インターポールが国際恋愛詐欺を「豚殺し」から「ロマンティックベイティング」に言い換えるようにと呼びかけ、「ブタ」はさすがに被害者への配慮に欠ける

中国発の出会い系サービスなどを使った恋愛詐欺は、「豚殺し(pig butchering)」として知られており、近年世界中で被害が拡大しています。しかし、この「豚殺し詐欺」という呼称は被害者への配慮に欠けるとして、国際刑事警察機構(インターポール)が「豚殺し」を「ロマンティックベイティング(romance baiting)」に置き換えるようにと呼びかけています。

INTERPOL urges end to 'Pig Butchering' term, cites harm to online victims
https://www.interpol.int/en/News-and-Events/News/2024/INTERPOL-urges-end-to-Pig-Butchering-term-cites-harm-to-online-victims

Words matter. Let's change the narrative. - YouTube

Interpol replaces dehumanizing "Pig Butchering" term with "Romance Baiting"
https://www.bleepingcomputer.com/news/security/interpol-replaces-dehumanizing-pig-butchering-term-with-romance-baiting/

現地時間の2024年12月17日、インターポールはインターネット上で繰り広げられる恋愛詐欺、通称「豚殺し」を「ロマンティックベイティング」に言い換えるようにと提唱しました。中国発の国際恋愛詐欺が「豚殺し」と呼ばれる理由は、詐欺師たちが被害者を「豚」と呼ぶことに由来します。

詐欺師は被害者に偽の愛情や友情を抱かせることで徐々に「太らせ」、その後、偽の仮想通貨に投資するよう説得することで「殺し」ます。被害者が多額の資金を投資すると、突然資金援助が打ち切られ、壊滅的な経済的損失と精神的ダメージを受けることとなるそうです。

インターポールは「『豚殺し』という言葉は、詐欺の被害者の人間性を奪い、恥をかかせるものであり、助けを求めたり当局に情報を提供したりすることを思いとどまらせるものだ」と主張しています。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)は、仮想通貨のテザーが「豚殺し」を助長していると警告しました。

仮想通貨テザーが「豚殺し詐欺」などアジアにおけるサイバー詐欺を助長していると国連が警告 - GIGAZINE

App StoreやGoogle Playといったスマートフォン向けの公式アプリストアでも「豚殺し」に利用されるアプリが配信されており、サイバーセキュリティ企業の研究者が警告を発しています。

「豚殺し詐欺」のアプリがGoogle PlayとApp Storeで発見される - GIGAZINE

インターポールによると、すでに一部の法執行機関やオンラインセーフティの専門家が「豚殺し」を「ロマンティックベイティング」と呼んでいるそうです。インターポールは「『ロマンティックベイティング』という呼称は、詐欺師が被害者との信頼関係を築くために使用する高度な戦術と感情操作を認識するものです。この用語は、被害者ではなく加害者の行いという、本来目が向けられるべき場所にしっかりとスポットライトを当てるものです」と述べました。

インターポールのシリル・グート局長代理は「言葉は重要です。暴力的な性犯罪、家庭内暴力、オンラインでの児童虐待などの分野でこれを目にしてきました。我々の言葉は詐欺の被害者にとっても重要であることを認識する必要があります」「被害者への敬意と共感を優先し、詐欺師に犯罪の責任を負わせるために言葉を変えるべき時が来ました」と語っています。

ロンドン大学キングストン校の犯罪学および法医学言語学のエリザベス・カーター博士は、「学術研究は、詐欺師の手法と家庭内暴力や支配的な束縛の加害者の手法の間には明確なつながりがあることを示しています。これらの犯罪者の用語を採用するのではなく、公衆の保護と被害者の報告を支援する用語を使用することが不可欠です」と述べ、「豚殺し」を「ロマンティックベイティング」に言い換えることに賛同しました。

なお、インターポールによる「豚殺し」という用語の使用を取りやめるよう促す活動は、オンライン上での安全性や意識を高めるためのキャンペーンである「Think Twice」の一環だそうです。「Think Twice」では、ランサムウェア攻撃、マルウェア攻撃、フィッシング攻撃、生成AI詐欺、恋愛詐欺という近年増加しつつある5つのオンライン脅威に焦点を当てています。