指定して、何番地から何番地までを何番地にコピーする、みたいなコマンドを使って、すごくプログラム寄りの音作りをしていました。

そういうのを、当時小倉さんや渡辺さんはスイスイ入力していて、今でも人気のある名曲たちを作っていたので、あれはまさにもう、職人芸だな、と。ちょうど私が入った後からMIDIが使えるようになってきたので、私はあまりそういう環境では作っていないんです。何本かはやりましたが、今やれと言われてもできないですね。


G:
そうした環境で音楽を作る時は、いったん別の環境下で音楽を作り、それをプログラムに打ち込んでいくものなのでしょうか。

石川:
そうですね。人によってそれぞれだと思いますが、ピアノとかギターで曲を作って、楽譜に手書きで曲を書いて、それを見ながらプログラムに落とし込んでいくんです。途中の手順を省略して、基板をひとつの楽器のように使う人もいましたね。それでも、80年代のころは、タイトーの音楽開発環境は他社に比べて結構進んでいたと聞いたことがあるので、他社さんはもっとスゴイ状況で制作していたかも知れません。

◆ゲーム音楽ができるまで

G:
ゲーム音楽の制作について、ZUNTATAがいつもどのようなフローで音楽を作っているのか教えてください。

石川:
まず、「サウンド仕様を切る」という作業があります。こういうゲームがあるよ、というのがゲームのディレクターから知らされて、ディレクターとサウンドの担当者が話して、「ここはこういう音が要るよね」「曲は何曲くらい要るね」ということを相談して決めます。このリストが「サウンド仕様」です。

それが出来たら、そのリストにもとづいて、音を作っていく。ゲームが出来てから音を作れればいいんですが、ゲーム開発ってそういうわけにはいかないので、ゲーム開発の進行と同時にサウンドの制作も進めていきます。これは昔からそうですね。どんな感じかなと、ゲームを想像しながらサウンドを作るんです。大変なんですが、意外とこのミスマッチがうまい方向に運ぶこともあって、ゲームが出来上がってから作ったのでは絶対に起きないような化学変化を起こすこともあります。ゲーム音楽の面白さでもあります。

G:
ディレクターから、ゲーム音楽の相談はどれくらいのタイミングで来るのでしょうか。

小塩:
ゲームによりますが、最近の音ゲーだと、サウンドチームが企画の段階から入ります。音楽系のゲームだと、ゲームシステムからサウンドチームが入っていますね。私も仕様書を書いたりします。


G:
曲の方向性を決めたりするのは、どんなタイミングで決めるのでしょうか。

土屋:
これはもう人によって様々です。私の場合は、ゲームの世界観とか雰囲気を、自分の曲のほうに引き寄せちゃいたいほうなので、わりと早い段階でイメージ曲を作ってしまって、「こんなイメージで行きましょう」という話をします。後からゲームに合わせて曲を作るというよりは、ゲームにより色濃く自分の音の演出を組み込みたいという想いですね。あんまり煮詰まっていない段階なら変更が効くので。そのほうが作っていて楽しいですね。

小塩:
私は逆で、何も無いところから作るよりは、なんでもいいから企画書とか、ストーリーとか、絵とかをもらいたいですね。できれば音楽の制作期間を後ろにしてもらって、ある程度絵とか素材が出そろってから作り始めるほうがやりやすいです。

石川:
だから君はギリギリになるんだな(笑)

土屋:
実制作として、音楽がプロダクトの後ろのほうの工程になるのは間違いないです。ただ、私の場合はゲームを手中に収めたい気持ちが強いので、「こうした方が面白くなるんじゃないの?」という話をして、自分のイメージを組み込ませたいという。

G:
やはり先にイメージ曲を提示すると、ゲーム全体の雰囲気というのも変わってきますか?

