Uber関連の機密資料「Uberファイル」によりCEO自ら捜査を妨害する「キルスイッチ」使用を命じていたことが判明
「Uberファイル」と呼ばれる12万4000点以上の機密資料をイギリス大手紙The Guardianが入手、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)や世界の報道機関と共有して、Uberに関するニュースを多数報じています。その中で、Uberがオフィスに強制捜査が入ったとき、サーバーへのアクセスを遮断して当局に証拠を渡さないようにする「キルスイッチ」を、少なくとも6カ国で12回使用していたことがわかりました。
The Uber Files - ICIJ
https://www.icij.org/investigations/uber-files/
Uber bosses told staff to use ‘kill switch’ during raids to stop police seeing data | Uber | The Guardian
https://www.theguardian.com/news/2022/jul/10/uber-bosses-told-staff-use-kill-switch-raids-stop-police-seeing-data
「Uber」ファイルには2013年から2017年のメール、テキストメッセージ、社内プレゼンテーションその他の文書が含まれています。
Uberが「キルスイッチ」を配備・使用していることはカナダや香港での事例から知られていましたが、「Uberファイル」により、使用はもっと広範囲に行われていて、上級幹部がどのように関与していたかも明らかになりました。
2014年後半、Uberのリヨンオフィスとパリオフィスは、立て続けに当局による急襲を受けています。このとき、リヨンの3日後に捜査が入ったパリでは「教訓」が生かされ、急襲のあった直後に法務責任者のザック・デ・キーヴィット氏からデンマークのエンジニアに対してアクセスを強制終了させるようメールが送られ、13分後に対応が完了した旨の返信がありました。
一方、2015年3月にベルギー・ブリュッセルオフィスに対しての強制捜査では、当局側はデータ保存先のアメリカと連絡を取れないよう措置を講じました。このため、キーヴィット氏は「我々のチームは勾留され、キルスイッチを使う間もありませんでした」と報告しています。
しかし、このブリュッセルの経験は大きな反省材料となり、Uberは対策を強化。以後は、警察がオフィスに到着すると数秒でPCの電源が落ちたかのように画面が真っ暗になるようになったとのこと。2015年4月にオランダ・アムステルダムのUber本社に対して行われた捜査では、創業者のトラビス・カラニックCEOからも「できるだけ早くキルスイッチを押すように」とのメールが発されていることがわかっています。
なお、「Uberファイル」ではこのキルスイッチの件以外にもさまざまなことが暴かれています。
たとえば、2015年にUberはフランスで一部のサービス停止措置を出されたことがありますが、Uberヨーロッパのチーフロビイストだったマーク・マクガン氏がマクロン大統領に相談したところ、数時間後に停止措置の内容が訂正されたとのこと。
また、Uber幹部はマクロン大統領のほか、イスラエルのネタニヤフ首相(当時)やアイルランドのケニー首相(当時)、エストニアのイルベス大統領、ロシアのオリガルヒらと会談したこともわかっています。2016年にスイス・ダホスで世界経済フォーラムが開催されたときには、カラニックCEOがアメリカのバイデン副大統領(当時)と会談する機会を持ち、Uberが都市や人々の働き方をよりよいものに変えていると強くアピール。感銘を受けたバイデン氏が、基調講演の内容をUberの世界的影響力を強調するようなものに変更したことが記録されています。
さらに、政府から事業の承認を得る前にサービスの展開を始めるUberのやり方は、競合するタクシー業界から敵視され、ところによってはUberの運転手が暴力を受けたり、車両が燃やされたり、顧客が被害を受ける事例も出ましたが、こうした暴力をカラニックCEOらがメディアにリークすることで逆用していたことも指摘されています。
なお、Uber広報のジル・ヘイゼルベイカー氏は、2017年以前のUberが過ちのついての報告を事欠かない企業で、最終的に「アメリカの企業史上最も悪名高い清算」として、膨大な量の公的監視、多数の注目を集める訴訟、政府による複数件の調査、複数の上級管理職の解任につながる「間違い」があったと認めています。
一方で、この2017年の「清算」によりカラニックCEOらが更迭され、ダラ・コスロシャヒCEOに交代しており、所属する社員の90%は新CEOになってからの入社で「文字通り、Uberは別の会社になった」と説明。現在の価値と一致しない過去の行動の言い訳はせず、今後もしない代わりに、過去5年間に何をしたか、今後何をしていくかで判断して欲しいとコメントしています。
Statement on the ICIJ Investigation | Uber Newsroom
https://www.uber.com/newsroom/icij-statement/
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