ソ連の金星探査計画「ベネラ計画」とは?
宇宙競争が激化していた1900年代、アメリカと角逐していたソビエト連邦(ソ連)は人類史上初めて月面に探査機を送りこむことに成功したうえ、金星の地表へも初めて探査機を到達させています。ソ連の金星到達を巡る歴史について、台北のニュースライターであるJon Y氏が解説しています。
How the Soviets Put a Lander on Venus - by Jon Y
https://asianometry.substack.com/p/how-the-soviets-put-a-lander-on-venus
Jon氏は「金星の表面はセ氏462度で、気圧は地球でいう水深1km地点の水圧と同等。硫酸でできた雲や、摩擦によってセ氏1万1000度まで上昇しかねない厚い大気を突入しなければならず、着陸は太陽系の惑星の中で太陽に次いで2番目に困難です」と語ります。
1961年、ソ連が立ち上げたベネラ計画(ベネラ:ロシア語で「金星」の意)による探査機「ベネラ1号」の打ち上げが行われました。ベネラ計画の目的は、宇宙開発競争が激化していた当時、ソ連がアメリカを出し抜いて金星へ探査機を到達させることにありました。
ベネラ1号や続く2号、3号の打ち上げを経て、1967年10月にベネラ4号が打ち上げられます。ベネラ4号は金星の大気圏突入に成功。突入時の温度は1万1000度、加速度は450Gに達しましたが、無事大気圏を通過し、データを送り続けたとのこと。
通過直後の気温は39度、大気圧は地球とほぼ同じでしたが、次第に両方の数値が上昇し始め、エンジニアの予想をはるかに上回り始めました。ミッション開始のおよそ93分後、ベネラ4号は上空およそ27kmの地点で破壊。崩壊時の測定値は気温530度、22気圧と記録されています。
また、ベネラ4号が金星に突入した翌日には、アメリカの探査機・マリナー5号が金星に接近し、金星の大気圧についてのデータを収集しました。アメリカとソ連は両探査機のデータから「金星は想像よりはるかに過酷な環境である」という結論に達します。
ソ連は続いてベネラ5号・ベネラ6号を金星に突入させ、それぞれ大気圏突入から53分間と51分間のデータを収集・送信させることに成功。そして1970年、これまでのすべてのデータを踏まえて耐食性・耐熱性・耐圧性を強化したベネラ7号が打ち上げられます。ベネラ7号は潜水艦設計からヒントを得て圧力に強い卵のような形に設計されており、パラシュートが開く距離がより地上に近い位置になっているなどの変更が加えられていました。
ベネラ7号は4カ月間の飛行のあと、1970年12月に金星に到着。パラシュートは意図した通りに機能し、大気圏に突入してから35分間データを送信し続けたとのこと。しかし、パラシュートが途中で溶解したことにより、ベネラ7号は時速60kmで地上に落下してしまい、その後信号が途絶えてしまいます。エンジニアはベネラ7号の破壊を予想していましたが、その数カ月後に電波天文学者が微弱な電波を確認したことにより、ベネラ7号が生きていることが判明。この打ち上げが後の金星探査への道を大きく切り開くことになりました。
その後カメラが搭載された探査機が打ち上げられ、金星の様子が具体的に明らかになったのが1970年10月のこと。ベネラ9号と10号は数日を空けて続けて金星に投下され、岩や土、地平線、風の存在を地球に知らしめることとなりました。この打ち上げはソ連にとって目覚ましい成功を収めたと称賛されました。
by Kordite
その後ブラッシュアップされたベネラ13号と14号が打ち上げられ、オレンジ色の空のカラー写真撮影やマイクで拾った環境音の収集に成功。しかし、大気圏へ突入した機体はこれらが最後であり、続く15号と16号は軌道上から金星の地形をマッピングするにとどまりました。
それ以来、宇宙開発は主に月と火星にシフトしています。Jon氏はこのことについて「数十年前の技術でできたのですから、現代でも金星に探査機を到達させることは可能です。しかし、そうしない理由はもちろん費用にあります。1日で完了してしまう探査に多くの時間とリソースを投資するのは変なことです」と説明しました。
Jon氏は最後に「ベネラ計画は驚くべき工学的技術の成果であり、ソ連における宇宙探査の最高峰だと思います」と締めくくりました。
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in サイエンス, Posted by log1p_kr
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