メモ

たった1つの自分が経験した例から他の人にも適用できると思い込んで主語が巨大化し一般化してしまう「典型的な心の誤謬」


自分が経験したことは他の誰もが経験していて、自分が理解できることは他の人も理解できると考えてしまう人は少なからず存在します。こうした人間の認知のゆがみについて、認知バイアスや心理学に焦点を当てたフォーラムサイト・LessWrongにコラムが投稿されました。

Generalizing From One Example — LessWrong
https://www.lesswrong.com/posts/baTWMegR42PAsH9qJ/generalizing-from-one-example

1800年代後半、「想像力」という言葉の定義についての議論がありました。人は頭の中で実際に鮮明に見えるイメージを作り出せるのか、それとも単に比喩として「頭の中で見た」と言うのか、こうした点について盛んに意見のぶつかり合いが起こっていました。

もちろん人間には心象風景というものがあり、頭の中でイメージを作り出せる人は数多く存在します。しかし、当時はこうした考えが広く認められていませんでした。


こうした議論が起こったのは、心的イメージを持っている人は「誰もが持っている」と思い込み、持っていない人は「誰も持っていない」と思い込んでいたからです。議論に参加した人々は、自分の常識は他人の常識でもあると思い込み、なぜ相手がウソをついているのか、なぜ自分の言っていることを誤解するのかといった疑問を生じさせるまでになっていたそうです。

この論争に決着をつけたのは、優生学や標準偏差などを考案したフランシス・ゴルトンという人物でした。ゴルトンは非常に詳細な調査を行い、心的イメージを持っている人と持っていない人がいることを発見し、世間にその存在を認めさせています。一説によると、完全に鮮明なイメージを抱ける人は全体の約5%で、心的イメージを形成することがまったくできない人が約3%いるとのことです。


コラムを投稿したスコット・アレクサンダー氏は、自身の師であったデイヴィッド・バーマン教授が話す上記のエピソードを好んでいたそうです。バーマン教授は、上記のような勘違いを「典型的な心の誤謬(ごびゅう)」と名付けていました。

典型的な心の誤謬は精神構造に関する深刻な問題で、心というより精神に近いもの、つまり人間の性格や行動についても同じ現象が見られるとのこと。


アレクサンダー氏は内向的な人間で、幼い頃に一人でいると、よく周りの子どもたちに引きずられてアクティブな遊びに連れ出されたことがありました。アレクサンダー氏が抗議すると、周りの子どもたちは逆に抗議し返して、自分たちの仲間に加わるよう言い始めました。アレクサンダー氏はその子どもたちが「自分を困らせようとしているいじめっ子」だと考え、彼らから隠れ、多い払う方法を身につけたそうです。

後にアレクサンダー氏は「これこそが誤謬ではないか」と考えたそうです。周りの子どもたちは「アレクサンダー氏も自分たちと同じ考えに違いない」と考えて連れ出し、自分たちの楽しい遊びに参加してもらおうと思ったのではないか、反対にアレクサンダー氏もアレクサンダー氏で、読書中の人を邪魔する人間は他人を困らせたいだけの人間だと思っていたのではないか、というのが、アレクサンダー氏の考えです。


アレクサンダー氏が成長してからも誤謬は起こりました。アレクサンダー氏のかつての同居人は、部屋が散らかっていることをとがめる人間でした。一方のアレクサンダー氏は騒音が大嫌いで、同居人のとがめる声すらうっとうしいと感じてしまう人間だったとのこと。しかし、アレクサンダー氏が「抑えてほしい」と頼むたびに、同居人は「あなたが過敏になっているだけだよ」と返してきたそうです。

これを後から振り返って見れば、同居人にとっての「部屋が散らかっている」という事実は、アレクサンダー氏が「騒音がイヤだ」と思う気持ちと同じくらい我慢ならないものであり、妥協できないものだった可能性があります。これは、お互いが「自分はこうなのだから、相手もこうしてくれるはずだ」という思い込みを抱いていて、自分と同じことをしない人間に不満を感じていたという事実に他なりません。

「物事をとがめるのは同居人の変なクセだ」「単に過敏になっているだけだ」といった考えは、典型的な「精神」の誤謬の問題だといえます。人間は意見がぶつかったときにお互いの精神を軽視しがちであり、「相手が自分の意見を曲解・誤解している」と思い込んでしまいます。


誤謬は、狭いコミュニティで「一般論」だと信じられている物事にも波及します。例えば、いくつかのコミュニティでは、「女性は自分を粗末に扱う男をなぜか好む」という説が男性に信じられています。これを信じる男性は、最優位雄、いわゆるボスザルタイプの男性が女性に好まれるので、まともな人間である自分たちは見向きもされないと思い込むこともあります。

一方で、女性に意見を聞いてみると、「そんなことはまったくのでたらめで、女性は全然そんなことを思っていない」と言う人も数多く存在します。もちろん、これは「思う人もいれば、思わない人もいる」という話にまとまるのですが、こうした「一般論」だと信じられているものも、ある意味では誤謬だと言えるとのことです。

こうした誤謬には対処法があり、アレクサンダー氏はその対処法について「直感に従わず、常に合理的に行動すること」だとしています。

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in Posted by log1p_kr

You can read the machine translated English article The ``classic fallacy of mind'' ….