デザートが前菜や主菜と比べてレストランごとにバリエーションがあまり多くない理由とは?
レストランにはさまざまな料理や飲み物が用意されており、店によってメニューは大きく異なります。しかし、デザートについては店によってほとんど選択肢がない場合もあり、他の店と同じようなメニューが用意されているだけということがあります。なぜデザートはレストランごとにバリエーションがあまり多くないのかについて、デジタルメディアのVoxが解説しています。
Why every restaurant has the same desserts - YouTube
レストランが成功するか、それとも失敗するかを決定づけるのはそのレストランのメニューといっても過言ではありません。
ニューヨークの料理教育研究所でレストラン経営を教えるキャサリン・ゴードン氏は「レストランの利益率は高くなく、間違いなく10%未満です」と述べています。
その理由は、売上げを支える商品コストや人件費、家賃、光熱費などの支出が大きくなってしまうためです。
しかし、メニューの価格を高く設定すると客足は遠のき、低く設定すると利益がほとんど得られません。レストランを経営する上で、メニューの価格バランスを取るのが非常に困難です。
レストランのメニューを前菜・副菜・酒・ノンアルコール飲料・主菜・デザートと分けた時の平均的な利益率を示した棒グラフが以下。利益率が高いのは飲料と主菜。特に飲料は一回の食事中に複数回注文することが多いので、レストランにとっては重要な存在です。
一方、前菜とデザートは22%とかなり低い利益率を示しています。
このうち、前菜は利益率が低いものの、もともとの商品コストを低く抑えられるという特徴があります。例えば、主菜に鶏肉を使う場合、必要な部位の肉だけを買うのではなく、丸鶏を購入して調理します。使わない部位や本来捨てるような骨や皮などを使えば、前菜やスープを作ることができるからです。
しかし、デザートにはこの手法を使うことは困難です。
まず、デザートは前菜や主菜と共有できる材料を使いにくいという問題があります。
さらに、デザートに使われる材料が軒並み高騰しています。例えば、アイスクリームやケーキに使われるバニラは、世界生産量の約4割がマダガスカルで生産されています。しかし、2017年にマダガスカルが記録的なサイクロンに襲われた際にバニラの生産量が激減して価格が急騰。2018年を超えて価格は徐々に落ち着いてはいるものの、元の水準には戻っていません。
また、チョコレートの原料であるカカオも高騰しています。世界のカカオ生産の70%以上を担う西アフリカが異常気象による干ばつに襲われ、カカオの値段も急激に上昇しており、2024年12月16日にはカカオ先物が過去最高値を更新しています。
こうした理由で、デザートは高いコストを強いられるため、利益率は20%強とかなり低くなります。
一般的に、デザートはシェフとは別に、パティシエと呼ばれる専門の職人が作ります。しかし、デザートは利益率が低くコストもかかるため、レストランを経営する上で真っ先にメスを入れられことがよくあります。そのため、料理人の中でも特にパティシエのリストラ率は高いとのこと。
そもそもデザートは普通の料理とは使う道具や調理方法が異なることから、デザート専用の調理スペースを用意する必要があります。そのため、前菜や主菜と異なり、デザートは厨房で作らず、契約しているパティスリーから仕入れるケースもよくあります。
ところが、近年はデザート軽視がレストランの経営戦略にとって無難な策とはいえなくなっています。Voxの調査によると、中高年がレストランでデザートを注文する割合が20%を切っていたのに対して、ミレニアル世代やZ世代など若い世代ではデザートを注文する割合が30%を超えていたとのこと。つまり、若い世代の間ではデザートの重要性が高くなっているというわけです。
Bad Romanを経営するQuality Brandedのシェフであるクレイグ・コケツ氏は「人は目で味わうといいますが、まず料理を視覚的に捉えるというわけです」と説明します。
Bad Romanでは、レモンの形をしたレモンチーズケーキを出したところ、TikTokを中心に話題となり、人気メニューとなりました。今ではBad Romanを訪れる客の40%がこのレモンチーズケーキを注文するそうです。目で見て楽しめるメニューがTikTokで話題になり、それを見た人に「このケーキはどんな味なのだろう?」と考えさせ、レストランに足を運ばせることとなりました。
結局のところ、レストランの利益を真に上げる方法はレストランに客を呼ぶこと。Voxは、より多くの客を呼ぶためには乏しいメニューを改善する必要があり、デザートメニューの改良はレストラン経営改善の余地であると述べました。
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