西洋風の名前で語尾がオ(o)だと男性名、ア(a)だと女性名になる理由

かつて流行したCMソング「きいてアロエリーナ」で思い浮かべるのは柔らかな光景で、そこにいるのは女性でしょう。でも「きいてアントニオ」だったらどうでしょうか。「くよくよすんな、大丈夫だよ」と励まされ、闘魂注入でビンタされそうです。1、2、3、ダー!
こんにちは、自転車で世界一周をした周藤卓也@チャリダーマンです。西洋風の名前は「ア(a)」で終わると女性、「オ(o)」で終わると男性っぽくなります。だからアロエリーナとアントニオではイメージが違うのです……と強引に始めてみましょう。
◆男性名詞と女性名詞
高校の頃、将来の旅を見すえてNHKラジオのフランス語講座を聞いていました。そこで、フランス語の名詞には性があることを知ります。「chateau(城)」は男性名詞、「promenade(散歩道)」は女性名詞といった具合です。ただ、実際の旅では全く意識しませんでした。単語を繋げるレベルの会話で精一杯でした。

同じようにスペイン語の名詞にも性があります。こちらは息子と娘にあたる「hijo、hija」、兄弟姉妹の「hermano,hermana」、夫妻の「esposo,esposa」など同じスペルの語尾で意味が変わる単語もあって、旅でもちょっとは意識していました。男性名詞は「o」で終わり、女性名詞は「a」で終わることが多いのです。このことからスペイン語圏の男性の名前は「オ(o)」、女性の名前は「ア(a)」で終わるパターンが目立っています。スペイン語と言語が近い、イタリア語でも同じような傾向がありました。(ポルトガル語にも、同じような傾向があるっぽいのですが、勉強不足につき今回はパスしています。すいません。)
こうした法則を頭に入れて「スペイン語圏」「イタリア語圏」の人物を思い浮かべて下さい。男性の名前は「オ(o)」、女性の名前は「ア(a)」で終わっていませんか?
◆実例
・アニメ
「ピノッキオ(Pinocchio)」はイタリアが舞台となったおとぎ話。ディズニー制作の映画も有名です。

ジブリアニメ「紅の豚」も舞台はイタリア。主人公の豚の名前は「マルコ・パゴット(Marco Pagot)」となっています。

アニメ「母をたずねて三千里」の主人公の少年も「マルコ(Marco)」です。イタリアに暮らすマルコがアルゼンチンに出稼ぎに出たまま音信不通となった母親を探しに行く物語。お父さんは「ピエトロ(Pietro)」、お母さんは「アンナ(Anna)」、お兄さんは「トニオ(Tonio)」と見事に法則があてはまります。

卵の殻をかぶった黒いヒヨコの「カリメロ(calimero)」もイタリアの漫画家による作品。ヒロインは「プリシラ(Priscilla)」。

カメの忍者が暴れまくる「ミュータント・タートルズ」の主人公は4人。それぞれ「レオナルド (Leonardo)」「ラファエロ (Raphael)」「ミケランジェロ (Michelangelo)」「ドナテロ (Donatello)」とイタリアの芸術家に因んだ名前が付いていました。(アメリカではラファエル(Raphael)なのですが、日本ではラファエロという名前になっています)


学校の世界史やテレビのニュースで出てくる人物の名前も注目してみると……
名 | 姓 | 名 | 姓 | 職業 | 出身国 |
---|---|---|---|---|---|
ベニート | ムッソリーニ | Benito | Mussolini | 政治家 | イタリア |
フランシスコ | フランコ | Francisco | Franco | 政治家 | スペイン |
シルビオ | ベルルスコーニ | Silvio | Berlusconi | 政治家 | イタリア |
ウゴ | チャベス | Hugo | Chavez | 政治家 | ベネズエラ |
アルベルト | フジモリ | Alberto | Fujimori | 政治家 | ペルー |
アウグスト | ピノチェト | Augusto | Pinochet | 政治家 | チリ |
パブロ | ピカソ | Pablo | Picasso | 芸術家 | スペイン |
マルコ | ポーロ | Marco | Polo | 冒険家 | イタリア |
ドミンゴ | グスマン | Domingo | Guzman | 野球選手 | ドミニカ共和国 |
フリオ | ズレータ | Julio | Zuleta | 野球選手 | パナマ |
ディエゴ | マラドーナ | Diego | Maradona | サッカー選手 | アルゼンチン |
チリ人妻としてワイドショーを賑わせたアニータ・アルバラードさんも「ア(a)」で終わる女性でした。
◆日本人も応用してます

