宿主の「舌」に成り代わる寄生虫の姿が3Dスキャンにより明らかに
「宿主」である生き物に寄生する寄生虫には、宿主の思考をコントロールし、最終的には自分のエサになるよう行動させてしまうものなど、さまざまなタイプが存在します。アメリカの生物学者が魚の頭部を3Dスキャンしたところ、「魚の舌に寄生し、血液をうばって最終的に『生きた舌』となる」タイプの寄生虫が映し出されました。
Meet the 'vampire' parasite that masquerades as a living tongue | Live Science
https://www.livescience.com/image-fish-tongue-parasite.html
アメリカのライス大学で生物学准教授として勤務するKory Evans氏が2020年8月10日にTwitterに投稿した内容がこれ。Evans氏がベラをスキャンしデジタル化している最中に、ウオノエ科の寄生虫がベラの口の中で「新しい舌」として寄生しているのを発見したそうです。
Mondays aren't usually this eventful. I found a tongue-eating isopod (purple) in one of our wrasse scans this morning while digitizing it. These parasites attach themselves to the tongues of fishes and effectively become the new tongue...horrifying #backdatwrasseup pic.twitter.com/axlraUrh8W
— Kory Evans PhD (@Sternarchella) August 10, 2020
Two Oceans Aquariumによると、このような寄生虫は通常、エラから魚の口の中に侵入し、14本の足でしっかりと舌にしがみつきます。そして舌にかみつき、抗凝血性の物質を放出することで、魚の血液をむさぼり続けます。寄生虫が血液を奪うため魚の舌は徐々に萎縮し、本来の舌がなくなることで、最終的に寄生虫が魚の舌に置き換わるとのこと。その後も寄生虫は魚から血液をもらい、寄生虫は魚の「生きた舌」として振る舞うようになります。
多くの場合、魚と寄生虫の共存関係は数年間にわたって続きます。ニュージーランドの国立水圏大気研究所の博士研究員であるStefanie Kaiser氏によると、魚は寄生虫よりも長生きするとのこと。
今回、ベラと寄生虫の共存関係を3DスキャンしたEvans氏は、スズキ目ベラ科の3D・X線データベースを作成するプロジェクトに取り掛かっている最中でした。Evans氏によると、ベラは舌に寄生虫がついていなくともユニークな頭部の構造をしており、「彼らは映画『エイリアン』みたいに2つ目の顎を喉に持っています。この2つ目の顎を使って、巻き貝などの殻を砕いて食べます」とのこと。ベラの特殊な頭蓋骨を3D化し、他の魚と比べることがプロジェクトの目的でしたが、その最中に偶然、舌に寄生虫がついた魚が発見されたわけです。
3Dスキャンされたベラの頭蓋骨はこんな感じ。紫色に着色されている部分が寄生虫です。
前から見るとこう。
なお、時には2匹の寄生虫が魚の口の中に寄生することもあるようです。
Double bunger, found on a Bonito, Port Stephens, NSW???? David and Leanne Atkinson pic.twitter.com/1YSfsCN57D
— Amanda Hay (@AmandaHay13) August 13, 2020
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