遭難時にスマホの位置を高精度で特定できるGoogleの「緊急位置情報サービス」とは?
by StockSnap
重大なアクシデントに遭遇して緊急サービスに通報する時、最も重要な情報の1つが位置情報です。携帯電話の登場によって、電波さえ届いていれば、いつでもどこでも緊急通報をすることも可能になりました。しかし、携帯電話の発信位置を正確に特定するのは難しく、最大で10km以上もの誤差が生まれることもあります。そこでGoogleは、Androidスマートフォンの位置情報精度を緊急時に限り飛躍的に向上させる緊急位置情報サービス(ELS)を提供しています。
EENA 緊急位置情報テクノロジー - Google
https://about.google/stories/location-information-emergency-technology/
How it works | Android Emergency Location Service | Google
https://crisisresponse.google/emergencylocationservice/how-it-works/
Googleマップの位置情報サービスを担当するエンジニアのマリア・ガルシア・プジョル氏は、配車サービスや料理のデリバリーサービスにも使われている最先端の位置情報技術が緊急サービスには使われていないことに気づいたとのこと。そこで、緊急時の位置情報の精度向上を推し進めるプロジェクトを立ち上げました。
by Hans
プジョル氏は、10年以上にわたって「緊急時の位置情報の精度向上が必要だ」と訴えていた欧州緊急連絡協会(EENA)と連携。ヨーロッパ全域の救助・救援を行うさまざまな団体と協力しながら、高い精度で位置情報を特定できるサービスの開発に取り組みました。
そこで開発されたのが、ELSです。ELSはAndroid 4.0以降にOSの一部として組み込まれている機能の1つで、別途アプリケーションをインストールする必要はなく、緊急サービスに通報した時のみアクティブになります。
以下の画像は、左がELSを使った時、右がELSを使わなかった時の検索範囲。ELSを使う前は最寄りの基地局情報から推測するしかなく、場所によっては10kmを超える誤差が生じてしまうことがありました。しかし、ELSを使えば誤差数m~数十mという高い精度で位置を特定することが可能です。
ELSによる位置情報は、GPSとWi-Fiと各種センサーを組み合わせて最適な方法で位置を取得できるFused Location Provider(FLP)によって、スマートフォン内でローカルに計算され、AML形式でData SMSを介するか、あるいはGoogle独自の形式でHTTPSプロトコルを介して送信されます。この位置情報を緊急通報の受け手が受け取ることで、通報した遭難側の位置を救助側が把握できるというわけです。
ELSが初めて成果を上げたのは2017年1月のこと。リトアニアに住む男性が発作を起こして倒れてしまい、その場に居合わせた息子がパニックになりながらも、男性のスマートフォンで緊急サービスに通報。わずか7歳だった息子は自宅の住所をまだ言うことができず、最寄りの基地局の情報を使っても半径14kmにまで絞り込むのが限界だったそうです。
しかし、リトアニアがELSの対応エリアとなっていたことから、男性のスマートフォンから送られてきた位置情報を元に、男性の位置を特定することに成功。男性はすぐに近くの病院に搬送されたそうです。ヨーロッパでは緊急通報の70%から80%がスマートフォンからかかっているとのことで、ELSによって迅速な人命救助が期待されています。
プジョル氏は「私たちの目標は、生死を分けるタイムリミット内私たちの目標は、生死を分けるタイムリミット内に現在地がわからなかったせいで亡くなる人を、もうこれ以上出さないことです」「人々の役に立てることが、この仕事の一番大きなやりがいです。遭難者がどんな状況に置かれていようとも、助けることができるなら、私は助けに行きます」と語りました。
なお、日本では2007年頃から緊急時における位置情報の取得が検討されていて、緊急通報でGPS情報が送られる緊急通報位置通知が多くの自治体で導入されています。
緊急時等における救助機関からの要請に基づく位置情報取得および提供について|トピックス|一般社団法人 電気通信事業者協会(TCA)
https://www.tca.or.jp/topics/2014/0310_625.html
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