ドラゴンクエストは日本を代表するロールプレイングゲームの一つ。その中でも5作目「天空の花嫁」の結婚イベントは「ビアンカ派」「フローラ派」に分かれ、今なおネット上では大論争が繰り広げられています。リメイク版では「デボラ派」という第3の選択肢が追加されました。この3人の花嫁の名前はいずれも「ア(a)」で終わっています。
ドラゴンクエストの世界観は街も城も西洋を意識した造りです。殿様じゃなくて王様、お寺じゃなくて教会、刀じゃなくて剣ですしね。日常と乖離した世界にこそ冒険心をくすぐられてしまうのです。だからこそ、登場するキャラクターの名前も西洋風になっていました。
歴代シリーズで語尾が「ア(a)」で終わる女性キャラを集めるとこのようになります。
キャラクター名 | 作品名 |
---|---|
ローラ | ドラゴンクエストⅠ |
アリーナ | ドラゴンクエストⅣ |
マーニャ | ドラゴンクエストⅣ |
ミネア | ドラゴンクエストⅣ |
ビアンカ | ドラゴンクエストV |
フローラ | ドラゴンクエストV |
デボラ | ドラゴンクエストV |
バーバラ | ドラゴンクエストⅥ |
アイラ | ドラゴンクエストⅦ |
ゼシカ | ドラゴンクエストⅧ |
ミーティア | ドラゴンクエストⅧ |
リッカ | ドラゴンクエストⅨ |
「オ(o)」で終わる男性キャラを集めるとこのような感じに。
キャラクター名 | 作品名 |
---|---|
クリフト | ドラゴンクエストⅣ |
トルネコ | ドラゴンクエストⅣ |
ピサロ | ドラゴンクエストⅣ |
チャモロ | ドラゴンクエストⅥ |
ドランゴ | ドラゴンクエストⅥ |
ガボ | ドラゴンクエストⅦ |
ゲーム制作陣が意識しているかどうかは分かりませんが、このような傾向はありました。
また、任天堂のポケットモンスターでニドラン♂(オス)が「ニドリーノ(Nidorino)」、ニドラン♀(メス)が「ニドリーナ(Nidorina)」に進化するのも同じような理由でしょう。
ラノベで異世界転生の西洋ファンタジーをやるときなんかに語尾の「オ(o)」「ア(a)」を意識して登場人物の名前を付けるとしっくりと収まると思います。(ただし、同じ西洋にしてもイギリス系、ドイツ系、ロシア系などもあるので一概には言えません。)
◆語尾を変えるだけで

上記で紹介した同じスペルの語尾で意味が変わるスペイン語の単語をまとめるとこのようになります。英語の「husband(夫)」と「wife(妻)」、「son(息子)」と「daughter(娘)」のように不規則ではないので、かなり覚えやすかったです。
男性 | 意味 | 女性 | 意味 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
abuelo | おじいちゃん | abuela | おばあちゃん | |||
esposo | 夫 | esposa | 妻 | |||
hijo | 息子 | hija | 娘 | |||
hermano | 兄弟 | hermana | 姉妹 | |||
nieto | 孫(男) | nieta | 孫(女) | |||
nino | 男の子 | nina | 女の子 | |||
mario | ゲームキャラ | maria | 聖母 | |||
toro | 牡牛 | vaca | 雌牛 | |||
gallo | 雄鶏 | gallina | 雌鶏 |
また、牛や鶏も性別によってスペルが違っていたりしました。
◆法則に注目してみると
「オ(o)」「ア(a)」によって性が決まるという外国語の法則を頭に入れると、日常の中にも思わぬ発見が転がっています。
・なっちゃんとオランジーナ

