取材

小惑星探査機はやぶさの帰還をハリウッドが映画化した「はやぶさ/HAYABUSA」製作記者会見


2003年から2010年の7年間にわたり、地球と60億キロ離れた小惑星との往復ミッションをこなし、数々のトラブルを乗り越えて無事帰還した小惑星探査機はやぶさ。その感動的なお話はニュースとして大きく取り上げられたほか、松竹、東映、角川映画がそれぞれ映画製作を行っています。そして、国外ではハリウッドの映画スタジオ、20世紀フォックス映画も映画を制作中。5月25日にはクランクアップし、10月1日に公開の予定です。

この20世紀フォックスの「はやぶさ/HAYABUSA」にはJAXAも全面協力しているということで今回、JAXAの相模原キャンパスにて製作記者会見が行われました。

詳細は以下から。
映画「はやぶさーHAYABUSAー」公式サイト 10.1ROADSHOW
http://hayabusa-movie.com

会見の司会を務めたのは映画パーソナリティの襟川クロさん。

司会:
まず最初に映画「はやぶさ」の制作・配給会社である20世紀フォックス日本代表のジェシー・リーからご挨拶です。

ジェシー・リー:
20世紀FOXのジェシー・リーです。クロさんからあまり長くしゃべるなと言われたので、簡単に挨拶させていただきます。

司会:
言ってないですよ(笑)

リー:
今日、製作発表会を日本で一番宇宙に近いところであるこの場所でできることになって、嬉しく思っています。ハリウッドのスタジオである20世紀フォックスが日本で作る第1号の映画に「はやぶさ」を選んだのは、このストーリーの感動などが極めて日本的でありながら世界にも通じるメッセージなので、ハリウッドスタジオが日本で作る映画として最適だと思ったからです。今、大震災の後に復興のために頑張っている日本人の様子、そして世界を感動させた様子を、はやぶさにメッセージをのせて、日本から発信していきたいと思います。

司会:
続いてはアグン・インクの代表取締役、井上潔さんです。

井上:
「はやぶさ」の映画を作るということは、普通に考えると不遜なこと、恐れ多いことをやっているなというのがあります。最初にこの映画を作りたいということでJAXAにお邪魔して、國中先生とお会いしたとき、雰囲気があまり良くない中で「あなたたち、映画を作るんですか?」といわれて、お話を聞いてもらい、その後、JAXAの多くの先生や関係者の方々のご協力を頂いて撮影が続いています。スタッフ、キャスト、そして関係者の方たちが三者一体となって映画を作っている、というこれは普段は滅多にないことです。心の底から皆さんに感謝をしています。
映画は10月に公開されますが、これをまずは「はやぶさ」という名前を聞いたことはあるけれどもまだよく知らない、という人に見て欲しいです。ご覧になっていただければ、はやぶさがどれほどすごかったか理解していただけると思います。また、「はやぶさのことならたいてい知ってるよ」という人もいっぱいいらっしゃると思いますが、そういう人にも見て欲しいです。新しい発見がきっとあります。10月公開ということで、みなさんに映画館に足を運んでいただいてご覧になっていただきたいと思います。

司会:
JAXA宇宙科学研究所教授の國中均先生です。先生はイオンエンジンを開発し、はやぶさ帰還の際にはオーストラリアでカプセル回収の指揮を執られた方でもあります。

國中:
私どもは、はやぶさの運用を行ってきました。宇宙運用が7年間、開発が7年間、その前にイオンエンジンの基礎開発に7年間、全20年を超えるプロジェクトを遂行して参りました。活動の根拠としては宇宙科学技術の振興にあるわけですが、はやぶさ帰還の折には大変大きな反響を頂き、我々としてもびっくりしとしているというのが正直なところです。さらに映画の撮影ということで、いまだに当惑しているというのが現状です。
映画は、20世紀フォックスの取材に基づき、堤さんの監督指揮、西田さんや竹内さんの迫真の演技ですばらしい作品になっていると思います。今、日本は大変厳しい局面に立ち向かっています。この作品にエンカレッジする(鼓舞する)という作用があれば、はやぶさプロジェクトとしても本望です。

司会:
「明日の記憶」「20世紀少年」シリーズなど、多彩な作品を世に送り出す映画界の救世主、堤幸彦監督です。

堤:
救世主ではございません、スイマセン。たいがいのことは井上さんをはじめ、みなさんが喋っていることと同じです。日本が大変厳しい時代の中、このような偉業を成し遂げたはやぶさプロジェクトを追体験する映画に出会えて光栄だと思っています。今回の作品は、どのようにはやぶさができてきて、どのように宇宙に行き、どのように乗り越えていったかを、分かる範囲で完コピ(完全コピー)といってもいいぐらいに頑張って作り上げた作品です。たくさんの俳優が関わっていて、俳優の数の方がスタッフより多かったり、(俳優なのかスタッフなのか)区別がつかなかったりすることもあったり、そしてみんな魔術にかかったかのようにはやぶさ運用に関わる言葉や運用法を一員のごとくしゃべり合ったりアイデアを出し合ったり、映画の危機もはやぶさが危機を乗り越えたのと同じように越えていく作品です。大変な時期である日本にとって、ちょっとでも明るいものになるよう仕上げたいと思います。10月1日、劇場でご覧いただければと思います。