土屋:
変わってきますね。やはりそれを聴いて作るので、変わります。最初すごく明るくて、キャピキャピしてたのに、すごく枯れた曲を「メイン曲です」って言って持っていったら、なんだか最終的には良い哀愁みたいなものが漂うゲームになったりとか(笑)

もちろん全部が全部そうじゃないし、ディレクターによっては「そうじゃないよ」って返される場合も多々あります。

◆ゲーム音楽制作環境の変遷

G:
入社当初を振り返って、制作環境は現在までにどれくらい変わってきたのでしょうか。

石川:
私はゲームサウンドの歴史を目の当たりにしてきたような感がありますね。ゲーム基板で直接音楽を作ってきた時代がまずあって、それからMIDIで作った音をコンバートできるようになって、その後に、演奏したものをそのまま流すストリーム再生が可能になりました。この20年で、3世代くらい変わりました。FMがあって、PCMがあって、ストリームがあってという。

G:
その変化は、どのようなタイミングで起きたのでしょうか。

石川:
やはり家庭用に引っ張られているのかも知れません。最初はファミコンとかの、PSG中心の時代があって、メガドライブとかが出て来てFMの時代になって、PCMの時代はアーケードが花形でした。その後、初代PSでCD-ROMになって、家庭用でもすごい音が出せるようになりました。家庭用がアーケードを引っ張っていく部分もあって、今はアーケードもみんなハードディスクですから。ただ、携帯電話向けのゲームは現在でもそんなにメモリが使えないので、フィーチャーフォンとかは今でもMIDIからコンバートしていたりします。

G:
土屋さんの時代になると、開発は初代PSからでしょうか?

土屋:
初めてやった効果音がXboxなので、PSで言うとPS2からです。私の場合はもう、当時から変わったことは無いです。本当にわずかに、メモリが増えたとか、PS2の時代でもややメモリが足りなくて、劣化した効果音を使わなくちゃいけなかったりしたんですが、でも本当にその程度のものです。制作ツールに至っては、ほとんど変わっていないと言ってもいいくらいです。

石川:
そう言われてみれば、「サウンドツールがある」ということが一番大きな違いかも知れません。そもそもファミコン時代は任天堂から正式なサウンドツールは提供されていませんでしたし、スーパーファミコンの最初にあったサウンドツールはすごく難しくて……。

土屋:
スーパーファミコンのツールの悪夢というのはよく聞きますね。

石川:
PSでは大幅に変わって、音楽的にすごく使えるサウンドツールだったんですが、それまではプログラマー寄りのツールでした。アーケードに至っては、もちろんツールなんて無いので、自社で作るしかありませんでした。そういう意味で、ツールがあるということ自体がスゴイなと思います。メーカーから、音楽的に使えるツールが提供されるだけで、もう天国みたいな時代だなと。昔は各メーカーでドライバを起こして、ツールも作らなくちゃいけないという時代でしたから。

土屋:
そこは本当に一番大きいかも知れないですね。CPUの進化でいろんな表現ができるようになってきたっていうのは、ゲームの世界だけじゃなくてどこでも同じことなんですけれど、ツールっていうものに目覚めて、そういうものを使うことでゲームが作りやすくなるんだっていう部分に気づいたっていうのは、本当に大きなことだと思います。


石川:
PSのサウンドツールがMacで使えるものだったんですが、もうMacで音作りができるっていうことで、いたく感動したのを覚えています。「うわー、Macでゲームの音作れちゃうんだー」っていう。それはすごい感動でしたね。

土屋:
PS2の開発ツールはすごくホコリに弱かったりしましたが、使いづらいとかっていうことはまったく無くて、そういう意味では、ありがたい時代に入ったなという感じです。

石川:
スーパーファミコンのツールは、UNIXのワークステーションが必要だったんです。一応GUIはあったんですが、すごく大変でした。触ってみたいでしょ?

小塩:
うん(笑)

石川:
だから、当時のサウンド開発に携わっていた人間は、けっこうプログラマーとしての側面を持っていると思います。アセンブルが分かる人たちが多いのかなと。

◆「ゲームコンポーザー」じゃなくて「音屋」です

G:
ゲーム音楽の作曲が、他のジャンルの作曲と比べて、特に違う点について教えてください。

土屋:
例えば、アニメーションや映画やドラマのように、映像に音をつけるジャンルと比べれば違うところは無いと思います。ループをしたりとか、そういう部分はありますが、それも途中で止めることができないわけじゃないので。イントロがあってアウトロがあって、曲が普通に終わってもいいんです。

ただ、ほかの業界と圧倒的に違うのは、ゲームの音楽というのは自由だということです。ほかのジャンルには流行や慣習、制作の常識を踏襲しなければいけない事情が多いと思います。そういった、こういう時はこうするものだという常識が、ゲーム業界には無いんです。自由に、よりいろいろな表現を採り入れることができます。それは作り方にしてもそうですし、実際に作られる音についてもそうです。それがゲーム音楽らしさですね。

