サイエンス

大勢の人が一定以上の密度で集まると流体のように決まった動きをする可能性があることが判明


祭りなどであまりにも多くの人が1カ所に集まってしまうと、その群衆は押し合いへし合いして全体の動きは緩慢になります。この動きをよく見ると一定のパターンがあり、動きを予測して事故を防止できる可能性があることを研究者らが突き止めました。

Emergence of collective oscillations in massive human crowds | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-024-08514-6


Spanish 'running of the bulls' festival reveals crowd movements can be predictable, above a certain density
https://phys.org/news/2025-02-spanish-bulls-festival-reveals-crowd.html

群衆が動くことで生じる窒息や死亡の危険を予測する先行研究では、主に「ヒューリスティック衝突モデル」と呼ばれるモデルで群衆の動きの予測が立てられていました。しかし、このモデルはごく少数の小さな集団には有効なものの、数千人で構成された大きな集団の動きは予測しきれないという問題があったそうです。加えて、再現可能で安全な実験を実現できないため、数千人規模の群衆の動きをモデル化するというのは困難だったといいます。


そこで、リヨン物理研究所のデニス・バルトロ氏らはスペインで毎年開催される祭りに目を付け、集まった群衆を観察することで動きを予測できるかどうかを調べました。

スペイン・ナバーラ州の州都パンプローナでは、毎年5000人以上が集まる「サン・フェルミン祭」という祭りが開かれます。この祭りでは、毎年7月6日の全く同じ時間、同じ場所に人々が集まるため、人々の動きが比較しやすかったといいます。

バルトロ氏らは群衆が集まる長さ50メートル・幅20メートルの広場に定点カメラを設置し、4回にわたり群衆を追跡しました。その映像を元に群衆の動きをモデル化したところ、複数の事実がわかりました。


まず、この祭りにおける1平方メートルあたりの人数は、祭りが始まる前の1時間では2人だったのが、祭りの最中には1平方メートルあたり6人にまで変化していました。さらに、ピーク時には最大で1平方メートルあたり9人に達し、この密度に達したときに始めて、群衆が1つの流体のように決まった振動をしていることがわかりました。

サン・フェルミン祭で観察された動画は、以下から見ることができます。

群衆の圧倒:流体力学は人命を救うことができるか? - YouTube


この振動は最大18秒間続き、バルトロ氏らは「この振動を定量化して予測することができる」と指摘しました。バルトロ氏らによると、これらの動きは外部からの刺激によるものではなく、集団が自ら動くことで生じているため、場所や状況が違う他の群衆にも予測を当てはめることが可能だとのことです。

実際にバルトロ氏らが2010年にドイツで開かれたデュイスブルク・ラブパレードの映像に当てはめたところ、集まった人々がサン・フェルミン祭と同じような密度に達したとき、同じ振動が観察されることを発見しました。

バルトロ氏らは、「今回の発見が危険な群衆の行動を予測するためのヒントになります」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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