運動がガンの成長を抑えるのは「乳酸」が原因である可能性
運動は13種類ものがん発症リスクを減少させることが過去の研究で示されていますが、なぜ運動ががんの発症リスクを減らすかというメカニズムは、まだ謎に包まれています。そんな中、新たな研究では激しい運動の後に乳酸などの代謝物のレベルが上昇することにより、血中の免疫細胞に「栄養」が与えられ、免疫が強化される可能性が示されました。
Cytotoxic T-cells mediate exercise-induced reductions in tumor growth | eLife
https://elifesciences.org/articles/59996
Exercise May Inhibit Cancer by Fuelling The Immune System, Study in Mice Suggests
https://www.sciencealert.com/exercise-might-delay-the-spread-of-cancer-by-fuelling-the-immune-system
この研究で、まず研究者はがんを患うマウスを「回転車輪で運動するグループ」と「身体的活動がないグループ」に分けました。この結果、定期的に運動したマウスはがんの成長が遅く、生存率が高いことが示されました。
運動するグループのマウスの生存率が上がった理由は、がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞の生成能力にあったと見られており、T細胞の生成能力がないマウスはがんの成長を抑制し、生存率を高めることができなかったとのこと。反対に、運動をしてないマウスであっても、運動するマウスから取ったT細胞を注入すると、状態が著しく改善したそうです。
「この結果は、細胞傷害性T細胞が運動によってがん細胞に対して効果を発揮するようになることを示します」と研究者は述べています。
また研究者は、このような変化が乳酸といった代謝物によってもたらされると考えています。マウス実験では、運動後のマウスは運動に関連する代謝物が8倍にまで増加したとのこと。これにより血中のT細胞が代謝物を取り込む量も大幅に増加しました。乳酸などが血中のT細胞に「栄養」を供給し、「抗腫瘍活性」を高める可能性があると研究者はみています。
さらに、今回の研究では運動をしていないマウスに乳酸を投与するという実験も行われたところ、腫瘍内のT細胞が増加し、運動をせずともがんの成長が抑制されると示されました。ただし研究者は「運動には乳酸レベルを上げること以上の統合的な何かがあります」とも述べています。
加えて今回の研究ではマウス実験に加えて8人の健康な男性を対象とした実験も行われました。実験で被験者は30分の自転車運動を行い、運動の前後で血液サンプルが採取されました。この結果、マウスと同様に、いくつかの代謝物レベルが上昇することが確認されましたが、代謝物により免疫系が強化されT細胞ががんを殺すかどうかを確認するには、さらなる実験が必要とのことです。
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