「インターステラー」のSFっぷりは一体どれぐらいで何がスゴイのか、SF小説とかSF映画とか大好き野郎が見るとこうなる


結論から言うと、11月22日から日本でも公開されるSF映画「インターステラー」は、映画として考えるとかなりハードなSFに属するが、SF小説として考えると割と標準的な部類であり、だからこそ、そこがスゴイという感じになります。


そのため、「どれぐらいSFの知識があるか?」「どれぐらいブラックホールやワームホールや特異点や5次元などの知識があるか?」という、観賞する側が持っているそもそもの前提知識保有量によって、感想に天と地ほどの差が出るレベル。


しかも本編中ではゴリゴリガリガリのハードSFであるにもかかわらずというか、だからこそ、実際の科学的知識や知見や理論に裏付けられまくっているSF考証部分についての解説や説明がほとんどなく、セリフとしてちょろっと出てくる程度。


そのため、知識不足状態で見ると「父と娘の愛」とか、そういう方向での理解しかできない、という残念なことになってしまい、せっかくの「2001年宇宙の旅」や「コンタクト」以来の超絶ハードモードでガチンコなSFをビジュアルとして映像化して、目の前で見せてくれるという貴重な体験のすごさが理解できないということになってしまいます。


というか、ハリウッド発の映画として「SF小説でよくあるようなバリバリのサイエンス・フィクション」のレベルまで持ち上げて突っ込んできたという点にこそインターステラーの真価は存在しており、ヒューマンドラマ的な部分はあくまでも、超ド級のSFがあってこそ引き立つもの、というのが率直な感想です。


というのも、インターステラーを見てまず感じるのは「日本のアニメはやはり脚本とか設定的にはハリウッドの最先端と戦えるレベルなのだな」ということ。「トップをねらえ!」「トップをねらえ2!」「四畳半神話体系」の3つをすべて鑑賞済みでなおかつ「面白い!」と感じるようなセンス・オブ・ワンダーを持っているのであれば、「お、アレをこうするとインターステラーに出てくるソレになるのだな、ふむふむ」というようにして、より理解度が深まります。深まりますと言うよりはむしろ、「ブラックホールが!」「ワームホールが!」「ウラシマ効果が!」「相対性理論が!」「特異点が!」「次元を超えて!」「ワープです!」みたいなのに激燃え&激萌えであればあるほど、ニヤニヤできる映画です。


実際にどれぐらいSFとしてコリコリに凝りまくっているのかというのは、以下の13分もある日本語字幕付きメイキング映像を見ればわかります。

映画『インターステラー』スペシャル映像【HD】2014年11月22日公開 - YouTube


「本作の始動時から科学的正確さを目指した」


「重力の異次元移動の観点で科学はどこまで進歩してるか」


「ブラックホール周辺の重力と光の影響を」


「科学に忠実に描こう」


「幸運にも重力の権威キップ・ソーンが」


「協力してくれた」


「時空 ブラックホール ワームホールに関して」


「権威の1人だ」


「ストーリーに実際の科学が製作開始当初から」


「とても深く盛り込まれた点だ」


「ポール率いる視覚効果チームが」


「キップのデータを基にリアルな映像を創り出したの」


「できあがった映像は壮観だった」


「物理や科学や数学を分析したら」


「リアルな映像のヒントがたくさんあった」


「ワームホールを正確に描いた映画は今までなかった」


「ブラックホールも同じだ」


「今回初めて その描写が」


「アインシュタインの一般相対性理論に基づいている」


そのため、自作品の最終話に有名SF小説・映画などのタイトルを少しもじって「果てし無き、流れのはてに…」「星を継ぐ者…」「世界の中心でアイを叫んだけもの」「まごころを、君に」というようにしてしまうほどSFに理解があり、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」で知られる映画監督の庵野秀明氏は以下のような感想に至っているわけです。

ストイックゆえに圧倒的なビジュアル。無機物と物理計算に特化したCG映像。シンプルでみごとなドラマとストーリー。3時間もの上映時間をまったく感じさせない役者と演出。圧巻です。面白かったです。お時間ある方は是非、アイマックスでの御鑑賞をお勧めします。
―庵野 秀明(映画監督)

こういうSF的な知識がどれぐらいあるかで感想が違ってくる、という視点で考えると、以下の各映画監督のコメントも「ああ、それで、このようなコメントを書いているのだな」というのがよくわかります。