司会:
竹内結子さんは、広報兼はやぶさ運用スタッフの水沢恵を演じています。

竹内:
お越し下さってありがとうございます。役衣装と役メイクで撮影の合間に登場するということで、ちょっと不思議な感じです。(はやぶさについて)詳しくなったかどうか……そうですね、どうでしょうか西田さん(笑)
私自身は、大学でクレーターなどの地形学を勉強し、博士号を目指すもののいまだにいただけず、少し宙ぶらりんな生活をしていたところ、西田さん演じる的場先生にスカウトされた、ということで入構証を手に入れました。これを手に入れて(JAXAへ)通勤するのが楽しい毎日です。それが、あと1日で終わってしまう(クランクアップのため)のが残念です。
監督もおっしゃっていましたが、大変な時期の中、このような作品に出られるのは幸せなことです。はやぶさの7年間の出来事で、いろいろな人を元気にすることができたら嬉しいなと思っています。

司会:
宇宙科学研究所対外協力室長の的場泰弘を演じるのは西田敏行さんです。

西田:
過去にもいろいろな映画の製作発表に出ましたが、これほど大勢の方々を前にしてお話しするのはキャリアの中でも初めてです。これだけ多くの方が集まると、みなさんのはやぶさに対する思いがたくさんあるんだなというのを感じます。はやぶさが2003年に打ち上げられて2010年に帰ってくるまでの7年、このドラマは日本人のメンタリティの中にぐぐっとしみいる、忠臣蔵のような感じで位置づけています。あいつはどうなった、敵は討つんだろうかと、いうところまで追い詰められてきて、「大丈夫か!?」となったときにはるか宇宙の彼方から見えてくるはやぶさの姿、弱々しい通信、それに日本人はきゅんと胸打たれましたし、科学技術のすばらしさを改めて認識しました。ちょっと自信や誇りを失いかけている中で、はやぶさの帰還は快挙だと思っていますし、すばらしい技術に対して賛辞を送りたいと思います。この賛辞を送られる方の役をやらせていただいて、誇りに思っております。
竹内さんは一緒にやっていて太陽みたいな人だなと感じますが、その向こうにイトカワがあって、そこまではやぶさが行ったんだな、とそんなはやぶさに敬意を表します。なんといっても太陽までの10倍の距離で、イオンエンジンというかすかなエネルギーをスイングバイで増やしていく……スイングバイとか平気で使えるようになっている、そのあたりも見ていただきたいですね(笑)
ぜひ劇場にてご覧頂きたいです。おすすめしたい、今年の一番の映画になると思います。

司会:
ここで、みなさんから出そうな代表的な質問を私がまずお伺いしたいと思います。今回の役作りについてこだわった点はありますか?

西田:
実際に的場先生という方がいて、その方がモデルになっています。立派な体格で、メガネをかけていて、頭の薄くなり加減まで似ているかなと。背は先生の方が大きいですが、そういう(そっくりさんぽい)感じのキャスティングかな?と思いました。でも、先生の人柄に触れてみて、これは僕でないとできないなと思いました。

司会:
どういったところが似てらっしゃるんですか?

西田:
「温厚」、そして人間としてのキャパシティの大きさ(会場笑)慈愛の心(笑)いろんなお持ちで、これ(的場先生役)は他に考えつきませんね。

司会:
そのままもうパーフェクトですね。ちなみに、先生とは話してみてどうでしたか?

西田:
合ってすぐに10年の知己のように話し合いました。年齢も同年代なんですよ。

司会:
竹内さんはいかがですか?

竹内:
西田さんや國中先生は完コピというように話し方も姿も研究されている感じですが、私は架空の存在のようなもので、あちこちのポジションにお助けに行っている感じです。一番ノーマルな役柄だろうな……と思っていたんですが、監督と会って話をしたときに「まあ、あれですよ、撮影しながらエキストラさんに『役者はどこにいるんだ!』といわれるぐらいに存在感を消していただけると助かります」と言われました。「ただでさえ道を聞かれたりするタイプなので大丈夫だと思います」と答えましたけど(笑)
過去、宇宙に憧れは持っていましたが、宇宙はどういう世界なんだろうということでドキュメンタリーを見てみたり、川口さんの講演会を聞きに行ったりしながら役作りを進めていきました。現場では監督にしょっちゅう「目を見開いて下さい」と言われて、その演技がどういうふうに作用するのかというのは私も見るのが楽しみです。

司会:
それではここからは質疑応答の時間です。

日経セキハラ:
監督への質問です。竹内さんから(監督が)「存在を消して」と(言ったと)いうのが出ましたが、専門用語とびかう台本の中、演出上苦労した点、意識した点はありますか?