小塩:
2点あります。ひとつはゲームのサウンド担当としての関わり方ですね。アニメーションなどのコンポーザーは、曲を作ることに多くの時間を割くと思います。それに対して、ゲームのサウンド担当は違います。特に私は、作曲している時間は、そのタイトルに関する仕事のうちで、全体の半分くらいです。

そのほかの時間は何をしているのかというと、ディレクターとの相談であったり、企画の会議に参加したり、サウンドの鳴らし方を検討したり、組み込まれたサウンドを調整したりとか、そういう部分に多くの時間を使います。作曲だけやってるわけじゃないんです。

もうひとつは、ゲームの音楽というのは基本的に長い時間鳴らされます。特にアーケードだと、デモ音楽がずっと鳴っていますから、聴いていて不快にならないような音作りをしなくてはいけない。あんまり不快な音だと、店のほうで音を下げてしまいますから、元も子も無くなってしまうわけです。だから、音が流れる状況や環境までを考慮して、音作りをしなくちゃいけない。そこがほかのジャンルと違うところだと思います。


石川:
ゲーム音楽っていうのは、音楽であればどんなジャンルであろうと作れるし、乗せられます。クラッシックであろうと、ロックであろうと、歌謡曲であろうと、どんなジャンルでも構わないわけです。そういう意味では、ほかのジャンルとの違いというのはありません。

ただひとつ、小塩も土屋も、コンポーザーとして作曲もするんですが、それ以上にゲームのサウンド全部を作るサウンドクリエイターなんです。業界では「音屋」と言われています。ゲーム全体の音の設計から関わっていくのが、ほかのジャンルと違うところだと思います。

多分、映画とかだと、効果音を作る音響の人と、曲を作るコンポーザーは別の人だと思います。我々も曲と効果音で別の人間が作ることはありますが、基本的には同じ部署の人間で、曲をこうしてるなら効果音はこうするとか、効果音をここで切ってるなら、曲はここで鳴らすのを止めておくか、というような判断も自分たちでできる。作品自体に深く関わっていけるというのが、ほかのジャンルと大きく違う部分かも知れません。

土屋:
大きな会社では分業が進んでいますが、基本的にはゲームのサウンドクリエイターは、ゲームサウンドに関わるすべてを見ることができなくちゃいけない。ゲームに音を演出する人間が、同時にその音自体も自分たちで作っているわけです。作曲ってどうしても目立ちやすいんですが、それだけでなく、音に関わるすべてを演出している、という点は、ゲームサウンドクリエイターにとって、一番重要ですね。

ゲームのことをあんまり考えずに曲だけ作っている人というのはあまり見たことが無いです。音に関わること、大体すべてやっているのが、ゲームの「音屋」さんだっていうことですね。

石川:
ゲームの音楽をやりたいっていう人は、よく「ゲームコンポーザーになりたい」って言いますが、実際には、曲作りはそれほど重要ではないんです。

土屋:
重要なのは、どういう音の世界を構築していくかなので、そこに曲が必要なら作曲するし、必要じゃ無ければ描かなくていいんです。音声だけのほうがこのゲームは面白くなるというのであれば、曲は無くてもいいわけです。どういう音の世界にするかを考えて、それを実行するのが、「音屋」さんの一番重要な仕事です。


◆「音屋さん」を目指す人たちへ

G:
前の質問とかなり重なる部分があると思いますが、ゲームサウンドクリエーターを目指す人にとって、最も重要な資質は何だと思われますか?

小塩:
目指す人へのアドバイスという形になりますが、大事なのは「ゲームのサウンドを作りたい」のか、「曲を作りたい」のか、そこをはっきりさせることだと思います。曲を作りたいのであれば、ゲームにこだわる必要は無くて、アニメでもいいし、目立つためならニコニコ動画で曲を公開したほうが目立てると思います。

ゲームサウンドというのは、世界のあらゆる音を作るんです。そしてゲームの中で、作った音がきちんと鳴るように調整したりすることも必要になります。そこが一番大変だったりするんです。例えばボイスは録音しただけでは聞こえないし、BGMとのバランスも調整しなくちゃいけない。なので作曲だけやっていればいいということはないんですね。

私が入社した当時、石川に言われた言葉が「作曲したいならほかへ行け」ということでした。


石川:
そうだっけ(笑)

