心の中に潜んで悪意のある考えや行動のもととなる「ダークコア」とは?
By yori kato
この世の中には実にさまざまな考え方を持つ人が共に暮らしているものですが、その中には明らかに倫理的に疑問を抱かせる行動やモラル的に問題のある行動、または社会的にとても受け入れられない行動をとる人物が存在することも事実です。性格心理学者による研究チームは、人々の中に存在するこれらの特徴をDark Traits(闇の特徴)と名付け、人格の中にDark Core(ダークコア)が存在しているとしています。このDark Traitsは心理学の分野のみならず、犯罪学や行動経済学の分野においても注目されるようになっています。
The Dark Core of Personality
(PDF)https://www.researchgate.net/publication/326364629_The_Dark_Core_of_Personality
The Dark Core of Personality - Scientific American Blog Network
https://blogs.scientificamerican.com/beautiful-minds/the-dark-core-of-personality/
この研究を行っているのは、ドイツのウルム大学のMorten Moshagen博士およびデンマークのコペンハーゲン大学のIngo Zettler教授らによる研究チームです。研究チームでは、このDark Traitsには複数の要素があり、それぞれが相互に関連していることを明らかにし、「D-factor(D因子)」と呼ばれる概念が存在していることを提唱しています。
D因子は、「悪意の行動の正当性となる信念を伴い、他人を犠牲にして『自分の効用(one's own utility)』を最大限に引き出す基本的傾向」と定義されています。この場合の「効用」とは、「ゴールの達成」を意味しており、D因子の検査で高いポイントを示す人物は、他者の利益に反しても、または他者に負の結果をもたらしてでも「ゴールの達成」を最大限にすることを目的とすると考えられています。
By Nadia
「D因子」という言葉にピンとくる人もいるかもしれませんが、この概念は19世紀から20世紀にかけての心理学者チャールズ・スピアマンによって提唱された「g因子」と「s因子」の関係と類似するものとなっているとのこと。スピアマンはこれら2つの因子が人々の認知力(知性)を決定づけるという考え方を提唱していたのですが、「D因子」はその逆ともいえる「人の悪意」を決定づけるものとして提唱されています。
D因子には次の9つの特徴があると考えられているとのこと。
1.エゴイズム:コミュニティの幸福を犠牲にして自分自身の喜びや優位性に過度の関心を抱く。
2.マキャベリズム:恣意的な操作、卑劣な影響、および戦略計算に基づく行動。
3.道徳的な離脱:倫理に反する行動に強く影響する方法で個人の思考を差別化する、世界に対する一般化された認知オリエンテーション。
4.ナルシシズム:自我補強のために全てをつぎ込む動機。
5.心理的資格の付与:ある人がそれにふさわしく、他の人よりも多くの人に資格があるという安定した普遍的な感覚。
6.サイコパシー:感情、無神経さ、自己制御、衝動性に関わる欠落を持つ。
7.サディズム:権力と支配力を賞賛し、快楽と喜びのために意図的に身体的、性的、心理的な痛みや苦しみを他人に与える。
8.自己利益:物質的財産、社会的地位、認知、学業または職業的功績、幸福を含む社会的に価値のある領域における利益の追求。
9.悪意:別の人に害を及ぼすが、それはまた自分自身に害を及ぼすことにも。この害は社会的、財政的、身体的などさまざまな不具合を生じさせることになる。
By sucklead
そして、Moshagen博士らの研究チームは次の5つのポイントを見いだすに至っています。
◆1:9つのD因子はすべて相互に積極的に関連している。中でも、エゴイズム、マキャベリズム、道徳的な離脱、サイコパシー、サディズム、および悪意という特徴は特に強く相関する様子を見せていたことが判明しています。
◆2:D因子に最も強く関連するアイテムのパターンは、人物が持つ論理的モデルに関連する
例:効用の最大化(「手に入れたいもののためならどんなことでも言ってやる」)のために、他者の効用を阻害して(「少しの被害を被ることで、自分よりもふさわしい他者に罰を与える」)、悪意のある考え方を正当化する(「正直言って、私は他の誰よりも自分適任だと思う)。
◆3:D因子の得点が高い人物ほど、機会があれば自分のためにお金を貯める可能性が高い。また、自分の利益を最大化するために不正行為をはたらくなど、非倫理的な行動をとる可能性が高い。
◆4:D因子は、「自己中心主義」や「優位性」「衝動性」「無感覚」「権力」「侵略」「養育に対するネガティブな関連」「内面化された道徳的アイデンティティー」「社会的視点獲得」などの形で現れると同時に、「誠実さ」「公平性」「貪欲性の回避」「謙虚さ」といった前向きな形で現れることもある。
◆5:研究チームはスピアマンの原則が当てはまることを確認した。D因子は、いずれかの指標に決定的に依存することなく、多くの異なるDark Traitsのコアとなるもの捕らえた。事実、研究チームは無作為に項目の50%を除いた後であっても、このプロセスを1000回繰り返すと、依然としてすべてのD因子の間で非常に高い相関をもたらしたことを確認した。
◆自分のダーク度「ダークコアスコア」の測り方
先述の9つの特徴に関連するものですが、次の9つの設問に「はい」と答えた個数が多いほど、自分の「ダークコアスコア」は高いことがわかるとのことです。
1.いろいろな場面で手を抜かずに物事を進めるのは難しい。
2.自分のやり方を通すのに、賢く物事を操るのが好きだ。
3.不当な扱いを受ける人は、何かその原因を自分で作っているものである。
4.みんながそう言ってくれるので、私は自分が特別だと思っている。
5.正直に言って、私は他の人よりも称賛に値する。
6.手に入れたい物のためならば何だって言う
7.人々を傷つけるのは興奮する
8.自分の成功を他の人に確実に知ってもらうようにしている
9.他者が相応の罰を受けるのを見るために、時には自分が少しの被害を受けることも意味がある
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