メモ

「未来のニュースを知っているチート状態」で投資を行った実験の驚くべき結果とは?


投資や賭けで損をしたときに、「未来を予知できたら負けなしなのに」と思ったことがある人は少なくないはず。しかし、翌日の1面記事を知っているという設定でバーチャルな投資をしてもらう実験を行った結果、驚くほど利益が少ないという結果が出たことが報告されました。

When a Crystal Ball Isn't Enough to Make You Rich - Elm Partners
https://elmwealth.com/crystal-ball/


A crystal ball wouldn’t make most of us rich
https://www.ft.com/content/fda8069a-055b-4534-9bcf-ff5c90783a2a

投資会社・Elm Wealthのビクター・ハガニ氏らが今回の実験を行おうと思ったきっかけは、「投資家に翌日のニュースを24時間前に伝えたら、1年もせずに破産するでしょう」と予言する投稿を見たことです。


この投稿に興味をひかれたハガニ氏らは、金融学の訓練を受けた若者118人を集めて投資ゲームに挑戦してもらう実験を行いました。

占い師の予言にちなんで「水晶玉チャレンジ」と名付けられたこの実験の内容は、各参加者に軍資金50ドル(約7650円)を与えて、S&P500指数と30年もののアメリカ国債の取引をさせるというもの。

ゲームは2008~2022年までの各年を1日ずつ合計15日間分行われ、参加者は未来の知識を元に好きなだけレバレッジをかけた投資ができるようになっていました。例えば、参加者は水曜日の新聞を読んで月曜日の終値でロング(買い)またはショート(売り)のポジションをとり、火曜日の終値で取引を清算するという具合です。

参加者に提供された新聞記事のサンプルが以下。直接のヒントになってしまうため、株価と債券価格のデータは黒塗りになっています。


参加者の9割以上は、倍率が高いアメリカの4つの大学でMBA(経営学修士)課程に在籍しているエリートの卵でしたが、最終的に参加者らの手元に残ったお金は平均51.62ドル(約7万9000円)、平均リターンはわずか3.2%とほぼ誤差の範囲内でした。

以下は、参加者が最終的に手にした払戻金のグラフで、横軸は左から順にリターンが「マイナス100%(破産)」「マイナス99%~マイナス50%」「マイナス50%~増減なし」「増減なし~プラス50%」「プラス50%~プラス99%」「プラス100%」を示しています。実験の結果、参加者の16%が軍資金をゼロにして破産し、損失を出した人の割合は約半数の45%に達しました。


合計2067回の取引のうち、未来のニュースを元に相場の動きを正しく予測できたのは51.5%で、コイントスとほとんど同じだったとのことです。

この実験がさんざんな結果に終わったのは、参加者が無計画にレバレッジをかけたせいだと考えられています。参加者のほとんどは、いつどのくらい大きな勝負に出るのかを判断するのが下手で、「トレード規模の決定にはほとんど理論や根拠が見当たりませんでした」とハガニ氏らは述べました。

トレードに勝つには、1面を飾ったニュースに基づくシンプルな予想ルールを設定するといいとのこと。例えば債券の場合、景気の好転、インフレの進行、エネルギー価格の上昇、ユーロ高、連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策が緊縮姿勢なことを示すニュースが出た際は債券のポジションをショートとし、その逆の場合はロングにするべきなのだそうです。

また、株価の場合は景気の好転、インフレの後退、エネルギー価格の上昇、ユーロ高、FRBが緩和姿勢の場合に買い、逆の場合で売ると高い確率でうまくいくとのこと。こうしたニュースがない日や、買うべきニュースと売るべきニュースの両方が同様に報じられた日は、取引を控えるのが賢明といわれています。


実際にこのアプローチをとる場合をシミュレーションした結果、株取引の成功率は58%、債券取引は64%で、平均リターンは6.1%でした。さらに、銀行やヘッジファンドで活躍するプロ5人に「水晶玉チャレンジ」をしてもらった結果、破産した人はゼロで取引の平均成功率は63%、最終的な資産額は開始時の平均2.3倍になったとのことです。

なお、水晶玉チャレンジには以下から挑戦することが可能です。

Crystal Ball Trading Challenge - Elm Partners
https://elmwealth.com/crystal-ball-challenge/

この実験で参加者に提供されたのはアメリカの経済紙・The Wall Street Journalでした。イギリスの経済紙・Financial Timesは冗談半分に、「もし参加者がのぞきこんだ水晶玉がサーモンピンク(Financial Timesの紙面の色)に染まっていたら、全員が好成績だったことは言うまでもありません」とコメントしました。

また、実験のきっかけとなる予言をSNSに投稿した作家のナシム・タレブ氏は「事前に情報を得てもうまくいかないという私の推測が、ハガニ氏らによって立証されました。実際、彼らは何がノイズとなるのかを事前に知ることができず、情報を過大評価してしまうため、事前の情報を十分に活用できないのです」とX(旧Twitter)にポストしました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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