小塩:
なんでいつも忘れてるの! 入社してまだ間もないころ、一緒にご飯を食べに行って「小塩はなにをやりたいの?」って聞かれて、「大学でもやってたし、ゲームのサウンドデザインがしたいんです。なのでそれが曲作りであろうと効果音であろうと何でもやりたいです」と答えたんです。すると「でも、曲が作りたいって思ってるんじゃないの?」と聞かれたので、「曲が作りたくないと言うとウソになりますが、そこに拘るつもりはありません」と答えました。その時に「それならいいけど、曲を作りたいなら、ほかへ行ったほうがいいよ」って言われたんです。

曲作りはたしかに花形ですけれど、本当に重要なのはそこじゃない。それ以外の部分も関わっていける能力というのは、重要な資質だと思います。あと、放っておくとゲーム開発というのはどんどん進んで行くので、「そこの音おかしいよ!」って言わないと、おかしいまま出荷されちゃったりするんです。だから、自分から積極的に関わらないといけない。これも重要な資質のひとつだと思います。


G:
作曲家というよりは、音響監督みたいな側面があるんですね。

小塩:
音響監督というのは適切な表現だと思います。

石川:
あとは、就職セミナーみたいな話になっちゃいますが、コミュニケーション能力というのは絶対必要です。ゲームが好きで入ってくる人の中には、人付き合いがうまくない人っていうのが、やっぱり一定数いるんです。ゲームだけを見続けて、ゲームだけをやりたくて入ってきたという人ですね。そういう人は、すごく専門的な高い能力を持っていても、ゲーム開発というのはプロジェクト作業なので、それをうまく使いこなしてくれる人がいなくてはいけない。

例えば土屋が言うように、サウンド開発をする上で、「ゲームをこういう風にしていきたい」と思ったとして、それまでにディレクターなりと信頼関係が築けていれば、サウンドのアイデアも聞いてくれる可能性が高いわけです。それが無いのに、初対面で「こっちのほうが面白い」と言ってもなかなか乗ってきてくれなかったりします。自分の意見を通すためにも、コミュニケーション能力というのは非常に重要だな、と思います。


土屋:
一番重要でしょう。

小塩:
ありがちなのは、「音で語るんだ」っていう、それは通用しないですね。良い曲を作れればゲームコンポーザーになれる、というのは神話みたいなもので、それは違います。

石川:
例えば小倉さんなんかはまさしく独自の世界を音で作るんですが、その独自の世界をゲームに乗せるために、ディレクターと延々と話し合っていました。それこそいつまで話してるんだっていうくらい。これはもう昔からそうです。

小塩:
そういう意味では本当に音響監督なんで、監督にあたる人とは密接にコミュニケーションを取らなくちゃいけないわけです。

G:
サウンドクリエイターになるなら、こんなことを勉強しておいたほうがよいということはありますか?

土屋:
単品で何かを作るというのは、どうでもいいことだと思っています。我々の仕事は、何かに音をつけることなので、曲が作れる、効果音が作れるというよりも、何かに音をつけたいと思うかどうかが重要なんです。曲が作れるということと、絵にはめられるかというのはまたちょっと違う。そこは演出とか、想像力の範疇です。

学生中にゲーム制作の経験があればそれにこしたことはないのですが、ゲームを作る仲間を見つけるというのはすごく難しいと思うので、いろんな人と一緒に、カメラで映像を撮ったり、舞台をやったりとか、複数人で何かを創り上げる経験が重要だと思います。自分のための曲じゃなくて、なにかに対して音をつけるということですね。我々の仕事は単品では存在しませんから。


小塩:
技術的な話で言うと、ゲームサウンドを目指す人の中には、本当に曲作りしかできない人もいるんですが、エンジニア的な知識を多少なりとも身につけておいて欲しいと思います。この話の中でもいくつか専門用語が出て来ますが、そのくらいの用語は理解しておいてもらいたいですね。あと、例えばPCが音を録音する時にどういう機材が必要なのか、設定はどうすればよいとか、こういった最低限の音制作の知識は必要です。

石川:
なにかひとつ、誰かのマネではないオリジナルのものを、ひとつ最後までやりきるということをやってみて欲しいです。曲でもなんでもいいんですが、モチーフをちょろっと作ってはやめてとか、コピーやアレンジに終始するんじゃなくて、自分でアルバムを一枚作っちゃうとか、ちゃんと最後までなにかを作ってみて欲しいです。

アマチュアの時は、イヤならやめちゃうことが出来るんです。その中で、意外と最後までやり切ることが出来る人って多くないです。本当に、どんなに小さな物でもいいから、形に残る物を、オリジナルで作りきるというのは、良い経験になると思います。

小塩:
ついでに期限も決めてやるといいですね。

土屋:
それは君に言いたいよ(笑)

小塩:
やってるって!