何のために、人は自らの命を投げ出すのか。観る者の知性と好奇心を揺さぶりながら、まるで科学者のような手際でその答えが導かれていく。時間と、時空と、次元を超えて。映像の革命家ノーランが空前絶後のスケールで描く未来への希望。
―大友 啓史(映画監督)

誰も目にしたことの無い世界、誰も辿り着けない異次元の領域にこの映画は存在している。これは、映画を超越した”創造物”だ。
―李相日(映画監督)

「娘に愛想をつかされようと、父は一人世界を救う」。ダークナイト以来、クリストファー・ノーラン監督が一貫して抱き続けている哲学が本作にも通底している。誰にも頼まれなくても世界を救うのだ、と。ノーラン渾身の叙情詩。
―神山健治(アニメーション映画監督)

相対論や量子論が好きな人には垂涎の宇宙の映画。でも決して難しくない。この映画には、人類の想像も及ばないほど広大な宇宙の果てに、父娘の愛を、全身全霊で感じ取り、驚愕し、感動する「初体験」が待っている。
―大谷 健太郎(映画監督)

彼らの想像力は次元を越えて希望の扉を叩く。五次元表現にも打ち震えましたが、親子の絆にも涙が止まりませんでした。時空を超えて愛を届ける、なんてロマンチックな話なの。
―森本晃司(アニメ監督)

だからといって、SF知識がないとさっぱりわからないかというとそうではなく、むしろ1周目は単純に「宇宙を舞台にした壮大なヒューマンドラマ」として鑑賞し、それから前提知識をある程度つけてからもう一度2周目として鑑賞すれば、「そうか!それでここはこういう描写・演出になるのか!ご都合主義なだけではなかったのか!」というのがわかるようになり、一粒で二度おいしいというか、「少年時代に見たときは何となく面白いなと感じただけだったが、成長して社会人になっていろいろ経験してから見たらその本当の意味が理解できて、より感動できた」というような感覚が得やすいはず。


さらに前提知識の有無を問われる部分で言うと、インターステラーのクリストファー・ノーラン監督の前々作である「インセプション」と同じノリで見に行くと返り討ちに遭うことは必然です。


インセプションでは「夢の中の夢の中の夢の中の夢」というようにして一種独特の夢の構造や階層があり、そんな知識は映画を見る観客の誰も持っていません。だからこそ、映画の序盤で割といろいろなことを説明しており、おかげで、映画的な場面カットや手法を逆手に取って、いつの間にか「夢」に入って、そして「どこからが夢なのか」というようなトリック的見せ方が非常に効いていたわけです。


が、インターステラーはそのあたりがほぼごっそりと抜け落ちているのが最大の特徴。上映時間自体がなんと「169分」もある映画なので、じっくりとマジもののSF設定を、ハードSF映画初心者でもわかるように構成して説明している時間が事実上なかった、というのも裏事情としてあるような気がします。


このようにして思い切った「わかってくれる人だけわかってくれればいい、バカ親切な説明はしないぜ!」という割り切りができるバックグラウンドとしてはもう1点、そもそもアメリカでは映画を鑑賞する人口や回数が日本よりも圧倒的に多いから、というのが考えられます。

アメリカだとテレビのドラマでも割とSF設定のストーリーが多く、対して日本のドラマを見ると、そこまでSFに偏ったものは非常に少ないのが現状。そのため経験値の差が観客側にあり、「アメリカでは好評だが、日本ではそこまでよい評価が得られないのではないか」「慣れていないものを突然見せられるわけなので「わかる範囲」でしか評価できず、結果として、愛「だけ」をテーマにした映画であるという誤解を受けるのではないか」「何より、あまりにもハードSF寄りな部分が多いため、放っておくと「ダークナイト」みたいに「日本だけで当たらなかった」というような感じになる可能性もあるのではないか」と危惧してしまうぐらいに、違う意味で「よく」できています。


そのため、インターステラーの脚本を担当した監督の弟であるジョナサン・ノーランがなんとアシモフのSF「ファウンデーション」の脚本を担当することに。

そんなわけなので、「なんか余所のレビューとか感想とか見てると愛とか父とか娘とか家族とか書いてあるので見る気が失せた、オレが見たいのはSF映画であって、ヒューマンドラマのお涙ちょうだい感動映画じゃねーんだよ!」という人であればあるほど、見に行くべき映画、それが「インターステラー」です。


「おとなしく夜を迎えるな」


「賢人は闇にこそ奮起するもの」


「消えゆく光に対して果敢に挑むのだ」


映画『インターステラー』予告3【HD】2014年11月22日公開 - YouTube

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