なぜ人は「$9.99」のような端数の価格に引き寄せられてしまうのか?
By Yasmeen
買い物をする時によく見かけるのが「1980円」や「599円」などの端数で表示された価格設定。これらは主にお得感を出すために使われることが多い価格設定ですが、実際にはさらに幅広い心理的効果があり、価格設定による心理的効果にはさまざまなバリエーションがあることがわかってきました。
The Psychological Difference Between $12.00 and $11.67 - The Atlantic
http://www.theatlantic.com/business/archive/2015/01/the-psychological-difference-between-1200-and-1167/384993
Tim Harford — Article — Pound for pound 99p is worth every penny
http://timharford.com/2012/06/pound-for-pound-99p-is-worth-every-penny/
このようにキリのよくない数字を使った価格設定は「端数価格」と呼ばれ、もちろん海外でもよく使われているもの。店頭やAmazonなどで「$○○.99」という価格をよく目にすることがあります。「本当にたった1セント(約1円)安く書かれているだけで、お得感があるのだろうか?」と疑問を感じてしまうところですが、実際にその心理的効果を研究した結果からはその効果が明確にされています。
人には数字を左から右に読んで理解する習慣があるため、一番右にある「.99」などの数字よりも、一番左に書かれている数字に最も強い印象を受ける傾向があることがわかっています。これは「Left Digit Effect(左の数字効果)」と呼ばれる効果で、例えば「10.00ドル」と「9.99ドル」の表記がある場合、その差はわずか1セント(約1円)しかないにもかかわらず、消費者の受ける印象は「10ドル台」と「9ドル台」というように大きく違いが生じるというもの。このような心理的な傾向を利用した価格設定は「心理的価格設定」と呼ばれ、お得感を与えて購買意欲を刺激する手法として古くから用いられてきました。
しかし、この端数価格が効果を示さないケースも存在しています。ビジネススクールのINSEADおよびNanyang Business Schoolが行った研究結果からは、商品の種類によって最も好まれる価格設定に違いがあることがわかりました。
研究では、シャンパンのような嗜好品や娯楽用品と計算機のような実用品に対してさまざまな価格設定を行い、どの価格設定が最も選ばれたかを検証。すると、シャンパンが最も売れた価格はキリのいい「40ドル」であったことが分かり、「39.72ドル」や「40.28ドル」といった価格設定はあまり購買意欲を駆り立てなかったことが分かりました。一方の計算機のような実用品の場合は、予想どおりに「3.99ドル」のような端数価格だったことがわかっています。
By L.C. Nøttaasen
さらに別の研究では、参加者に対して1台のカメラを買うように指示したのですが、その際に「行楽に持って行くため」と「授業で使うため」の別々の目的を与えました。すると、行楽用のカメラはキリのいい価格が選ばれる傾向に、そして授業用のカメラは端数価格が選ばれる傾向にあったこともわかっています。
どうやら、購買者は端数価格による「お得感」を重視するのと同じぐらい、嗜好品やぜいたく品に対しては「お買い得感で選んでいない」という「満足感」を価格から感じている様子が明らかになってきました。消費者がものを購入するという心理には、さまざまな背景が反映されているようです。
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