◆「ダライアスバースト」の音楽について

G:
「ダライアスバースト」の音楽について、作曲の過程やエピソードを教えてください。

石川:
「ダライアスバースト」のPSP版は、私がサウンドディレクターで、小塩と土屋の2人に曲を作ってもらいました。2人には、今までのダライアスを意識しないで、まったく新しいものを作ってくれと言ったんです。それでも、ターゲットとなるユーザーの想定から出てくる、漠然としたシューティングの不文律みたいなものは守りたいと思っていて、世代の違いからか、そこが上手く2人に伝えられませんでした。何か違うな、っていうのが心の中にあって、でもそれがなかなか言葉にできなかったんです。

今思えば、私はシューティング全盛時代の根底にあったものを守りたかったんだと思うんですが、それが当時伝えられなくて、2人には何度も理不尽なリテイクをお願いしてしまいました。すいませんでした。


小塩:
ちょっとそこの謝罪は別のところでやりましょう(笑)

石川:
でも、2人は最終的にリテイクからそれを掴んでくれて、すごくいいものになって、2人に助けられた形です。そういうこともあって、アーケード版の「ダライアスバースト アナザークロニクル」では、土屋にサウンドディレクターからまるっと任せられるという感じになりました。

土屋:
PSPの時は、ダライアスというものがどういうものか、よく分からなかった部分もあると思います。石川さんやディレクターとよく噛み合わない時もありました。でも、作ってて面白かったです。

実際、ほかと何が違うかって、結局は要求度が高いってことだと思うんです。ハードルが高いというか。このシリーズについては、お仕事っていう部分にプラスアルファ、プラスアルファプラスアルファ……くらいのものを作れってことだと思います。もちろん、どんなゲームも独自の世界観を表現したいとどんな音屋さんも思ってるはずですが、その基準をはるかに超えて、現実としてそれを表現しなくてはいけないタイトルなのかな、と思います。

G:
ダライアスは前作「G」から12年の時を越えての新作ですが、曲のイメージみたいなものはあったのでしょうか。

土屋:
曲のイメージというのはある程度ありました。今回の主人公はプレイヤーがそのまま主人公になっています。その人たちは、なにかスゴイ人ではなく、一般の兵士なんです。自分たちはスゴイ人間ではないけど、このチャンスに星を奪還したいという希望と、初めて宇宙に飛び立って敵と対峙する時の恐怖みたいなもの、そういう人間の心情を想像して作りました。

G:
機体に乗っているパイロットに焦点を当てているんですね。

土屋:
曲を作るときは、いろんな所にスポットを当てていくんですが、今回は、そういう人間が乗っている戦闘機を乗っている人間プラス第三者的な視点からも見る、というところに視点を置いています。女神の歌に導かれて、本来勝てるはずのない戦いに勝てたりとか、でも途中で恐怖が襲ってきたりとか、そういう心理の紆余曲折を表現したいと。だから、乗っている人そのものの視点だけではなく、そこから一歩離れた第三者的にもそれを見ている、という感じです。

G:
今回は3つのステージで一周が構成されていますが、3つのステージを貫通してひとつの曲になっているというのも、そうした意図の表れでしょうか。

土屋:
感情は途切れないですから。戦っている本人たちは、いつ戦いが終わるのか分からない。ボスがいるっていうのも分からないし、自分の戦いが、戦争を終わらせるために寄与できているのかという疑問も湧いたりする。そういう感情は、途切れず常にわき出ていて、それを忘れようとして戦ったり、いろんなことを考えながら戦っているわけです。

そういう意味で、曲もステージ毎に途切れる必要は無いと考えていて、気づいたらこんなに長くなっていました(笑)

◆ゲームサウンドクリエイターの仕事場

G:
それでは、ZUNTATAの仕事場を見せていただきたいと思います。

小塩さんの机。


小塩:
僕はこのキーボードはすごく好きで、シンプルに見えていてその実いろんな機能を持っているんです。ただ残念なことにすでに製造されていないんです。これが無いと仕事が出来ないので、予備にもう一個持っています。奥にある、ガチャピンが寝てるキーボードは、かつて小倉さんが使っていたものですね。

