道案内がうまい人と方向音痴な人がいるのは何の能力が違うのか?

目的の場所まで行こうとするとき、地図を一度見ただけでたどり着ける人や、何度も地図を見直してもなお迷い続ける人などがいて、空間認識能力には違いがあることが日常生活においてよく分かります。何がこの差を生んでいるのかについて、教育コンテンツを作成するTED-Edが解説しました。
Why do some people have a better sense of direction than others? - Oliver Baumann - YouTube

地図を読むことや道を覚えることなどを可能にしているのは、脳の線条体と海馬です。
線条体は近くにある建物などの手がかりを処理する役割を担っています。毎日同じ道を通るなどの習慣から、特定の刺激や行動を特定の反応や結果と結びつけるようになり、手がかりとルートを関連付けます。

一方、海馬は周囲の環境を組み合わせて脳内で地図を作る役割を担います。行ったことがない場所や、それまで通ったことのない道であっても、どうやって行けばよいのかを判断するのに役立ちます。

1970年代、研究者たちはラットの脳活動を観察している際に、ラットが特定の空間にいるときに海馬の特定のニューロンが発火していたことから、脳内地図を作るうえで海馬が重要であることに気づきました。同じことは完全な暗闇でも起こりました。これは、後に「場所細胞」と呼ばれるようになったニューロンが、感覚入力とは無関係に認知地図を形成していることを示していました。

そして2005年、研究者たちは海馬を取り囲む領域でさらに別の種類のニューロンを発見しました。その中にあったのが「グリッド細胞」で、人が移動すると規則的なパターンで発火し、脳に一種の座標を形成します。場所細胞とグリッド細胞を明らかにした発見に、2014年のノーベル賞が授与されました。
ただ、線条体と海馬の能力は人によって異なります。双生児を調べた研究によると、ナビゲーション能力の約60%は遺伝によって個人差が生まれるとのことで、こうした能力は一般的な知能とは独立している可能性が示唆されています。また、郊外や農村部の人々と比較すると、都市部、特に規則的で格子状の都市で育った人は、不規則な環境で迷いやすい傾向にあるようです。
この能力は練習によって向上させられることが研究で示されています。
2010年の研究では、ラグビー選手と格闘技選手が目隠しをされ、出発地点まで戻るよう求められました。大規模な空間でトレーニングしているラグビー選手は格闘技選手より正確に方向を判断して戻ることができました。これは、空間に関するトレーニングで長い距離における判断力が向上したことを示唆しています。

ロンドンのタクシー運転手は、ロンドンの複雑な道路網を網羅する「ザ・ナレッジ」と呼ばれる知識を問う試験に合格しなければなりません。この試験を終えた人は海馬の著しい成長が見られるそうです。
なお、GPSで現在位置を常に知らせてくれるマップを使った場合、口頭による道案内や紙の地図を使った場合と比べて空間の再構成能力は低下し、方向感覚が損なわれる可能性があるとのこと。TED-Edは「よく知っているルートではGPSをしまい、遠くにある目印に注意を向けてみるとよいでしょう。曲がる場所を一つずつ案内するナビゲーションを使う代わりに、紙の地図を試したり、新しい場所を徒歩で探索したりすることも考えてみてください。身体を動かすことは、脳が空間情報を記憶するのに役立つからです。そして、少し練習を重ねれば、次に道に迷ったときにはまず自分自身の中に目を向けて、道を見つけられるかもしれません」と述べました。

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