食塩を「低ナトリウム塩」に置き換えると脳卒中などの発症率が下がるという研究結果


食塩は人体に必須とされるミネラルのナトリウムを含んでいますが、摂取しすぎると高血圧や脳卒中、心臓病などのリスクを高めるとされています。日本人は塩分を摂取しすぎているという調査結果も存在する中、新たに「低ナトリウム塩」が脳卒中のリスクを下げてくれるという研究結果が発表されました。

Effect of Salt Substitution on Cardiovascular Events and Death | NEJM
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2105675

Landmark study shows simple salt swap could prevent millions of deaths each year | The George Institute for Global Health
https://www.georgeinstitute.org/media-releases/landmark-study-shows-simple-salt-swap-could-prevent-millions-of-deaths-each-year

Making 1 Simple Substitution For Table Salt Could Save Millions of Lives, Study Shows
https://www.sciencealert.com/making-1-simple-substitution-for-table-salt-could-save-millions-of-lives-study-shows

食塩は高血圧をはじめとする生活習慣病に深く関わっており、厚生労働省は「男性は7.5g/日未満、女性は6.5g/日未満」と、世界保健機関(WHO)は「5.0g/日未満」という食塩摂取量を推奨していますが、日本人はこうした推奨値を大きく上回る量の食塩をとり続けています。

01.資料1-2_日本における食塩摂取量の現状と減塩推進への課題~日本高血圧学会の取り組みを中心に~ - 000760248.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000760248.pdf


塩分に関連する病気の中でも高血圧には、「ナトリウムの摂取量が多いと悪化する」「カリウムの摂取量が足りないと悪化する」という研究結果が存在しています。こうした理由から、シドニー大学ジョージ国際保健研究所のブルース・ニール教授らは、通常の食塩に含まれる塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムに置き換えた「低ナトリウム塩」を食塩の代わりに用いることで、人体にどのような影響が出るのかを調べました。

ニール教授らは、中国の5つの州(河北省・遼寧省・寧夏省・山西省・山西省)の農村地域にある600村から、「脳卒中の既往歴を持つ」ないしは「60歳以上かつ高血圧である」という条件を満たす被験者を各村ごとに約35名ずつ、計2万995名を選出。参加者の平均年齢は65.4歳で、49.5%が女性。72.6%が脳卒中の既往歴を有し、88.4%が高血圧の既往歴を有していました。


研究チームはこれら被験者を2つのグループに分け、一方のグループには低ナトリウム塩を、もう一方のグループには通常の食塩を使い続けてもらい、5年間にわたる追跡調査を実施。この追跡調査の期間中に、3000人以上が脳卒中を、5000人以上が主要心血管イベント(非致死的脳卒中・非致死的心筋梗塞・心血管死をまとめた分類)を発症し、4000人以上が死亡しました。

以上の脳卒中や主要心血管イベント、そして死亡は年齢や既往歴を考えると予想外とは言えないものですが、低ナトリウム塩を摂取していた被験者と通常の食塩を摂取していた被験者の間には、発症率や死亡率に大きな差が存在しました。低ナトリウム塩摂取者では脳卒中が1000人あたり29.14件という割合で発生していましたが、通常の食塩摂取者の脳卒中発症率は1000人あたり33.65件。主要心血管イベントは低ナトリウム塩摂取者が1000人あたり49.09件で、通常の食塩摂取者が1000人あたり56.29件。早期死亡は低ナトリウム塩摂取者が1000人あたり39.28件で、通常の食塩摂取者が1000人あたり44.61件でした。換算すると、低ナトリウム塩によって脳卒中の発症率は14%減、主要心血管イベントは13%減、早期死亡は12%減という結果です。


従来の研究では、塩化カリウムが脳卒中などに与える影響は未知数とされていただけでなく、塩化カリウムの過剰摂取で生じる高カリウム血症によって慢性腎臓病の人々の病状が悪化するのではという懸念が存在しました。しかし、今回の研究では上述したように脳卒中などの発症率が低下したという結果が得られただけでなく、低ナトリウム塩が高カリウム血症に起因する重篤な病状の発症率を増加させるという結果は確認されなかったとのこと。

ニール教授は調査対象となった地域では低ナトリウム塩が1kgあたり1.62ドル(約180円)、通常の食塩が1kgあたり1.08ドル(約120円)と価格に大きな差が存在しないことから、脳卒中や主要心血管イベントに対する影響を考えると「費用対効果が非常に高い」とコメント。全世界的に食塩から低ナトリウム塩に切り替えた場合には毎年数百万人の早期死亡を防げる可能性すらあると述べ、低ナトリウム塩への置き換え政策を進めるべきだと主張しました。

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in , Posted by darkhorse_log

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