自家製ロケットを打ち上げて雷を誘導することはできるのか?

自然の雷がどこに落ちるのかを事前に正確に予測するのは難しく、至近距離で観測する研究も危険かつ困難です。科学・工学系YouTubeチャンネルのElectron Impressionsが、細い導線を引き上げる自家製ロケットや大気の電場を測る装置を開発し、打ち上げ地点付近で雷を誘発する実験を行った結果を公開しています。
Triggering Lightning With A Rocket | Hackaday
https://hackaday.com/2026/08/10/triggering-lightning-with-a-rocket/
Our Lightning Rocket Project - YouTube

Electron Impressionsによると、晴天時にも地表付近には大気の電場が存在し、高度が1メートル上がるごとに電位が約100ボルト高くなるとのこと。雷雲が近づくと地表で測定される電場は1メートル当たり数万ボルトまで強まり、雷雲内部の電荷の分布によって極性も正負のどちらにも変化します。

雷雲の強い上昇気流の中には過冷却状態の水滴や小さな氷の結晶、過冷却水が氷の粒に凍り付いてできる「あられ」が混在し、比較的重いあられは小さな氷の結晶よりゆっくり上昇するか周囲の空気に対して落下するため、両者の衝突が繰り返されます。一般的な雷雲の中層ではあられと氷の結晶の衝突によってあられが「負」、氷の結晶が「正」に帯電しやすく、軽い氷の結晶は上空へ、重いあられは雷雲の下部へ集まる傾向があります。ただし、電荷が移動する微視的な仕組みは研究途上で、温度や水分量などの条件によって帯電の向きが逆転することもあるとのこと。

雷雲内で正負の電荷が大きく分かれると、局所的に極めて強い電場が生じ、空気を電離させながら進む「リーダー」と呼ばれる放電路が形成されます。雲から地上へ向かうリーダーと、地上から上空へ伸びるリーダーがつながると落雷が発生しますが、自然のリーダーが雷雲内のどこで生じるかを予測するのは困難です。

地面につながった細い導線をロケットで強い電場の中へ急速に引き上げると、導線の上端付近から地上発のリーダーが伸びやすくなります。これにより、自然の雷が観測装置の近くへ落ちるのを待つのではなく、ロケットの打ち上げ地点付近へ落雷を誘発できるというわけです。

この方法は雷のない空に放電を作り出すものではなく、すでに強く帯電した雷雲の下で落雷を起こりやすくする手法です。ロケットを打ち上げれば必ず落雷が起きるわけではありません。過去約70年間の研究では、負に帯電した雷雲領域の真下から打ち上げた場合に成功率が大幅に高くなり、周囲の電場も落雷を引き起こすのに十分な強さである必要があることも示されています。そのためElectron Impressionsは、大気電場の強さと極性をリアルタイムで測る装置「フィールドミル」を自作し、打ち上げのタイミングを判断しました。

Electron Impressionsは以下の動画で、ロケットや計測装置の開発過程と落雷後に残った被害を詳しく説明しています。
This is How We Caught a Lightning Bolt - YouTube

ロケットの打ち上げに必要となったのは、荒天でも飛行できて導線を運べるロケット、細い導線を絡ませず低い摩擦で送り出すリールと巻き取り装置、雨天でも離れた場所から作動させられる点火装置、持ち運び可能なフィールドミルの4つです。

Electron Impressionsは設計支援ソフトのOpenRocketを使ってロケットの形状を検討。

試作を繰り返しやすいように、ロケットの部品は3Dプリンターで製作しました。

点火装置は光ファイバー式やレーザー式を試したものの、設置の難しさや動作の不安定さが問題となり、最終的に長距離無線で作動させる方式を採用したとのこと。

特に細い導線は切れやすく、導線の素材やリールの形状を調整して問題を解決するまでに1年以上かかったそうです。

また、フィールドミルも開発に1年以上を要したとのこと。Electron Impressionsは2020年から断続的にプロジェクトを進め、2025年2月に初の正式な打ち上げ実験を実施しましたが、導線が切れたりロケットモーターが爆発したりする失敗が続きました。

そして2026年7月18日、フィールドミルが適切な条件を示したタイミングでロケットを打ち上げたところ、落雷の誘発に成功しました。最初の放電でできたプラズマの通り道に沿って複数回の放電が続いたことから、Electron Impressionsは負極性の落雷だった可能性が高いとみています。この見立ては、打ち上げ前にフィールドミルが捉えた強い負の電場とも一致しました。

風でプラズマの通り道が横へ流された結果、最後の放電は2基目の発射装置へ到達しました。

この放電で待機していたロケットのモーターが爆発し、導線のリールも破壊されました。2台の点火装置も故障し、打ち上げたロケットの残骸は見つからなかったとのこと。残った導線はリール本体に溶着し、強いジュール熱で生じたとみられる金属の粒が連なっていました。

地面には亀裂のような跡も残りました。

落雷後の地面に残った亀裂についてElectron Impressionsは、放電路の熱で土中の水分が瞬間的に蒸発し、膨張した水蒸気が地面を割った可能性があると説明しています。一方、雷によって砂などがガラス質に変わってできる「フルグライト」は見つかりませんでした。

Electron Impressionsは、この動画は極めて危険な実験の記録であり、安全に実施できることを示すものではないと強調しています。動画では設計・運用・実験場所・安全対策に関する重要な情報を意図的に省略しており、雷を誘発・誘導する装置を製作したり試験したりしないよう警告しています。
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in 動画, ハードウェア, サイエンス, Posted by log1b_ok
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