西洋版コックリさん「ウィジャボード」の科学的説明を心理学教授が考察
「コックリさんコックリさん」と唱えてキツネの霊に質問をし、机に載せた人の手が五十音表の上を勝手に動いて質問に答えてくれる占いは日本で「コックリさん」と呼ばれますが、同時期に海外で流行した「ウィジャボード」もほとんど同じ性質をしています。精霊や死者と交信すると言われるウィジャボードの仕組みについて、シェフィールド・ハラム大学で心理学上級講師を務めるミーガン・ケニー氏が科学的な分析を発表しています。
Ouija boards: three factors that might explain why they appear to work for some
https://theconversation.com/ouija-boards-three-factors-that-might-explain-why-they-appear-to-work-for-some-193059
ウィジャボードはアルファベットと0~9の数字、および「yes」「no」「goodbye」と書かれた木の板の上に「プランシェット」と呼ばれる木製のポインターを配置し、参加者全員がプランシェットに手を置いて「精霊」に質問をします。複数人でプランシェットを動かすことから誰が質問に答えているか分からないという室内グループゲームの一種と考える人も多いですが、一部の人は死者や精霊がプランシェットを動かしていると考えています。
ウィジャボードは世界有数のおもちゃメーカーであるパーカー・ブラザーズから1892年に占い用ゲームとして発売されました。19世紀ごろは霊と交流できると主張したフォックス姉妹の存在などスピリチュアルブームが巻き起こっていましたが、20世紀初頭にはメディアなどで「ウィジャボードはインキチ」と暴かれ、人気が低迷していきました。しかし、第二次世界大戦後にはまた急速にスピリチュアリズムやウィジャボードへの関心が復活し、現代まで続いているとケニー氏は指摘しています。
ケニー氏は、ウィジャボードへの質問に反応してプランシェットが動く仕組みについて、「参加者の誰も意図的にプランシェットを動かしていない」「幽霊や精霊は存在していない」という前提で考えた場合、科学的な説明として3パターンが考えられると述べています。
1つ目に、「イデオモーター効果」という心理現象があります。イデオモーターとはイデア(アイデア)とモーター(筋肉活動)を由来とした言葉で、「私たちの行動は、先行した思考や行動、認知によって影響される」という考えです。「おいしそうなご飯の画像や映像を見たからそれを食事のメニューに決めた」というような先行刺激によって行動に影響が出る現象は「プライミング効果」と呼ばれ、イデオモーター効果もその一種と考えられます。すなわち、ウィジャボードにおいても「幽霊や精霊と交信できるウィジャボードをプレイする」という認識が先行した結果、参加者は「無意識のうちに」文字を指し示すプランシェットを動かして、自分が知る秘密を暴露してしまう可能性があります。
2つ目の説明もイデオモーター効果に関連していますが、「主体性感覚」によってウィジャボードが機能しているとケニー氏は指摘しています。主体性感覚とは、「目の前のテーブルを蹴飛ばすとひっくり返ってテーブルの上のものが散らかってしまうため、蹴らない」というように、外部の出来事に影響を与える行動を制御しようとする主観的な能力を指します。結果が予測できるため自分の行動に責任を持ちますが、逆に結果が予測できないもしくは予測と結果が一致しない場合は主体性の感覚は低下します。
2018年に行われた研究(PDFファイル)では、ウィジャボードを使うと「この文字を指し示すだろう」という予測と「実際にプランシェットが指す文字列」が一致しないことで、主体性感覚がコントロールされ、結果として「どの参加者でもない第三者が動かしている」と感じられるということが示されました。また、占いやスピリチュアリズムを信じている参加者ほど、主体性感覚が低くなり、プランシェットを動かす第三者の存在を感じやすいとも考えられています。
ウィジャボードが機能する仕組みに関する3つ目の説明は、「情動伝染」によるもの。衝撃的で感情的な出来事が目の前で起こると、強い感情や不安などが「伝染」していくと考えられています。つまり、ウィジャボードのプランシェットが自動的に動くように感じられるのは、幽霊や精霊と交信すると聞かされてウィジャボードを始める時の緊張感や興奮が参加者に共感され、プランシェットの動きに対する恐怖や不安も波及していき、「プランシェットが勝手に動いている」と感じやすくなる可能性があります。
イデオモーター効果や主体性感覚、情動伝染が組み合わさってウィジャボードの「プランシェットを精霊が動かしている」と信じ込ませていると考えられますが、これらは全て特定の状況下で生まれる心理的反応のため、研究のために同じ環境を再現することが難しくなっています。そのため、「ウィジャボードと交信しようとしたときに、実際に何が起こっているかを説明できるとは、完全に確信を持って言うことはできません」とケニー氏は述べています。
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