G:
あれが数々のダライアスサウンドを生み出してきた……

小塩:
使ってたのはけっこう最近なんで、ダライアスは多分別のやつだと思います(笑)


石川さんの机。


土屋さんの机。


土屋:
曲によって、ギターやベースを弾くこともあります。ちなみにこのキーボードはつまみが全然無いんで、あまり好きじゃないんです。そういう意味では人によりけりなんですよ。現在のゲームサウンドクリエイターの仕事場は、ほかのサウンドの現場とほとんど変わらないものになっていると思います。ギターとキーボードがあって、オーディオインターフェースがあって、スピーカーがあって、ヘッドフォンがあって。ほぼというか、まったく変わらないと思います。私はハード系をあまり使わないので、机の上にはあまり置いていません。

G:
ありがとうございました。

なお、下のムービーでは、土屋さんや小塩さんをはじめ、18名のアーティストによる「ダライアスバースト」の楽曲アレンジCD「ダライアスバースト リミックスワンダーワールド」の一部を聴くことができます。アレンジCDなだけに、なおさら作曲者の個性が際立っています。

アルバム「ダライアスバースト リミックス ワンダーワールド」全22曲試聴ムービー ‐ ニコニコ動画(原宿)



なお、小塩さんと土屋さんが、タイトー期待の新鋭ゲームデザイナー石田礼輔さんと協力して作り上げたiOS用アプリ「グルーヴコースター」では、ZUNTATAのサウンドを存分に活かした音ゲーを楽しむことができます。土屋さんによるダライアスバーストの名曲「Good-bye my earth」をはじめとした数々のタイトーゲームミュージックも収録。

Groove Coaster「Good-bye my eartn」プレイムービー - YouTube


iPhoneやiPadの画面を、タイミングよくタッチするというシンプルなゲームです。


操作は単純ですが、アバター(アイコン)の動きは複雑で、耳でしっかり音をとらえないと、目で追うだけではタイミングが掴めません。


ステージの各所でターゲットのほかに音が出るポイントが仕込まれており、ターゲットの無い場所でタッチするアドリブ演奏も可能。


ステージを高ランクでクリアすると、新たなアバターが解放され、様々な効果がゲーム中で発揮できるようになります。


◆収録曲
1.The Beginning -Implantation-
2.Music Plot Type Zero
3.Play merrily
4.Streetwalker
5.Not get wish
6.Revenge Of Arkanoid (GC Edition)
7.Happy Smiling♪-More Happy Mix- (GC Edition)
8.Breach of faith
9.Invade You (GC Edition)
10.Neptune Diving (GC Edition)
11.You've Gatta Luv (GC Edition)
12.I CANNOT APE (GC Edition)
13.Fun-House
14.檄 (GC Edition)
15.Cardiac Rhythm
16.Spring to mind
17.Eurythmics Trip
18.The Beginning -Embryo-
19.Good-bye my earth (GC Edition)
20.Space Invaders Infinity Gene Medley
21.The Beginning -Birth-

また、渋谷O-EASTで開催された「ダライアスバースト アナザークロニクル」のライブを収録したCDが、10月31日に発売予定です。


◆収録曲
1.Good-bye my earth -Live version with Remi-
2.The world of spirit -Live version with Remi-
3.DBAC MIX (1:オチツイタキモチ~2:Baptize Silver Hawk~3:Abyssal Holic~4:粛々ト敵ヲ撃破~5:Abyssal Dependence)
4.DARIUS Classics(1:COIN~2:CHAOS~3:Say Papa~4:Visionnerz + 5:Self~6:G Zero +7: Adam~8:Fake~9:A Flashing Dual Hawk~10:Boss7)
5.組曲 光導 第一曲 鉄の化石 -Live version-
6.組曲 光導 第三曲 稲妻と剣 -Live version-
7.組曲 光導 第五曲 暴君 -Live version-
8.ENCORE1:Hello 31337 -Live version-
9.ENCORE2:組曲 光導 第六曲 導き -Live version-

●グルーブコースター:
(c)TAITO CORP.1978,2011

◆ライブCD:
(C)TAITO CORPORATION 2010,2011 ALL RIGHTS RESERVED.
(C) 2011 ENTERBRAIN, INC.

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in 取材,   インタビュー,   動画,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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