「感染するガン」を引き起こす可動遺伝子「Steamer」とは?


ある個体から別の個体へと感染するガンは、これまでにも犬やタスマニアデビルなどの一部の動物で見つかっていましたが、貝でも同様にガンが感染によって広がることが確認されました。この貝では可動遺伝子「Steamer」と呼ばれる因子が見つかっており、感染経路の解明が急がれています。

Activation of transcription and retrotransposition of a novel retroelement, Steamer, in neoplastic hemocytes of the mollusk Mya arenaria
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4191779/

This Jumping Gene Spreads Through Marine Animals' DNA - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2018/04/the-shellfish-gene/558131/

1970年代後半にアメリカ・メイン州の海岸で、オオノガイが大量に死んでいるのが確認されました。オオノガイの血液にガン細胞が見つかり、乳白色に変色した血液が器官に詰まって死んでいることから白血病だと考えられましたが、研究者たちはガンを引き起こした原因を突き止めることはできませんでした。

謎の白血病発見から40年ほどたって、コロンビア大学のステファン・ゴフト博士が、オオノガイの白血病はレトロトランスポゾンによって感染するガンであることを突き止めました。ゴフト博士はガンに関係した可動遺伝子を「Steamer」と命名しています。健康なオオノガイはDNAの中に2~10個のSteamerのコピーを持っています。しかし、ガンを発症したオオノガイには150~300個のコピーが確認されたとのこと。

ゴフト博士の研究チームはアメリカ東海岸の貝を調べたところ、カキ、ムール貝、コックルなどの貝のDNAにもSteamerのような遺伝子(Steamer様遺伝子)を発見しました。奇妙なことに、これらの遺伝子のいくつかは宿主である貝の種類が違っていても驚くほど似ていたとのこと。具体的には、オオノガイとマテガイは3億~5億年かけて異なる種の貝に進化した結果、遺伝子の同一性は65%しかないにもかかわらず、Steamer遺伝子は約97%が同一だったそうです。


貝の種類を超えてガンの感染の可能性があるSteamerですが、他にも珊瑚、ウニ、魚類などの別の生物でもSteamer様遺伝子の存在が見つかっています。そして、ゼブラフィッシュで発見されたSteamer様遺伝子は最初にオオノガイで発見されたSteamerとほとんど同じだったとのこと。

Steamer様遺伝子が異なる生物間で感染する経路についてはよくわかっていませんが、水生生物の間を移動していることから水中での感染の可能性や、海洋寄生虫がキャリアとなってSteamerを運んでいる可能性が考えられています。

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