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刑務所や拘置所からの音声・ビデオ通話料金の上限を大幅に引き下げるとFCCが発表、受刑者の家族は年間790億円も節約できるようになる見積もり


2024年7月18日、連邦通信委員会(FCC)が「刑務所や拘置所から電話やビデオ通話を行う際に請求する料金」を大幅に引き下げると発表しました。

Worth Rises — FCC VOTES UNANIMOUSLY TO SIGNIFICANTLY LOWER PHONE AND VIDEO COMMUNICATION COSTS AFTER DECADES OF EXPLOITATION BY PRISON TELECOMS
https://worthrises.org/pressreleases/2024/7/18/fcc-votes-unanimously-to-significantly-lower-phone-and-video-communication-costs-after-decades-of-exploitation-by-prison-telecoms


FCCは「刑務所や拘置所から電話やビデオ通話を行う際に請求する料金」に関する規則が成立したことを発表しました。これにより、アメリカ全土の刑務所および拘置所で電話をかける場合の1分当たりの利用料金の上限が半額以下に引き下げられ、ビデオ通話の場合も1分当たりの利用料金の上限が新たに設定されることとなるそうです。なお、FCCが電話以外の刑務所内での通信規則を定めるのは今回が初めてのこととなります。これに加えて、刑務所および拘置所では預託金を含むあらゆる料金の設定が禁止されることとなるそうです。

アメリカの刑務所産業を解体し、受刑者の搾取を終わらせるために設立された非営利の権利擁護団体であるWorth Risesは、今回の新規則の影響を受ける受刑者は全体の83%(約140万人)にもおよび、少なくとも年間5億ドル(約790億円)を受刑者とその家族が節約できるようになると見積もっています。


Worth Risesは新規則が導入されることで、以下のような影響を受けることができると主張しました。

・受刑者が支援システムにアクセスしやすくなり、受刑者の幸福および社会復帰の成功率が向上する。
・愛する人が刑務所にいる何百万人ものアメリカ人の経済的安定を高め、家族を強化することができる。
・数十年にわたって受刑者とその家族を食い物にしてきた刑務所の通信事業を抑制し、適正な規模に縮めることができる。
・矯正機関とその業界パートナーが急速に拡大してきた大規模監視プロジェクトを覆すきっかけとなる。

新規則の制定に尽力してきたWorth Risesのエグゼクティブ・ディレクターであるビアンカ・タイレク氏は、「あまりにも長い間、全国の家族は、投獄された愛する人と連絡を保つことに苦労してきました。連絡を取るためだけに借金をしたり、完全に連絡が途絶えてしまったりする人が多すぎます。ようやく救済の兆しが見えてきました。FCCのジェシカ・ローゼンウォーセル委員長と他の委員が、収監されている人々、その家族、地域社会、そして一般市民に、不当な通信コストがもたらす損害を認識してくれたことに、多大な感謝の意を表します。刑務所に愛する人を持つ何百万もの家族にどれほどの影響をもたらすかを計算することは不可能ですが、年間5億ドル以上の節約になることはわかっています」と語っています。

刑務所での通信量値下げの主要因は、セキュリティおよび監視のコスト・手数料を除外することとなったためです。「これまで何十年もの間、拡大し続ける侵入的な監視サービスのコストは、刑務所にいる受刑者と、その愛する人々に転嫁されてきました。しかし、新しい規則により刑務所の通信サービスはこの種のコストを利用者から回収することが禁じられます。この変化はWorth Risesの長年の取り組みによるものです」とWorth Risesは説明しました。


また、タイレク氏は「FCCが刑務所にいる人々とその家族が、有害で侵入的な監視に対して支払いをする必要がないことに同意したことを嬉しく思います。新規則では、刑務所や拘置所は利用したい監視サービスに対して自身で料金を支払わなければなりません。刑務所通信業界が懸念するように、支払わないことを選択した場合、それはFCCではなく、刑務所通信業界が解決すべきビジネス上の問題が存在するということになります。新規則によって得られる驚異的な節約に加え、矯正機関や業界が私たちのコミュニティを監視するために使用している監視サービスの拡大を食い止めることができると期待しています」とも語っています。

新規則は2025年初頭に発効となり、これにより1分当たりの音声通話・ビデオ通話の料金は以下の通りに減額されます。なお、記事作成時点で高額な利用料金を請求している24の州立刑務所および90%の拘置所が、通話料金の値下げを余儀なくされるそうで、音声通話の利用料は1分当たり8~14セント(約12.5~22円)下がることとなるそうです。

 音声通話(1分当たり)ビデオ通話(1分当たり)
刑務所0.06ドル(約9.4円)0.16ドル(約25円)
拘置所(1000人超)0.06ドル(約9.4円)0.11ドル(約17円)
拘置所(350~999人)0.07ドル(約11円)0.12ドル(約19円)
拘置所(100~349人)0.09ドル(約14円)0.14ドル(約22円)
拘置所(99未満)0.12ドル(約19円)0.25ドル(約39円)


FCCの元議長代行であり、Benton Institute for Broadband & Societyの取締役会メンバーであるミニョン・クライバーン氏は、「何十年にもわたって投獄された人々とその家族に不当な扱いをしてきた市場の機能不全を正す長い道のりにおける大きな節目となりました。この件を前進させたローゼンウォーセル委員長と他の委員、そしてMartha Wright-Reed Just and Reasonable Communications Actに忠実で強力な新しい規則を作成した勤勉なFCCスタッフには、賞賛の言葉しかありません」と語りました。

新規則の導入により、刑務所通信業界は深刻な影響を受けることとなり、刑務所通信業界の損失は年間数百億円にも上ると予想されています。これは刑務所通信業界の最大手であるAventivとViaPathが金融危機を乗り越えようとしている最中に起きた出来事です。Aventivは13億ドル(約2000億円)の債務不履行に陥っており、ViaPathは15億ドル(約2300億円)の借り換え契約に近づいていたことが報じられていたものの、今回の新規則の導入により契約は破棄されています

なお、マサチューセッツ州、ミネソタ州、コロラド州では刑務所および拘置所での通信を無料化するための法案が可決されており、カリフォルニア州では2022年に、コネチカット州では2021年に刑務所での通話料金が無料化されています。

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in メモ, Posted by logu_ii

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