MetaのAI施策に反発する形でアンチAIプラットフォーム「Cara」のユーザー数が1週間で17倍超に増加
Metaが推し進める「コンテンツをAIトレーニングの素材として使っていく」施策に反発する形で、アーティストが中心となって設立したプラットフォーム「Cara」のユーザー数が、直近の1週間で4万人から70万人へ、17.5倍に増えたことがわかりました。
A social app for creatives, Cara grew from 40k to 650k users in a week because artists are fed up with Meta’s AI policies | TechCrunch
https://techcrunch.com/2024/06/06/a-social-app-for-creatives-cara-grew-from-40k-to-650k-users-in-a-week-because-artists-are-fed-up-with-metas-ai-policies/
Caraは「アーティストのソーシャル&ポートフォリオプラットフォーム」をうたうサイトで、2022年末に設立されました。中心人物の1人は、ルクセンブルクで自身の写真作品と類似した絵画をめぐる訴訟を起こして、第二審で勝訴を勝ち取ったアーティストの張晶娜(Jingna Zhang)氏です。
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張氏がCaraを設立するに至った理由は、プラットフォーム運営企業が、投稿されたコンテンツをAIのトレーニングに利用できるように規約を改定している昨今の流れにあります。
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ニュースサイト・TechCrunchによるインタビューに答えた張氏は、アーティストの作品に対して、アーティスト側と技術側(トレーニングに用いる側)で見方がまったく異なっていると指摘。「技術側は、オープンソースの歴史があるので、人々は『一度世に出たものは、人々が使っていい』と考えているのだと思います」と述べた上で、「アーティストにとって作品は自分自身やアイデンティティの一部です。たとえ親友であっても、無断で作品を加工して欲しくありません。物事の捉え方にわずかな違いがあるとしても、私たちのアートが製品ではないということは人々に理解されていると思えません」と語りました。
また、Instagramでは「Midjourneyで私の名前が2万回以上も使われているのを見て、どれだけ人間性を奪われているか、言葉で説明することができません」と気持ちを吐露。投稿の中で張氏は、「私はただ、自分の画像や肖像がどのように使われるかについての同意が欲しいだけです。著作権とクリエイターを尊重して欲しいだけです」と述べています。
張氏が作ったCaraには、シカゴ大学と協力して、コンテンツをAIのトレーニングから保護する「Glaze」が組み込まれています。「Glaze」を適用すれば、作品に保護レイヤーが追加され、AIのトレーニングから守ってくれます。
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特に直近でCaraのユーザー数が増えた要因と考えられているのは、Metaがヨーロッパ地域を対象に行おうとしているプライバシーポリシーの変更です。
Metaは2023年9月に発表した「Meta AI」のトレーニングにFacebookやInstagramで一般公開されている投稿コンテンツを利用していることを明らかにしています。
ヨーロッパ地域のほとんどの国・地域はEUの一般データ保護規則(GDPR)によって個人データの収集・保持はユーザーの同意が必要と定められていますが、プライバシー保護活動を行うNPOのnoybによると、Metaはプライバシーポリシーの改定によって、2024年6月26日までにユーザーが「コンテンツをAIトレーニングに使用しない」と明確にオプトアウトの意志を示さない限り、ヨーロッパ地域のユーザーのコンテンツもAIのトレーニングに用いる方針だとのこと。
noybは、一度コンテンツがトレーニング用のデータとして取り込まれた場合、ユーザー側から削除する方法が存在しないとして問題視し、EU各国の当局に介入を要請しています。
noyb urges 11 DPAs to immediately stop Meta's abuse of personal data for AI
https://noyb.eu/en/noyb-urges-11-dpas-immediately-stop-metas-abuse-personal-data-ai
なお、ユーザー数が爆増したCaraは、想定外のトラフィックが発生したことで莫大な請求額に直面。また、ユーザーに交じってスパマーやボットも流入してきており、大変な状況にあることを張氏は報告しています。
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