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Googleが専門家の3000倍の速度で野生動物の特定・ラベル付けを行う「Wildlife Insights」とは?


野生動物の居場所を特定するのは人間の肉眼では至難の業であるため、自然界に設置したモーション起動カメラで動物の姿を撮影するという方法が取られます。しかし、カメラは誤って風に揺れる葉を撮影することがあり、野生動物が物陰に隠れている可能性もあることから、これまで研究者は画像の中の動物を特定しラベル付けすることに多くの時間を割いていました。この分野にGoogleが参入し、AIの力で専門家の3000倍の速度で作業を行えるようにしています。

Using AI to find where the wild things are
https://blog.google/products/earth/ai-finds-where-the-wild-things-are/

世界自然保護基金によると、1970年以降、脊椎動物の数は約60%少なくなっており、国連の評価では2019年時点で100万種の生き物が絶滅の危機にさらされ、次の10年のうちにその多くが絶滅する可能性があるとされています。野生動物保護のため、Googleはコンサベーション・インターナショナルといった団体とともにモーション起動カメラを使い450万匹の野生動物をカメラで捉えるという試みを実施。撮影された写真はすべて、Googleのクラウドベースのプラットフォーム「Wildlife Insights」に帰属し、AIによってモニタリングから写真分析をシームレスかつ迅速に行えるようになっているとのこと。

Wildlife Insightsの写真や集計データは世界中の人が見ることが可能。これにより保護区の管理方法が変わり、地域の人々がより野生動物の保護を行いやすくなるとGoogleは述べています。


実際にWildlife Insightsがどのように活用されているのかは以下のムービーから見ることができます。

Wildlife Insights: Saving Biodiversity with Tech and AI - YouTube


「もし誰かが森の中に入ったとして、その人は森に生息する野生動物の90%を見逃すでしょう。動物たちは人間よりも早く音や匂いなどから人間の存在に気づきます」と語るのはコンサベーション・インターナショナルのJorge Ahumadaさん。このような理由から、人が野生動物の正しい生息地を知るのは至難の業です。


しかし、モーション起動カメラを森に設置していれば、その場に人間が存在する必要がないので、野生動物の姿を捉える可能性が高くなります。


カメラが撮影した映像を見つめる2人の研究者。


モーション起動カメラはこんな感じ。手のひらほどのサイズで、後ろにストラップがついているので森の中の任意の場所に取り付けることができます。


設置中の様子。カメラやセンサーを設置することで、野生動物に関する多くの情報を得ることが可能です。


「カメラによって質が高く、タイムリーな情報を得られるようになった」と語るAngelica Diaz-Pulidoさん。これにより、野生動物保護の指標が作れるようになり、負の影響を防ぐことが可能になったそうです。「これは非常に大きなことです」とDiaz-Pulidoさんは語りました。


歴史上、地球はこれまでに5回の大量絶滅を経験しましたが、6度目の大量絶滅が迫っていると国連のレポートでは述べられています。生物の多様性が失われる前に、人類は行動を起こす時期に来ているとのこと。


1台のカメラが1カ月に撮影する写真は15万枚もの数。年間にして何百万枚もの写真が撮影され、世界中の研究者に共有されます。


しかし、ただ撮影されただけの写真では、しげみの中に動物が隠れてしまっていることも。またカメラは風に揺れる植物を誤って撮影することもあり、これらの写真から、正しく動物を見つけ出すのは至難の業です。従来であればこの作業は人の手によって行われていましたが、GoogleのAIはアップロードされた写真から野生動物を検知し、種の個体数に関する洞察を得ることができます。また種・国・年月別に画像をフィルタリング可能なので、管理や分析も非常にスムーズに行えます。


従来はこのような作業は人の手によって行われていました。専門家は1時間あたり300~1000枚の画像にラベルを付けることができますが、Wildlife Insightsはこれを3000倍高速にし、1時間あたり360万枚の写真を分析できるとのこと。


種の識別はAIにとって難しい作業ですが、GoogleのAIは訓練が行われた614種の生物の中で、ジャガー、白ペッカリー、アフリカゾウといった種を98.6%の正確性で識別。また、動物が写っていない誤撮影画像を非常に正確に検出し、研究者の時間を無駄にしないといった点もポイントとなっています。

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in ソフトウェア,   生き物,   動画, Posted by darkhorse_log

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