サントリーのオレンジシュースといえば、そう「なっちゃん」です。1998年の発売当初、女優の田中麗奈さんが商品名と同じ「なっちゃん」という役柄で演じたCMは大きな話題となりました。ですので「なっちゃん」といえば女性を連想してしまいます。
時は流れて2009年、サントリーはフランス飲料大手のオランジーナ社を買収します。主力商品のオランジーナはオレンジ系の炭酸飲料でフランスでは国民的な人気商品。発売当初はスペイン語のオレンジことNaranjaに「かわいい」「小さい」という接尾辞の-inaを付けた「ナランヒーナ(Naranina)」という名称でした。それからフランス語で同じ意味となる「オランジーナ(Orangina)」へと商品名が変わっています。スペイン語が由来だと-inaは女性系となるのでオランジーナも女性を連想するのでした。
なっちゃんとオランジーナ、海を隔てた2つのオレンジ女子がサントリーという1つの企業のブランドとなっていました。
・モナリザの微笑み

「モナリザ(Mona Lisa)」は世界一有名な女性の肖像画です。このモナは「マドンナ(Madonna)」の短縮形。「彼女はこのクラスのマドンナだ」とヒロインのような意味で日本人にも馴染みのある言葉となっています。このマドンナは古いイタリア語が由来。「私の」という意味の所有格「マ(ma)」と「淑女」という意味の「ドンナ(dona)」に分けることができます。このことからモナとは「我が淑女」という意味になります。
つまり、「モナリザ(Mona Lisa)」は「我が淑女リサ」という風に訳せます。女性を表す言葉なので語尾が「ア(a)」で統一されていました。これを描いたのは「レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)」と語尾が「オ(o)」で終わるイタリア人の男性でした。
・ロシア語でも

ロシア語の名詞にも姓(男性、女性、中性)があります。従ってロシア人の名前にも男女で違いがありました。ロシア人の女性の名前の多くは「ア(а、я)」で終わっています。
また、名字にも男性系と女性系がありました。一例に名字が「フ(в)」で終わると男性、「ワ(ва)」で終わると女性というルールがあります。分かりやすい例は、プーチン大統領の側近「メドベージェフ」首相と、フィギアスケートでアイドル的な人気の「メドベージェワ」という2人。
こちらも例を挙げるとこのような感じに。
名前 | 職業 |
---|---|
(女性) | |
シャラポワ | テニス選手 |
ソトニコワ | スケート選手 |
テレシコワ | 宇宙飛行士 |
(男性) | |
ブレジネフ | 政治家 |
フルシチョフ | 政治家 |
アンドロポフ | 政治家 |
ガモフ | 物理学者 |
◆まとめ
題名にもした「西洋風の名前で語尾がオ(o)だと男性名、ア(a)だと女性名になる理由」はスペイン語、イタリア語の影響からでした。ただ、繰り返しになりますが英語圏やドイツ語圏だとまた違ってくるので一括りにはできません。スペイン語、イタリア語にしても法則にあてはまらない名前はもちろんあります。
国名の「コスタ・リカ(豊かな海岸)」、アメリカの自治領「プエルト・リコ(豊かな港)」のようにスペイン語の名詞の性は形容詞も「リカ(rica)」「リコ(rico)」のように「ア(a)」「オ(o)」に分かれます。ですので、男女の名前もそうですが、スペイン語、イタリア語を勉強の際には言葉のお尻に注目してみて下さい。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
Facebookページ https://www.facebook.com/chariderman/
DMM講演依頼 https://kouenirai.dmm.com/speaker/takuya-shuto/)
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in コラム, Posted by logc_nt
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