サイエンス

小惑星が恐竜を滅ぼしたのは「春」が原因だったと判明、哺乳類が隕石衝突の中で生き延びた理由か


かつて地球にはティラノサウルスやトリケラトプスなどさまざまな大きさ、形状の「恐竜」が生息していたと知られています。そんな恐竜は約6600万年前に「大規模な小惑星の衝突によって壊滅的な被害を受け、絶滅してしまった」という説が有力ですが、そのような壊滅的な被害の中で「なぜ人間の祖先となる哺乳類などの他の種は生きのびてこられたのか?」という疑問が長く科学者たちを悩ませていました。2022年2月にNatureに掲載された論文では、小惑星の衝突による被害が「春」に発生したことが発表され、そのタイミングこそが恐竜絶滅の原因であり、哺乳類が生き延びた理由だと論じています。

The Mesozoic terminated in boreal spring | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-022-04446-1

恐竜が滅びた原因としては、氷河期の気候変動に耐えられなかったとする説や、小惑星が衝突する前から衰退していたとする説もある中、約6600万年前に地球に衝突した小惑星が原因だと考える説が最も有力とされています。巨大な小惑星は衝撃波で広範囲のものをバラバラにし、数百度・数千度の温度で焼き尽くし、気化したマントルが地球を覆うようにして日光を遮断。このようにして恐竜から微生物までが一斉に生態系に大打撃を受けました。

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そのような小惑星被害により、古代に生きていたとされる恐竜や翼竜、スピノサウルスのような海生爬虫(はちゅう)類やアンモナイトが完全に滅びてしまいましたが、一方で多くの哺乳類や鳥類、ワニやカメなどの爬虫類が生き残っています。スウェーデンのウプサラ大学のメラニー・デュアリング氏はこの謎を解明するため、化石化した魚の標本から「衝突があった瞬間はいつなのか?」という情報を得る研究を行いました。

研究では、標本となる骨の断面図を顕微鏡で調べて「骨の成長がどの時期に止まっているか」を分析しました。アメリカのノースダコタ州で発見された魚の化石は、小惑星の衝突によって発生したガラス球が降り注いだ痕跡があるため、「小惑星衝突のタイミングで死亡したサンプル」として扱われます。


結果として、サンプルとして扱った魚はすべて、最も好ましい成長期の初期段階である「春」に死亡したと結論付けられています。2021年12月にはマンチェスター大学の研究チームが同様の研究で、魚の骨のX線分析によって「春」の大量絶滅を示しており、今回の研究はそれを新たに裏付ける結果となっています。論文としてはマンチェスター大学よりも後になったものの、研究の提出自体はウプサラ大学を含む共同研究チームのものがかなり早く、研究データや結論は流用したものではなく全く別のものとして同様の結論が示されたとのこと。

同様に、骨から分析できる魚の年間摂食パターンからも、急に生命活動を停止したその魚が「摂食期が最高潮に達する前」である「春」に死亡していたことがわかるとデュアリング氏は記述しています。魚が摂取するプランクトンは骨格の成長記録と結び付くため、骨の記録から年間の成長率を分析すると、そこから摂食期に達していないことが判明するとのこと。


研究に使われた化石や地層はアメリカ北部のノースダコタ州のもの。そのため、北半球の生物にとっては、冬をしのいで繁殖や成長を前にする春に小惑星被害が起きたため、特にぜい弱な状態だったと考えられます。一方で南半球の季節は冬に向けて冬眠の蓄えをしていた「秋」であり、巣穴や洞窟に避難することで衝突時のダメージを抑えられたため、南半球の生態系は北半球の2倍の速さで回復したと論文では述べられています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1e_dh

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