「野菜の多様性の低下」が現代人の食生活を破壊するかもしれない

健康的な食生活を世界中で実現するには、野菜を増産するだけでなく栽培する野菜の種類や品種を増やすことも重要かもしれません。世界野菜センターのマールテン・ファン・ゾンネフェルト氏らの国際研究チームは、野菜の種や品種、野生近縁種の多様性が失われると、栄養価が高く気候変動にも強い野菜を食卓へ届ける選択肢が狭まると指摘しています。
Reversing vegetable biodiversity loss to diversify diets | PNAS
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2532063123
The World's Vegetables Are Vanishing, And It's Quietly Wrecking Our Diets : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/the-worlds-vegetables-are-vanishing-and-its-quietly-wrecking-our-diets

野菜はビタミンやミネラル、食物繊維などを供給する重要な食品群ですが、各国の平均では実際の摂取量が健康的な食生活で推奨される量を約40%下回っています。これまで野菜不足の主な原因として生産量の少なさや価格の高さ、食文化や好みが挙げられてきた一方、ファン・ゾンネフェルト氏らは、十分に注目されてこなかった要素として野菜の多様性の保全と利用を挙げています。
野菜の多様性には、野菜として食べられる植物の種だけでなく、同じ種に属する地域固有の品種や伝統品種、品種改良に役立つ遺伝的特徴を持つ野生近縁種も含まれます。研究チームは、農業・園芸作物を網羅した事典「Mansfeld's Encyclopedia of Agricultural and Horticultural Crops」に基づく野菜リスト、国連食糧農業機関(FAO)の報告書「The Plants That Feed the World」、世界野菜センターの在来野菜リストをはじめ、サハラ以南のアフリカ、南・東南アジア、パプアニューギニア、アンデス、メソアメリカ、アマゾンの伝統野菜に関する地域別資料などに書かれた野菜を統合した結果、少なくとも1482種の野菜が確認されました。また、地域で採取されてはいるものの資料に収録されていない野菜もあるため、実際の野菜の種類はさらに多いとみられています。
レタスやタマネギ、トマトなど一部の野菜が世界中で栽培・消費される一方、地域固有の野菜や品種は市場の画一化や土地利用の変化などによって栽培・利用される機会を失いつつあります。過去100年間の野菜の「遺伝的侵食」、つまり品種や遺伝的な違いの減少を調べた研究の80%では、品種または遺伝的多様性の低下が報告されました。また、国連食糧農業機関が主要な野菜として挙げた79種に関連する野生近縁種について、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに記録された保全状況を調べたところ、評価済みの種の推定24%が絶滅の危機にさらされていました。

地域固有の野菜が畑や市場から姿を消すと、育て方や調理法も受け継がれにくくなります。そして、食べる人が減れば生産・流通も縮小し、入手しにくくなればさらに食べられなくなるという悪循環が生じるとのこと。こうして食卓に並ぶ野菜が少数の種や品種に偏ると、栄養価が高い野菜や地域の気候に適した野菜の選択肢が減るだけでなく、害虫や病気、干ばつや高温に耐える新品種を開発するための遺伝的な材料も乏しくなります。
野菜の多様性を保存・活用する際の課題を示す例として、研究チームはアフリカで葉物野菜として食べられるオリヅルラン(スパイダープラント)を挙げています。オリヅルランは栄養価が高く気候変動への耐性もありますが、種子などの遺伝資源を保管するジーンバンクに保存されている地域品種はごくわずかで、品種改良に使える種子が限られているため、大規模生産向けの改良品種を開発しにくいとのこと。

一方、干ばつと高温に強いカボチャはオレンジ色の果実にβカロテン、濃緑色の葉に微量栄養素を含み、多くの品種がジーンバンクに保存されています。しかし、カボチャは近くで栽培した別の系統の花粉が混ざりやすいため、各系統の遺伝的特徴を保ったまま種子を増やすには、系統ごとの栽培区画を離す必要があります。広い農地に加え、花粉が混ざらないように管理する手間もかかるため、種子の増殖費用が高くなり、品種改良に利用できる種子の量が不足するとのことです。
なお、食べる野菜の種類を増やすことで実際に野菜の摂取量や健康状態が改善するかどうかは確かめられていません。
ファン・ゾンネフェルト氏は「必要な野菜の多様性の多くは伝統品種や野生近縁種として今も残っています。気候変動が進む中で食生活を多様化するため、適切に保存して賢く利用することが急務です」と述べています。
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in サイエンス, 食, Posted by log1b_ok
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