ステンレス製の鍋やフライパンを「安価で衛生的に保つ方法」が研究者によって発見される
ステンレス製の鍋やフライパンは丈夫でさびにくい性質を持っていることから、多くの人が使用しています。しかし、何度も調理に使用していると細かい傷がつき、そこにばい菌が繁殖してしまうという問題点があります。トロント大学で材料工学の助教を務めるベンジャミン・ハットン氏らの研究チームは、ステンレス製の鍋やフライパンにできた細かい傷にばい菌が繁殖できないように、安価で衛生的に保つ方法を発見しました。
Food-Safe Modification of Stainless Steel Food-Processing Surfaces to Reduce Bacterial Biofilms - ACS Applied Materials & Interfaces (ACS Publications)
https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acsami.8b03788
Turns Out Cooking Oil Is Ridiculously Good at Repelling Bacteria, Resulting in a 1,000x Reduction
https://www.sciencealert.com/cooking-oil-secret-weapon-in-fighting-bacteria-in-kitchens
ハットン氏らの研究チームが発見したを方法は、「ステンレス製の鍋やフライパンの表面に食用油をコーティングする」というもの。これを行うだけで、サルモネラやリステリア、大腸菌などによる汚染を防ぐことが可能になるそうです。
研究チームは「一般に販売されている食用油でステンレスの表面をコーティングすると、バクテリアをはじく効果が非常に高いことがわかっています。油は細かい傷を埋めるだけでなく、疎水性の層を作るので、細菌などが付きにくくなります」と述べています。以下の画像は、食用油でコーティング施したステンレス鋼とコーティングを施していないものを比較したものです。両方のステンレス鋼には食べかすを想定した茶色の液体を事前に垂らしていますが、コーティング施した左側のステンレス鋼には液体がこびり付いておらず、衛生的に保たれていることがわかります。
また、研究チームは食用油のコーティングによる効果も検証しています。検証によると、表面に食用油をコーティングするだけで、食中毒や交差汚染が発生するリスクを1000倍低下させることが判明し、その衛生度は非常に安全でクリーンな調理場や食品加工場に相当するそうです。
また、通常ではあり得ない頻度で洗ったとしてもコーティングが剥がれにくい性質を持っていることも報告されています。万一コーティングが剥がれたとしても、何度でも再コーティングすることが可能。ハットン氏は「1日1回コーティングする仕組みを導入すれば、衛生的な状態を常に保つことができます」と語っています。
記事作成時点で研究チームはこの技術を発展途上国に導入したいと考えているとのこと。途上国では年間200万人もの人々が食中毒でなくなっており、衛生面で大きな課題があります。そこで、毎日食用油でコーティングする技術を途上国に導入できれば、多くの命を救うことにつながります。
By GSK
ハットン氏は「食品調理器具の汚染は健康に影響を与えるだけでなく、大規模なリコールに発展する可能性があります。対策として、問題の器具を化学薬品で洗浄したとしても、問題が再発してしまう可能性が残っています」と語り、研究チームが発見したコーティング技術は先進国が持つ衛生上の課題も取り除くことになると説明しています。
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