農薬に含まれる殺虫剤成分が男性の精子数減少の一因だったという研究結果
過去50年間にわたる研究をまとめた結果、農薬に含まれている殺虫剤の成分が世界中の男性の精子数が劇的に減少する一因になっていることが明らかになったと、ジョージ・ワシントン大学の研究チームが発表しました。
Adult Organophosphate and Carbamate Insecticide Exposure and Sperm Concentration: A Systematic Review and Meta-Analysis of the Epidemiological Evidence | Environmental Health Perspectives | Vol. 131, No. 11
https://ehp.niehs.nih.gov/doi/10.1289/EHP12678
Common pesticides in food reducing sperm count worldwide, study says | CNN
https://edition.cnn.com/2023/11/15/health/sperm-damage-pesticides-wellness/index.html
学術誌「Environment Health Perspectives」に掲載されたこの論文では、殺虫剤として農薬にも使われている「有機リン酸塩」と「N-メチルカルバミン酸塩」という2つの物質に関する25件の研究が調査されています。そして、研究チームは21の異なる研究集団1774人の男性を対象に、42の異なるレベルの影響を調査しました。
研究チームによると、将来の生殖能力を測るバロメーターとしては一般的に射精した精液全体に含まれる「精子数」が重視されるそうですが、精液の量は人によって異なるため、精液1ミリリットルあたりの精子の量である「精子濃度」で比較を行ったとのこと。その結果、農業従事者など農薬への曝露(ばくろ)量が多かった男性は、有機リン酸塩やN-メチルカルバミン酸塩への曝露量が少ない男性と比べて、精子濃度が著しく低かったことが判明しました。
過去の研究では、有機リン酸塩やN-メチルカルバミン酸塩は性ホルモンに直接干渉し、精巣の細胞にダメージを与え、脳内の神経伝達物質を変化させて精子の生成に影響を与えると主張されているとのこと。
論文の主任著者でジョージ・メイソン大学公衆衛生学部のメリッサ・ペリー教授は「男性の全体的な健康に関して、精子は非常に敏感な端点です。私の最善のアドバイスは、周囲の殺虫剤に注意し、不必要に殺虫剤に曝露されることは避けるべきだということです。将来的に子どもを設けたい場合は特にそうです」と述べています。
アメリカのニュースメディアであるCNNは、「一番簡単な対策は、こうした殺虫剤を含む農薬を使っているような食品を避け、可能な限りオーガニック食品を選ぶことでしょう」と主張しています。アメリカ食品医薬品局は、農産物の洗浄について、以下のアドバイスを行っています。
・生鮮食品を準備する前後に温水と石けんを使って20秒間手洗いする。
・野菜や果物は皮をむく前に水ですすぎ、汚れやバクテリアがナイフから果物や野菜に移らないようにする。
・リンゴやメロンなどの固い農産物であれば、清潔なブラシを使用してこする。
・洗った後は、清潔な布あるいはペーパータオルで拭いて水気を取る。
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in サイエンス, Posted by log1i_yk
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