野菜だけでなくチーズや手作りクッキーまであらゆるものが無人販売できる理由とは?
Amazonはレジ無し店舗を拡大させていますが、最新の技術を持ち入らなくともレジカウンターなし、販売員なしで商品を販売するお店は存在します。ジャーナリストのJurgita Simelevicieneさんがスイスの無人販売システムに注目し、「なぜ無人で物を売ることが可能なのか?」という理由に迫っています。
Many Swiss farmers use honor system to sell their products. Here’s why
http://www.businessfondue.com/2018/09/15/which-country-is-famous-for-using-honor-system-yes-its-switzerland
スイスのSigny Avenexという村では、路上にいくつかのカボチャが広げられるという光景をよく目にします。ごろごろと転がるカボチャの中には「会計」を意味する「Caisse」という言葉が書かれた札付きのテーブルが立っているだけで、あたりは無人。誰かがカボチャを購入する人に対して会計をするわけでもなく、周囲に監視カメラがあるわけでもありません。
このような人の誠実さを前提とした無人販売所はスイスで何年も続いており、農家はファーマーズマーケットに出品するよりも、無人販売所という手段を選びます。日本やアメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、ノルウェーといった国において無人販売所は珍しくありませんが、世界的に見ると非常に特殊です。
Signy Avenexでは、農地にナイフが置いてあることもあるとのこと。農地を訪れた人はナイフで好きな野菜や果物を収穫して、値札に従ってお金を払うそうです。
スイスの無人販売所は野菜や果物にとどまりません。火をおこすためのまきや、卵、乳製品なども自己申告制の無人販売所で購入できます。まきを販売するChristiane Baumgartnerさんは「スイス人にとって正直さはとても大事なのだと私は思います。だからこそ自己申告に基づく販売システムが可能なのです」と語っています。
とはいっても、全く盗難が起こらないわけではないそうです。盗難が多いために無人販売を続けられず、自動販売機を導入した農家も存在します。
一方で、多くのスイス人は自己申告に基づく無人販売システムをとても大事なものだと考えているそうです。無人販売所は地元で育った作物を得ることができ、営業時間が存在せず、多くの場合はお店よりも安いためです。顔見知りの農家が作っているため、農薬を使っていないことがわかるというのも利点です。
このほか、スイスでは多様な商品が「無人店舗」で売られています。スーパーマーケットのように卵、りんご、豆腐、パスタ、手作りクッキー、ヨーグルト、チーズ、バターなどさまざなま物が販売されているにも関わらず、無人なのです。お店には監視カメラがありますが、その場で商品を監視する人は誰もいません。スイスのスーパーマーケットは日曜日に閉店していることがほとんどですが、無人販売店は、好きな時に来て誰とも話すことなく買い物ができるという点で非常に便利だそうです。
売り切れになったブドウの無人販売所。
以下は自分でラズベリーとブラックベリーを収穫できる農場。道路のすぐ隣にあり、フェンスはなし。好きな分だけ収穫したら丘を登って農家のもとに出向き、果物を量り売りするのだそうです。
無人販売所は農家が作物を販売するための時間とお金を削減する優れたシステムであり、消費者にとっては新鮮なものを手軽に買えるだけではなく「信頼されている」という感覚も得られる優れたものとなっています。
なお、Hacker Newsでは、上記のシステムに対し「スイスでも田舎にしか無人販売所がないし、ジュネーブのような都会では成り立たない」という点や、「アメリカにもあるが、これが機能する本当の理由は『誰も匿名ではない』コミュニティだからということだ」ということも指摘されていました。一方で、職場で無人販売所を設けてベーグルを売っていたところ、常に販売額よりも多くのお金が残っており、匿名のメモで「払い忘れや急いでいる人もいます。誰かが盗んだと思われて職場を嫌な空気にさせたくないので」と残されていたという逸話も投稿されていました。
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