生き物

家畜の生き血をすする南米の伝説の怪物「チュパカブラ」の正体


チュパカブラ」とは家畜や人間を襲い血液を吸うといわれる、主に中南米でよく目撃される未確認動物(UMA)です。

スター・ウォーズにでも出てきそうなかわいらしい語感とは裏腹に、スペイン語で「ヤギ(cabra)の血を吸う(chupa)者」という名前も恐ろしいその怪物の正体について、ミシガン大学の動物学者バリー・オコナー教授が説明しています。

Scary chupacabras monster is as much victim as villain
http://ns.umich.edu/htdocs/releases/story.php?id=8051(2010年11月14日時点のWebArchive)

「犬のよう」「齧歯類のよう」「爬虫類のよう」「長い鼻を持つ」「鋭い牙を持つ」「ガサガサした緑がかった灰色の肌を持つ」「異臭を放つ」といった数々の目撃談がある「チュパカブラ」。襲われたヤギやヒツジなどの皮膚にはとがった物で刺されたような穴が開き、全身の血液を失っていたとのこと。

オコナー教授は「本当の怪物は『鋭い牙で家畜を襲う毛のない生き物』ではなく、健康な野生動物をチュパカブラへと変えてしまう8本足の小さな生き物です」とその正体を説明しました。


2010年7月に「チュパカブラ」とされる生き物がテキサス州で射殺されたのですが、解剖により、その正体はひどい疥癬にかかり毛の抜けたコヨーテであることが判明しました。

コヨーテの子ども。


疥癬により毛が抜け落ちたコヨーテ。


疥癬の原因となるSarcoptes scabiei(ヒゼンダニ)は、人間にも寄生するのですが、人間の場合はもともと体毛が濃くなく1人あたりに寄生するダニの数も20~30匹程度と少ないため、かゆみを感じる以外には特に深刻な問題となることはありません。ダニを専門とするオコナー教授らの進化学的研究によると、人類とヒゼンダニとは長い付き合いで、進化の歴史の中でヒトはヒゼンダニへの抵抗力を獲得してきたそうです。


人間が家畜を飼うようになると、ヒゼンダニはバラエティに富んだ宿主に寄生するようになりました。人間との付き合いが長いイヌはヒゼンダニとの歴史も長く、ヒゼンダニに対する防御力も発達しているのですが、コヨーテやオオカミ、キツネなどその他のイヌ科の野生動物の場合は、ヒゼンダニとの付き合いが「短い」ので、寄生されるとひどい症状が出て、死につながることもあります。

「宿主と寄生体との関係が新しい時期には、酷い症状が出ることが多く、宿主の致死率も比較的高い傾向があります」とオコナー教授は語ります。ヒゼンダニとの付き合いの浅いコヨーテなどの動物では、皮下に寄生したダニにより炎症が起き、皮膚が分厚くなり、毛嚢(もうのう)への血液の供給が絶たれ体毛が抜け落ちることになります。抵抗力の弱まった個体ではバクテリアによる皮膚炎を併発し、これにより悪臭を放つ場合もあります。これらを総合すると、「毛がなく醜くごわごわした皮膚で異臭を放つ怪物」というチュパカブラの姿になるというわけです。

では、ホラー映画にあるような「吸血病」のように、ヒゼンダニに寄生された動物が凶暴化し家畜を襲い血を吸う生き物へと性格を変えるということはあるのでしょうか?「そうとは言えないが、寄生されたコヨーテがヤギやヒツジなどの家畜を襲うようになる理由に説明はつく」とオコナー教授は語っています。「寄生されたコヨーテはひどく体が弱った状態にあるため、健康なコヨーテのように野生の獲物を狩ることが困難になります。そのため、ウサギやシカなどの野生動物と比べ簡単に捕まえることができる動作の遅い家畜を襲わざるを得なくなると考えられます」


チュパカブラには「二足歩行をする」「背中にトゲが生えている」といった目撃情報もあるのですが、プエルトリコで最初にチュパカブラを見たという目撃者はのちに、当時はSFホラー映画『スピーシーズ 種の起源』に強く影響され、この映画と同じような出来事が起きていると信じ込んでいたことを認めています。数々の「目撃証言」のうち、映画に出てくるクリーチャーの姿を表したと思われるものや、すでに浸透した「背中にトゲを持つチュパカブラ」のイメージに影響されたと考えられるものを除外すると、浮き彫りになるのは皮膚病にかかったコヨーテなどの動物の姿です。

「不在の証明」は難しいものであり、未確認動物チュパカブラの存在が完全に否定されたわけではありませんが、チュパカブラとして報告されているケースのほとんどは「病気のコヨーテ」として説明がつくということのようです。

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in 生き物, Posted by darkhorse_log

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