レーザー核融合実験で「点火」に成功したローレンス・リバモア国立研究所は6回中4回の点火を達成した
さかのぼること1年前の2022年12月5日、アメリカのローレンス・リバモア国立研究所がレーザー核融合実験において、投入したエネルギー量を上回る出力が得られる「核融合点火」に成功しました。これは偶然実現したものではないことが、その後の試行で明らかになっており、これまでに6回試行して4回点火に成功しています。
US nuclear-fusion lab enters new era: achieving ‘ignition’ over and over
https://www.nature.com/articles/d41586-023-04045-8
「核融合」は暴走の可能性がある「核分裂」よりも安全に高出力が得られるため、未来のエネルギーとして期待されていますが、肝心の反応を起こすにあたって膨大なエネルギーが必要であり、長らく、「出力エネルギーが投入エネルギーを下回る」状態だったため、実用化からほど遠いものだと考えられてきました。
しかし、2022年12月5日、ローレンス・リバモア国立研究所が行った「慣性閉じ込め方式レーザー核融合」の実験において、「核融合点火」の成功が確認されました。
エネルギー省が正式に核融合実験でエネルギー投入を上回る出力を達成し「点火」を確認したと発表 - GIGAZINE
実験を行ったアメリカの国立点火施設(NIF)は2009年から運用されている実験施設です。金のシリンダー内に重水素と三重水素の凍結ペレットがダイヤモンドカプセルに収容された状態で吊り下げられていて、そこに向けて192本のレーザーを照射すると爆縮が発生、ヘリウムと大量のエネルギーが生成されるという仕組みになっています。
初の「核融合点火」成功時は2.05MJ(メガジュール)のレーザー照射に対して、54%増となる約3.15MJの出力が得られました。
NIFではその後もテストを実施。2023年6月と9月は投入エネルギーよりもわずかに多くのエネルギーを生成したものの点火までは確認できませんでしたが、2023年7月30日は2.05MJの照射に対して88%増の3.88MJが発生して点火を確認。さらに2023年10月にも2回、点火を確認しています。
こうした結果を受けて、核融合発電の実現への期待が高まる一方で、実際に核融合反応で得られたエネルギーの実用化はまだ遠いと、Natureは指摘しています。
まず、NIFのレーザーシステムはとても非効率で、1回の点火試行に投入されたエネルギーは99%以上が目標到達以前に失われているとのこと。このため、より効率的なレーザーシステムを開発することがエネルギー省の新たな慣性核融合エネルギー研究プログラムの目標の1つになっているそうです。
すでに2023年10月30日に行われた通算6回目の実験では、レーザー照射されるエネルギー量が7%増えています。この実験では2.2MJのレーザー照射で3.4MJが得られました。理論上は、さらに大きな収量が得られると見込まれています。
NIFの主任設計者であるアニー・クリッチャー氏によれば、チームはもっと対称的な爆縮を生み出す可能性のあるレーザーパルスへの変更に焦点を当てているとのことで、2024年は4回の実験が予定されているそうです。
・関連記事
日米の研究チームが「放射性物質を使わない革新的な核融合技術」のテストに成功 - GIGAZINE
夢のエネルギー「核融合発電」が実用化されるのは結局いつごろなのか? - GIGAZINE
核融合発電の実現に王手をかける歴史的快挙はどのようにして達成されたのか? - GIGAZINE
核融合の「ブレークスルー」が実用的な核融合発電の実現にまだつながらない理由とは? - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, Posted by logc_nt
You can read the machine translated English article Lawrence Livermore National Laboratory, ….