堤:
場面に応じてドキュメンタリー映像やNHKのニュース映像、写真など、それぞれの状況に応じ立ち位置であるとか、そっくりな方を集めて配置したりとか、そういうことをずっとしておりました。これは苦労というよりもすごく楽しい作業でした。専門用語も飛んでいますが、これはさまざまな先生にご協力いただき、言葉の抑揚も含めてご教授いただいています。子どものころから宇宙に憧れを持たない少年は居ないわけで、その気持ちをずっと引きずって生きていたわけですが、この映画を作っていく作業はそれがようやく一致する現場になったなと思いました。しゃべり慣れない言葉を喋る俳優さんは大変だったとも思いますが、おかげで楽しい現場になり、次の朝、俳優さんに集まっていただいて、編集したものを見てもらって「このような意図で進めているのか」と確認するのは非常に楽しゅうございました。
学者の立ち振る舞いに興味があり、面白い方々が集まって成し遂げられたとものの本から感じ取り、その面白さを具体的にやって頂こうと言うことで、これは私の思い込みかもしれませんが、ジーパンの中にシャツを入れてみようとか、(國中さんがスーツだったため)今日は堅苦しい格好でいらっしゃいますが、ちょっと見逃せない風体でみんなありたいと思っていますので、衣装合わせから研究していました。

司会:
メイクも映画なのに地に近いという感じですよね。

竹内:
一応、私、肩書き「女優」というものをいただいていて、ヘアメイクの支度時間が朝あるんですね。普通、どの男性陣よりも早く現場に入って、というのが多かったもので、今回はわりと男性陣とほぼ同じ時間帯に入り、ヒゲだけ剃ってないぐらいの時間のかけ方をしているのかというぐらいに早いです。気合いが入ると、家にあったヘアピンで髪をとめてくる、というぐらいです。

堤:
すみませんでした!

竹内:
まるでクレームをつけてるみたいですが、それも楽しいですし、一生懸命な恵の魅力だと思います。

エフエムさがみカワバタ:
昨年ははやぶさと東海大相模のおかげで有名になりました。キャンパスに通勤してみて、内外でなにか印象に残ったものはありますか?

竹内:
私はこのJAXAに通って近所においしいラーメン屋を見つけました。あと、購買部ではスペイシーなフードを売っています。……だめじゃん!相模原の魅力は、東京から直行することがほとんどなので、早く終わったら界隈でご飯を食べ、JAXAについたら社会科見学のような気持ちでうろうろしており……楽しいです。(魅力としては)世界に通じる技術を持った宇宙研究所があるということだと思います。

西田:
同様ですが、世界を驚かせたハヤブサの帰還を成功させた頭脳がここにいるんだなという感じで、市街地に入ってくると胸がきゅんとはるというか、なんだか誇らしい気持ちになります。緑豊かな敷地内に入ると、さすがJAXA、ぼくのマネージャーが見たこともない鳥を見たって言ってました。JAXAの方に鳥は飼っていますか?と聞いてみたら、飼っていないと言われましたが……さすがはJAXAだと思います。

天文雑誌星ナビ:
宇宙が舞台ということで期待しています。宇宙空間やはやぶさの描写についてこだわっている点があれば教えて下さい。あと、JAXAで撮影するにあたって、先生から具体的にいろいろ意見など出されたのであればお聞きしたいです。

堤:
もちろん、1/5ぐらいはCGで構成しています。さすがに遠いのでイトカワでロケができず、CGでやらせてもらっていますが、完璧なものができたと自負しています。1カット1カット、太陽との距離やイトカワの距離感とかについて先生のご意見をたまわっており、はやぶさの持つ能力を映像化すべく、現在も鋭意努力している最中ですので、楽しみにしていただければと思います。

國中:
宇宙技術のプロフェッショナルとしてプロジェクトを遂行して参りましたが、映画はみなさんがプロフェッショナルなので、私からは特にコメントすることはありませんでした。実際に相模原でロケをしているので、非常にリアリティあるものができたのではないかと思います。

映画「はやぶさ/HAYABUSA」は10月1日から全国ロードショー。


会見の写真は以下の記事に掲載しています。

メガネ姿の研究所スタッフになった竹内結子が登場、映画「はやぶさ/HAYABUSA」製作発表会フォトレポート



©2011「はやぶさ/HAYABUSA」フィルムパートナーズ

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in 取材,   映画, Posted by logc_nt

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