生きたロボット「Xenobot」がパックマン形態で子孫を残すことが判明
カエルの肺の細胞から再構成された生きたロボット「Xenobot(ゼノボット)」は2020年に発表され、大きな話題を呼びました。ロボットであるのに有機体であり、移動も可能なXenobotですが、新たに「子孫を残す」ことが判明しました。
Kinematic self-replication in reconfigurable organisms | PNAS
https://www.pnas.org/content/118/49/e2112672118
‘Amazing science’: researchers find xenobots can give rise to offspring | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2021/nov/29/amazing-science-researchers-find-xenobots-can-give-rise-to-offspring
Xenobots: Team builds first living robots that can reproduce
https://techxplore.com/news/2021-11-xenobots-team-robots.html
Scientists Create Synthetic Organisms That Can Reproduce
https://futurism.com/scientists-synthetic-organisms-reproduce
2020年1月、バーモント大学で進化ロボティクスについて研究しているジョッシュ・ボンガード氏と、タフツ大学の生物学者マイケル・レビン氏ら研究グループが、アフリカツメガエルの胚の細胞から再構成された生きたロボットとしてXenobotを発表しました。自律的に歩行して物質を運搬することが可能なXenobotは、人体内の患部に薬剤を輸送したり、血管内に蓄積された老廃物を除去して動脈硬化を防いだりするといった使い方が想定されています。
カエルの幹細胞から作られた「生体ロボット」が開発される、物質の運搬や自己再生も可能 - GIGAZINE
Xenobotはカエルの肺から取り出した数千個の細胞を1mm程度の合成生物として組み立てたものであり、消化器官やニューロンがないので、誕生から約2週間で自然に崩壊します。ボンガード教授によるとXenobotがカエルに成長することはなく、最後まで誕生時の形を維持し続け、カエルとは全く違う行動を取るとのこと。
新たな研究でボンガード教授らは、Xenobotが「子孫を残す」ことを報告しました。人間や動物、植物は無性・有性などさまざまな方法で生殖して子孫を残していきますが、Xenobotが子孫を残す方法は人間のような生殖ではなく、厳密には運動学的自己複製と呼ばれるもの。運動学的自己複製はこれまで分子において観察されていたものであり、有機体において観察されたのはこれが初めてとのことです。
「分子における運動学的自己複製は地球の生命誕生において間違いなく重要なものです。しかし、この複製方法が生命の起源で何かしらの役割を持ったのかどうかは定かではありません」とボンガード教授は述べています。
研究チームはスーパーコンピューターとAIを用いて、Xenobotの「形」が複製を行う効率にどのような影響を与えるかを調査しました。さまざまな「形」がシミュレーションされた結果、スーパーコンピューターはパックマンのようなCの形のXenobotが最も効率がいいと示したこと。実際にCの形のXenobotがどんなものなのかは、以下のムービーから確認できます。
Xenobots: Building the First-Ever Self-Replicating Living Robots - YouTube
Xenobotはスーパーコンピューターの出した結論に基づき、「C」の形になるよう切り込みが入れられました。
たくさんのXenobotが幹細胞の中をくるくると回転しながら移動しています。
Xenobotが動き回ると、散らばった幹細胞が切り込みの部分で塊となり……
大きく成長します。この中から新たなXenobotが生まれるとのことですが、子どもとなるXenobotは小さく弱い個体で、孫を作ることはないそうです。
Xenobotは研究の初期段階にあり、コンピューターに例えると「1940年代のコンピューター」レベルとのこと。記事作成時点で実用的なアプリケーション開発までには至っていませんが、「分子生物学」と「人工知能」を組み合わせたこの研究は海洋マイクロプラスチックの回収・ルート系調査・再生医療など、さまざまな分野での活用が考えられます。
なお、自己複製するバイオテクノロジーの存在にはさまざまな懸念が伴うと予想されますが、研究チームはXenobotが生分解性であり、倫理の専門家のもと実験室を出ないこと、また容易に消滅することを説明しています。
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