生き物

犬の嗅覚を利用して肺がんを早期に発見する「電子鼻」が開発できるかもしれない

by David Locke

犬の嗅覚は非常に鋭敏であることが知られており、専門的な訓練を受けた犬は税関で麻薬探知犬爆発物探知犬として働いたり、犯罪捜査や行方不明者の捜索に協力する警察犬として活躍したりしています。そんな犬は「肺がんの臭いを嗅ぎ分ける」ことが明らかになっており、そんな犬の嗅覚を利用して「肺がんを発見する装置」が開発できるかもしれないと報じられています。

Dogs' sensitive noses may be the key to early detection of lung cancer
https://theconversation.com/dogs-sensitive-noses-may-be-the-key-to-early-detection-of-lung-cancer-99575

肺がんは多くの場合、患者が医者に行こうと思うくらいに症状が進んでしまうと、発見しても手遅れになってしまうことが多いとのこと。患者の多くは病院で肺がんの診断を受けた時点で、かなり病状が進行しているため、診断から1年以内に亡くなってしまうことも少なくありません。


しかし、肺がんの検査には簡単で安価な手法がないため、多くの人が早期に肺がんを発見できないそうです。そこで、犬の嗅覚を利用して肺がんを早期発見するという研究が科学者らによって検討されています。実際に犬が肺がんの臭いを嗅ぎ取ることができるという研究結果も発表されていますが、実験の多くは「複数のサンプルの中から、1つだけ存在する肺がん陽性の呼気や唾液サンプルを嗅ぎ当てる」という手法で行われたものだそうです。実際の検査では、「複数のサンプルの中から1つだけ存在する肺がん陽性のサンプルを選ばせる」という状況は存在しないため、このままでは犬を肺がん検査に使用することはできないとのこと。

ニュージーランドにあるワイカト大学の研究チームは、犬を肺がん検査に利用できる手法で訓練しています。研究チームは犬に装置が提示したサンプルを1つずつチェックさせ、それが陰性であればレバーを回して次のサンプルに切り替え、登場したサンプルが陽性であれば鼻を近づけて人間に知らせるように訓練しました。肺がん陽性のサンプル検出に成功したら報酬としてエサを与えると、犬は肺がん陽性の時だけ反応するようになります。

by scott feldstein

研究チームはAPOPOというタンザニアに拠点を置く社会的企業と協力し、訓練に使用する「肺がん検出犬訓練装置」を開発したとのこと。APOPOではアフリカオニネズミという嗅覚の鋭いネズミを訓練し、地雷の除去や人間の唾液から結核菌を検出するといった技術を開発しています。

研究チームは200人以上の肺がん患者に協力してもらって唾液サンプルを採取し、収集された唾液サンプルを犬の訓練や成分の分析などの目的で保存しました。研究チームによれば、すでに6匹の犬が数カ月間にわたる訓練の結果、肺がんを検出する能力を身につけたそうです。

また、研究チームは犬が肺がん陽性だと判断したサンプルから、化学的な成分を分析しています。犬が見逃した肺がん陽性サンプルとの違いを比較することで、サンプルに含まれる成分のうち、どの成分が肺がん検出にとって重要なのかを調べることが可能。犬が肺がん検出に利用する化合物を特定することで、研究チームは将来的に「特定の成分を検出して肺がんを特定する電子鼻」が開発できると考えています。

by Nikkie Stardust

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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