獲物を確実に死に至らす、地球上で最も凶悪な7つの矢毒
例えば毒を持ったカエルなど、ある種の動植物が毒性を持っていることは広く知られています。そして人類は時に毒にやられ、時に毒を利用して生きてきました。この記事では毒性を持った5つの植物、毒カエル、毒を持つ昆虫といった合計7種類の「毒矢」に使う「矢毒」をリストアップしています。
多くの毒が持つマヒ特性は獲物の運動性を大幅に奪うので、南米やアジア、アフリカの部族にとって矢に毒を塗ることは直接的な利益がありました。獲物をより素早く確実に仕留めるために旧石器時代より毒を利用してきた人類の歴史に思いをはせてみるのも一興かもしれません。
7 Deadliest Arrow Poisons on Earth - Neatorama
https://www.neatorama.com/2011/06/23/7-deadliest-arrow-poisons-on-earth/
1:トリカブト
英名で「僧侶のフード」と呼ばれるトリカブトは、北半球の多くの部族によって使用されています。
インドのラダックでは野生のヤギを捕るために使い、中国では狩猟や戦争の道具として、そして北海道のアイヌ民族の場合はトリカブトを「スルク」と呼び、根や茎から抽出した毒を矢や仕掛け弓「アマッポ」に用いて鹿やヒグマを捕っていました。また、各家庭ごとに独自の秘密レシピを持っていたそうです。人や動物がトリカブトを大量摂取した場合はほぼ即死し、少ない量でも2~6時間で死に至ります。初期症状としては呼吸困難や嘔吐などが起こり、死因は心室細動もしくは心停止です。
アイヌの男性。
2:アコカンテラ・オブロンギフォリア
アコカンテラ属の植物はすべて有毒の樹液をもっていて、心毒性の配糖体を含んでいます。
この毒を塗った矢が生物に当たれば心停止に陥るので、トーゴやカメルーンの部族では猿や他の野生動物を狩るためにしばしばこの毒を使います。
銃を使うことで当局に警戒されるのを危惧する密猟者もこの毒を用いるそうです。また、アコカンテラの木はサン人がよく用いるので「サン人の毒」とも呼ばれます。ちなみに、サン人は南アフリカに9万人も住んでいるとのこと。
3:クラーレ
南米一帯の部族が何世紀にも渡って弓矢や吹き矢で用いてきた狩猟に使う毒物の総称が「クラーレ」です。地方ごとに成分は異なりますが、主にストリキノス・トキシフェラというマチン科マチン属の植物を毒矢として使います。この毒が獲物に作用すると呼吸筋が止まって窒息死するとのこと。なお、クラーレは医学分野で手術時の筋弛緩剤としても使われているそうです。
4:マチン
マチン属の木はブルシンとストリキニーネという2種類の毒性を持った化合物を緑の葉や丸い種子などに持っています。マチンは人類に知られている最も有毒な物質の1つなので危険を伴いますが、木は事前に花から悪臭を放っているので警戒しておくことが可能です。古くから殺鼠剤や殺人の道具として使われており、インドのアッサム州やミャンマー、マレーシアやインドネシアで何世紀にも渡って毒矢として使われてきました。
この画像では、シエラレオネに住むリンバ族の族長が鉄の矢の先にマチンの毒を浸しています。種子は1.5%のストリキニーネを含んでいますが、花や樹皮も毒を持っているそうです。人間や動物が毒にさらされると、麻痺に苦しんだ後に重度の痙攣が起き、最終的には死に至ります。逆に、健胃薬や熱病、消化不良の薬としても用いられているとのこと。
5:砂箱の木
常緑樹の一種である砂箱の木は、熱帯の北部や南米、アマゾンの熱帯雨林などに生息しています。
樹皮には多数のトゲがあり、それによって「猿が登れない木」とも呼ばれているそうです。漁師は川で魚を毒殺するためにこの木を利用し、カリブ海のカリブ人は乳白色の樹液を矢に塗ります。この男性はカリブを構成する部族の一つ「Kali'na tilewuyu」のメンバーです。
6:ヤドクガエル科
「矢毒といえばカエル」というほどに有名なのがヤドクガエル科の毒です。南米で発見されましたが、北米南部やハワイにも生息しています。バトラコトキシン、ヒストリオニコトキシン、プミリオトキシンといった3種類の神経毒を持つ種が存在し、中でもモウドクフキヤガエルという種は名が示すように強烈な毒性を持っており、ヤドクガエルのみならず全生物中最強の毒性です。
背中の皮膚に強力な毒性があり、毒が人間や動物などの体内に入ると筋肉や神経を萎縮させて死に至らせます。ヒストリオニコトキシンとプミリオトキシンはたった150マイクログラムだけで成人を殺すことができ、モウドクフキヤガエルが多く持っているバトラコトキシンの場合は人がそれに触れるだけで絶命してしまいます。あまりにも毒性が強いので、毒と接触したペーパータオルに触れるだけで鶏や犬は死んでしまうとのこと。また、モウドクフキヤガエルの毒は1万匹のネズミもしくは2頭のゾウを殺せるほどだそうです。画像はモウドクフキヤガエル。
コロンビア西部で発見された部族「Noanamá Chocó」と「Emberá Chocó」はこれらのカエルから抽出した毒を使用します。なお、興味深いことに飼育下でのヤドクガエル科はその毒性を失うそうです。
7:Diamphidia(サン人の毒矢の昆虫)
Diamphidiaはコロラドハムシの一種で、非常に猛毒です。内臓と幼虫が最も毒性が強く、カラハリ砂漠の北に住む部族が矢毒として使用します。毒は遅効性なので、大型動物の場合は死ぬまでに4~5日かかるとのこと。なお、そういった場合は弱ったところを直接殺すそうです。時折ほかの毒と組み合わせて使用することもあります。
サン人が細心の注意を払い、棒を使って粉末状にした幼虫と樹液を矢にすり込んでいます。部族によっては矢に直接幼虫を絞るところもあるそうです。
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