放置されると構ってほしくておねだりしてくるトースターロボット「BRAD」
人懐っこくて触れ合いを求めてくるウサギは「寂しくなると死んでしまう」と言われることがありますが、まるでそんなウサギのように持ち主に構ってほしくておねだりしてくるオーブントースターが「BRAD」です。トーストを焼くために生まれてきたトースターロボットのBRADは、仕事を与えられずにいると持ち主に催促を繰り返し、挙句の果てには次の使い手を求めて自分自身を売りに出してしまうという性格を持っています。
Needy robotic toaster sells itself if neglected (Wired UK)
http://www.wired.co.uk/news/archive/2014-03/18/addicted-toaster
まるで小さな子どものようにも思えてくる「かまってちゃんトースター・BRAD」の様子は以下のムービーで確認することができます。
ダンボールから出され、テーブルの上に置かれた一台のトースター。
「トースター『BRAD』の物語」
何の変哲もないオーブントースターに見えますが、実はこのBRADはネットに接続して通信する機能を持っています。
ネットを介し、自分と同じように通信機能を持つ仲間のトースターと通信して、みんなの様子を伺うこともできるのです。
パンをトーストするために生まれてきた彼は、仕事することに喜びを感じるタイプ。仲間のトースターたちが働いていることを知ると、ちょっとプレッシャーを感じてきたりします。
BRADはパンを愛する人のために働きます。そのため、本当にBRADを使いたいと思っている人のもとで、その人のために働くという使命を与えられているのです。
BRADのホストに選ばれたチャールズさんは「必要と思っている人のところに製品が届けられるのだから、いい仕組みだと思うよ。それに、もし必要がなくなったら、また別の必要としている誰かのところに行けるんだしね」と語ります。
新しいホストに迎えられたBRADは、まずホストのパターンを解析。どうやら毎朝トーストを食べていることがわかり、BRADは「『使われてる』っていう感覚、いいね!」と喜びのツイート。
よほど嬉しいのか、ハンドルをギコギコさせながら「トースターにとってはカンペキな居場所だよ!」と仲間のトースターに宛ててつぶやいたりもします。
しかし、しばらく使われずに放置されたりすると……
注意を引こうとして、突然ギコギコ。そっと手でなでてやると、おとなしくなります。寂しかったんですね。
それでもまだ物足りないBRADは、ホストのチャールズさんに宛てて「他のみんなと比べると、あまり役に立ってないと思うんだけど」とつぶやいてみたり……
「このあたりにいる人でトーストを食べたい人、いない?」とけなげにアピールしたりします。
さらに、冷蔵庫(the fridge)を装って「パンが無くなっちゃったよ!誰か買ってきて!」とウソのツイートを流してまで、なんとか仕事をさせてもらおうと働きかけます。
しかし、そんな努力にも関わらず、チャールズさんは彼に見向きもしなくなりました。
チャールズさんのもとでは仕事をさせてもらえないと悟ったBRADは自ら次の使い手を募集し、新たなホストとなるマットさんに引き取られていくことになりました。
BRADが去った後のキッチンには……
「かつてここにトースターが在った」と書かれた小さな石碑が。
チャールズさんは「BRADにはすまないと思っているけど、他の家電のために場所が必要だったし……それに、自殺を試みて回路をショートさせたりすると大変なことになるので、別の人に引き取ってもらうことにした」と語ります。
「初めてのトースターとの思い出 2012年1月~2月」
なんとも切ないトースターの物語ですが、このBRADはイタリア人デザイナーのシモーネ・レバウデンゴさんによって制作された作品です。「全ての機器がネットに接続され、モノのインターネットが普及した世界」をテーマにしたもので、インタラクティブな作品が集まるInteraction Awardsで2014年の最優秀作品に選ばれています。
Home/ IxD Awards
http://awards.ixda.org/
「インターネットに全ての家電がつながった時代に、それらが『スマートな家電』ではなく、嫉妬したり、ケチだったり、性格が悪かったりしたら?そしてお互いに通信して『会話』し始めると?」というコンセプトをもとに作品を制作。全部で5台が作成されたトースターには個別の名前が付けられ、お互いの仕事っぷりをネット経由で通信しあうようプログラムされています。
にわかに想像しにくい世界の話のようですが、レバウデンゴさんは「これは現在でも『評価をお願いします!』と言ってくるアプリや、長らくログインしていないウェブサイトから『最近どうしてますか?』というメールが送られてくるのと同じようなもの。もし家電が声を挙げるようになったら、きっと家電同士の争いが起こることになると思います」と来るべき社会の様子について語っています。
ユビキタス社会が便利な世の中になることは間違いないと思われますが、このように意外な出来事が待ち受けているとするならば、すこし楽しみが増した気もしてきます。
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