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自動運転車のレーダーセンサーに「幻の対向車」を見せたり存在するはずの車両を見えなくしたりして事故を起こさせる攻撃手法「MadRadar」が開発される


デューク大学のPratt School of Engineeringで電気コンピューター工学の准教授を務めるミロスラフ・パジッチ氏とティンジュン・チェン氏が率いる研究者グループが、自動運転車のレーダーセンサーをだます攻撃「MadRadar」を開発しました。研究グループはMadRadarのような技術を駆使して自動運転車を盗む手口が、「今後数十年にわたってハリウッド映画で見られる共通のプロットとなるかもしれない」と語っています。

Engineers Develop Hack to Make Automotive Radar Hallucinate | Duke Pratt School of Engineering
https://pratt.duke.edu/news/engineers-develop-hack-to-make-automotive-radar-hallucinate/


MadRadar hack can make self-driving cars 'hallucinate' imaginary vehicles and veer dangerously off course | Live Science
https://www.livescience.com/technology/electric-vehicles/madradar-hack-can-make-self-driving-cars-hallucinate-imaginary-vehicles-and-veer-dangerously-off-course

パジッチ氏らが開発したMadRadarは自動運転車に搭載されているレーダーセンサーをだまし、他の自動車が接近していることを隠蔽したり、何も存在しない場所に「幻の自動車」が出現したと錯覚させたりすることができるという、自動運転車を攻撃する手法です。研究チームはMadRadarの概念実証に成功しています。

MadRadar Fools Automotive Sensors into Dangerous Situations - YouTube


デューク大学のエンジニアチームは、クルーズコントロールなどの機能が使える自動車に搭載されているレーダーセンサーをだます攻撃手法の「MadRadar」を開発しています。


自動運転システムを備えた最新の電気自動車だけでなく、クローズコントロール機能を搭載した自動車でも、車両の前方および周囲の環境を検出するためのレーダーセンサーが搭載されています。これらのレーダーセンサーは車両に搭載されているカメラシステムなどを補完するために利用されることもあります。


しかし、高速道路などでは複数の車両がレーダーセンサーを使用しているため、同じメーカーやモデルの車両であっても、それぞれが全く同じ動作パラメーターを持つわけではありません。これは車両が微妙に異なる周波数のレーダーを使用していたり、わずかに異なる間隔で測定を行ったりするためだそうです。そのため、MadRadarでは標的の車両が使用している特定のパラメーターを知る必要があったそうです。これについてパジッチ氏は、「信号をブロックしたり乗っ取ったりするには、まず相手がどの信号を使用しているかを把握する必要があります」と言及。

デューク大学の研究者が開発したMadRadarは、4分の1秒未満の速さでこのパラメーターを正確に検出することが可能だそうです。その後、MadRadarは攻撃対象となる車両のレーダーセンサーに向けて特定の信号を送信することで、レーダーセンサーを狂わせることが可能。例えば、遠ざかっているはずの他の自動車を、接近してきていると誤検知させることができます。


攻撃対象の自動車と周辺の自動車の両方が動いていても、MadRadarは車両のレーダーセンサーを狂わせることが可能。レーダーセンサーは攻撃が終わるまで周囲の車両を誤検知します。


MadRadarによる攻撃は、ターゲットとなる車両のレーダーパラメータを事前に知ることなく実行可能です。そのため、研究者チームは「商用車のレーダーシステムにより厳重な安全対策を講じなければいけない」と主張しました。


MadRadarの開発者であるパジッチ氏は、「標的となる自動車のレーダーシステムについてあまり知らなくとも、現実世界の実験でどこからともなく幻の自動車を出現させて誤認させたり、存在するはずの自動車を検出できなくしたりすることができました。我々は誰かを傷つけるためにMadRadarを開発しているわけではなく、既存のレーダーシステムに存在する問題を検証し、その設計を根本から変える必要があることを実証しています」と語っています。

他にも、「レーダーセンサーを使用するアクティブクルーズコントロールが、実際には速度が全く変わっていないのに前の車両がスピードを上げていると思い込み、車両の速度を上げてしまうケースを想像してみて下さい。これが夜間に行われた場合、車両のカメラが前方の車両を認識する前に衝突してしまっているでしょう」と語り、MadRadarのような車両のセンサー類を狂わせる攻撃手法の危険性を訴えています。

なお、MadRadarの詳細は2024年2月26日から開催されるNetwork and Distributed System Security (NDSS) Symposiumで発表予定です。

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in ソフトウェア,   乗り物,   動画,   セキュリティ, Posted by logu_ii

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