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創造性はひらめきではなく「積み重ねた失敗」から生みだされる

By Son of Groucho

優れた芸術作品や工業製品に触れると、「一体どのような天才のひらめきから生まれたのだろうか?」と考えてしまうものですが、「創造性は失敗によって生み出される」ことを指し示す数多くの例があります。高い品質を生み出すためには多くの失敗は不可欠であり、質を追うならば失敗を受け入れる必要があるという「Permission to Fail(失敗の許容)」なる考え方が注目されています。

Viewpoint: How creativity is helped by failure - BBC News
http://www.bbc.com/news/magazine-34775411

芸術がいかにして生み出されるのかについて書かれた名著「Art and Fear」では、著者のデイビッド・ベイルズ氏とテッド・オランド氏が、芸術を専攻する学生に対して行った興味深い実験について記しています。ベイルズ氏らは、陶芸の課題を出すときに、学生を大きく2つのグループに分けました。1つのグループには、「作品の評価は作った作品全部の重さの合計で行う」と告げ、残りのグループには、「作品は1点のみ提出してもらう」と告げました。つまり、作品の「量」によって評価するグループと、「質」によって評価するグループに分けたというわけです。


実験の結果、最高の評価を受けた作品は「量」によって評価すると告げられたグループから生み出されました。さらに、驚くべき事に、美しさや創造性の観点から高い評価を受けた作品のほとんどが、「量」によって評価すると告げられたグループから生み出されたそうです。

「量」で評価するグループの学生は、試行錯誤しながら忙しく手を動かして作品を乱発していたのに対して、「質」で評価するグループの学生は作品を作る前にイメージを大きくふくらませた上で、これぞという1点に取り組んだそうですが、結果は作品を作りまくったグループの学生の作品の方が圧倒的に高い質であったとのこと。つまり、「量が質を生み出した」というわけです。

「量が質を生み出す」「高い品質は失敗の数に比例する」という例は枚挙にいとまがなく、それは芸術作品に限られません。「吸引力が落ちない掃除機」を生み出したジェームズ・ダイソン氏は、デュアルサイクロン掃除機を作り始めた当初から最終製品像をイメージできていたわけではないそうです。


ダイソン氏は、従来の掃除機とは異なるデュアルサイクロン掃除機のデザインを考え出すまでに、なんと5126個もプロトタイプという名の失敗作を制作したとのこと。ダイソン氏は、「人々は想像力とはミステリアスなプロセスだと思っています。革新的な製品はある種の神がかったひらめきの産物であると考えています。しかし、創造性とは改良することができる類いのものです。つまるところ、創造性とはどれだけ失敗から学べるか、ということなのです」と、自身の製品開発過程を表現しています。

失敗の数が成功を決定づけるという例は、アニメの世界にもあります。「トイ・ストーリー」や「ファインディング・ニモ」などの大ヒット作で知られるピクサーの高品質なアニメは、高い創造性を持つ天才たちによって作り出されていると思われがちですが、実は数々の失敗の積み重ねによって各作品は生まれているとのこと。90分のアニメ映画は約1万2000個の絵コンテで構成されているところ、制作チームは実際に作品を完成させるまでにその10倍以上の12万5000個もの絵コンテを作成するそうです。このような「作っては失敗、作っては失敗という反復プロセスを経ることによってのみ、作品には魂が宿るものです」とピクサーのエド・キャットマルCEOは述べています。


このような「多くの失敗が高い質を生み出す」という事実を踏まえて、「あえて失敗する(Dare to fail)」という考えがあります。つまり、失敗作が別の成果に変化する例は、GoogleやAppleなどのIT企業の製品開発にもよく見られるそうで、失敗をおそれず、むしろ奨励することが質を高める手段として有効というわけです。

「ニュートンは落ちるリンゴから万有引力を発見した」という話に代表されるような、過去の偉人による発見や創作についての逸話については、多くがフィクションであるという考えもあるとのこと。偉大な成果は数え切れない量の失敗が積み重なった先に生まれるという事実を考えれば、高い品質を生み出すのに大切なのは、「天才的な才能」よりも、粘り強く諦めずに「失敗し続ける覚悟」なのかもしれません。

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in メモ,   アート, Posted by darkhorse_log

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