ライトセーバーのように光子を結集させることにハーバード大とMITの共同研究チームが成功
By Antonio Roberts
2つの光を交差させても光は混ざり合うことがなく互いに独立して進むことから明らかなとおり、光子(フォトン)は互いに衝突(干渉)することがない素粒子であると考えられてきました。しかし、ハーバード大学とMITの共同研究チームは、フォトンを互いに干渉させ結束させることに成功し、これまでのフォトンに関する定説を覆しました。
Scientists create never-before-seen form of matter
http://phys.org/news/2013-09-scientists-never-before-seen.html
Scientists create 'light saber' material with photon-binding technique | The Verge
http://www.theverge.com/2013/9/26/4773354/scientists-create-light-saber-material-with-photon-binding-technique
Entanglement between light and an optical atomic excitation : Nature : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nature/journal/v498/n7455/abs/nature12227.html?lang=en
ハーバード・MIT極低温センターの共同研究チームは、ルビジウム原子を真空チャンバーに入れ、絶対零度近くまで冷却したあと、このルビジウムの電子雲にレーザーパルスを使用して、単一の光子(フォトン)を照射しました。
フォトンは電子雲に入射するとエネルギーを原子に渡すため電子雲から抜け出るときには速度が落ちますが、媒体を通過したフォトンは侵入するときと出るときで同一性は維持されています。
しかし、ハーバード大学のミハイル・ルーキン教授とMITのブラダン・ヴレティック教授および研究チームは、ルビジウム電子雲に別々に入れられた2つの異なるフォトンが、互いに干渉し合いまるで一つのフォトンであるかのように結合した状態で電子雲から出てくることを発見しました。
By NASA Goddard Space Flight Center
これまで、リュードベリ励起状態というエネルギーの高い特殊な状態にある原子集合体にフォトンをもつれ合わせる「量子もつれ」状態において、フォトンを保存・放出することに他の研究チームが成功していましたが、このとき「リュードベリ励起封鎖」と呼ばれる効果により、集合体内には励起状態は一度に一つだけしか発生せず、励起状態の原子のそばの原子は励起されないと考えられてきました。
2つのフォトンを電子雲に照射し、一つ目のフォトンが原子を励起した場合、通常であれば二つ目のフォトンによって原子が励起されるならばその前に最初のフォトンは電子雲から離脱するはずです。しかし今回の実験では、異なる2つのフォトンが互いに押し合い引き合いながら一緒にエネルギーを原子に伝え励起状態にしたあと、結合した状態で電子雲から放出されました。フォトンがまるで2つの原子のように振る舞ったということであり、媒体から抜け出るときにはまるで一つのフォトンのように合体していたということです。つまり、これは相互に影響力を及ぼさないと考えられたフォトンが互いに干渉し合ったことを示しています。
このようなフォトンの振る舞いはこれまでにも理論的には考察され議論されていたものの、実際に観察されたのは初めてということです。ルーキン博士は「フォトンが相互干渉するとき互いを押し合います。これらの素粒子の動きは光が結集している点でライトセーバーに似てなくもありません」と冗談を言いつつ、今回のフォトンに関する新発見が、ライトセーバーではなく量子コンピューターへ応用されると期待しています。
By violinha
光は量子コンピューターのメカニズムにとって決定的に重要な要素であるところ、光は粒子であると同時に波でもある(粒子と波動の二重性)ことから伝播性を持ち一定の空間にとどまることがないため、これまで物理学者はフォトンの研究に苦慮してきました。しかし、今回の実験で発見されたフォトンを互いに干渉させうる媒体の存在により、フォトン自体や量子論の研究がより進展するかもしれないとルーキン博士は考えています。
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