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「魅力的な人」はそうでない人に比べて犯罪の刑期が短くなる


これまでの調査から、容姿が優れている人が痛みを訴えても医者は軽視しがちであることや、面接官よりも容姿がいいと雇われにくいという、いわば「美人は必ずしも得をしない」傾向が示されています。しかし、法学博士であり法的トピックを配信する「The Law Project」の創設者であるRod Hollier氏によると、こと法廷の場においては、「肉体的に魅力的な犯罪者は刑期や罰金が軽くなる」ことが分かっているそうです。

Physical Attractiveness Bias in the Legal System — The Law Project
https://www.thelawproject.com.au/insights/attractiveness-bias-in-the-legal-system

Hollier氏がこれまでに行われた研究を分析したところ、「肉体的な魅力」は裁判に以下のような影響を与えることがわかりました。

◆1:
肉体的魅力は裁判官が下す「刑期」に影響を及ぼし、魅力のない犯罪者ほど刑期が長くなり、魅力的な犯罪者ほど刑期が短くなる。

◆2:
有罪/無罪の判決自体は、魅力の影響をほとんど受けない。魅力的な犯罪者は魅力的ではない犯罪者と同様に有罪判決を受けた。

◆3:
模擬陪審では、魅力的ではない犯罪者は、魅力的な犯罪者に比べてかなり長い刑期を言い渡される傾向にある。ただし模擬裁判の陪審員は実際の判決に関与しないため、この結果が直接犯罪者に適用されるわけではない。

◆4:
模擬裁判の陪審員の評決に対しては、魅力は軽微な影響しか与えない。

具体的にいうと、2000人以上の犯罪者の魅力を警察と学生によって1~5段階で評価してもらった研究では、「魅力的ではないと判断される犯罪者ほど多くの罰金を科されている」ことが示されました

以下のグラフは左から軽度の軽犯罪・中程度の軽犯罪・深刻な軽犯罪に分割されており、それぞれ青(最も魅力的でない)から水色(最も魅力的)の5段階で評価された人の罰金額が示されています。いずれのグラフも青いグラフの罰金額が最も高く、魅力的であるほど罰金額が下がることがわかります。


さらに、2006年の研究では67人の被告人について同様の方法で調査されたところ、魅力度が低い被告人は平均して4.1年の刑期を言い渡されたのに対し、魅力度の高い被告人は平均1.87年の刑期を言い渡されることが示されたとのこと。


そして、目が大きく、眉が薄くかつ高い位置にあり、額が大きく、顎が小さく、丸顔という、いわゆる「ベビーフェイス」の特徴を持つ犯罪者と裁判官の判決の関係について調べた研究では、犯罪者が男性でも女性でもベビーフェイスであるほど「行動が故意だった判断され有罪になる可能性が低くなる」ことも示されています

以下のグラフは縦軸が裁判官が犯罪が故意だったと判断する確率を、横軸が犯罪者の顔がベビーフェイスだった度合を示しています。横軸の数字が大きくなるほどグラフが下がることから、ベビーフェイスであればあるほど、故意だったと判断されない傾向がわかります。


また模擬陪審員に対する肉体的魅力の影響を調べた25個の研究を分析したところ、かなりの影響が認められました。例えばカナダの大学生125人が参加した研究では、レイプ被害者の肉体的魅力を評価したところ、被害者が魅力的であるほど、被験者は犯罪者を有罪だと判断する傾向にあったとのこと。このような傾向は他の研究でも認められるものですが、実際の裁判ではない模擬裁判であるため、実際の法廷での判断にそのまま適用できるものではないとHollier氏は述べています。

このように、法廷において人の魅力が影響しているとみられますが、一方で「人の魅力」と「判決」の因果関係はまだはっきりとは示されていません。Hollier氏は、魅力的ではない人々が魅力的な人々に比べて犯罪、特に暴力犯罪に傾倒している可能性や、研究において「犯罪者である」という事前知識が被験者の魅力評価に影響している可能性などを指摘しています。また、魅力的ではない人はその素質ゆえに社会で正当な価値を得ることができず、犯罪に結び付きやすいと主張する研究者も存在するとのこと

「魅力」はさまざまな言葉で説明されますが、一般的には「知的で、社会スキルがあり、性格に魅力があり、道徳的、利他的で、成功する可能性が高い有能な人」と認識されています。魅力的な人は身体的に健康で精神健康状態もよく、多くのお金をかせぎ、昇進し、ビジネスパートナーとして選ばれる傾向にあります。魅力的でない人は、その逆で、知的ではなく社会スキルの無い人と理解されます。2003年の研究によると、魅力的な人と魅力的ではない人を直接比較すると、両方の性質が強調される「コントラストバイアス」が存在するとのこと。加えて、肯定的な感情や刺激の処理に関係する内側眼窩前頭皮質の活動は、魅力度や道徳的正しさの度合で変化することも(PDFファイル)わかっています


ここからわかるように、「人の魅力によるバイアス」はほとんど人の意識に上りません。つまり、人々は意識的に「魅力的ではない人」を低く評価しているわけではないので、無意識にバイアスを持っている人々を道徳的に責めることはできないとHollier氏は述べています。

人の魅力によるバイアスを取り除く方法としてHollier氏が挙げているのが、「スローシンキング」の研究です。急いで思考することは心理的なゆがみの影響を受けやすく、「じっくり考え判断すること」が偏りを減らすことを助けます。

以下のグラフは124人の女子学生を対象とした2015年の研究で示されたもので、各グラフは左から被告人が「強力な証拠有り・魅力的」「強力な証拠有り・魅力的でない」「あいまいな証拠・魅力的」「あいまいな証拠・魅力的ではない」場合の量刑の年数です。強い証拠があると「魅力的ではない人」の刑期が長くなりますが、証拠がどっちつかずだと判断が魅力に左右されなくなることを意味します。ここから、強い証拠に飛びつくような状況は避け、証拠をかさねて熟考することがバイアスを減らす方法の1つだと考えられています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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