燃料や合成繊維の原料として広く使われる石油を生み出す石油精製工場の仕組みとは?

再生可能エネルギーが注目される昨今においても、全世界で1日当たり1億バレル以上の石油が消費されています。2023年時点でも石油は世界のエネルギー消費量の30%を担っており、これはどのエネルギー源よりも高い割合です。そんな石油を生み出す石油精製工場の仕組みを、ソフトバンクが出資する建設系スタートアップのKaterraでエンジニアリングチームのマネージャーを務めたブライアン・ポッター氏が解説しています。
How an Oil Refinery Works - by Brian Potter
https://www.construction-physics.com/p/how-an-oil-refinery-works
石油は優れた燃料というだけでなく、化学原料の90%が石油または天然ガスから作られていることからわかるように、優れた原材料でもあります。すべてのプラスチックは石油または天然ガスから抽出された化学物質から作られており、石油化学製品には潤滑油から塗料、合板、合成繊維、肥料に至るまでさまざまなものが存在します。
膨大な量の石油を消費できるのは、石油精製工場のおかげです。石油は地中から採掘された時点では、何千種類もの化学物質が複雑に混じりあった原油です。石油精製工場はこの混合物を処理し、実際に使える化学物質に変えるという役割を担います。
世界的な石油の消費量を考えると、石油精製工場は世界最大級の工業施設のひとつです。大規模な石油精製工場の場合、その敷地面積は数百万平方メートルを占め、建築には数千億円もの費用がかかります。

そもそも、石油は古代の海底に沈んだプランクトンや藻類などの有機物が分解してできた液体です。有機物の死体は徐々に堆積物に覆われながら、数百万年もの時を経て原油へと変化していきます。原油は数千種類の異なる化学物質の混合物で、そのほとんどは炭化水素、つまり炭素原子と水素原子がさまざまな配列で結合した分子です。原油に含まれる分子はプロパンやブタンのような単純なものから、アスファルテンのような複雑なものまで多岐にわたります。
原油は産出地域により、炭化水素やその他の分子の混合比率が異なります。例えばカナダのオイルサンドなどで産出される原油は重い分子を多く含み、サウジアラビアのガワール油田から産出される原油は軽い分子を多く含みます。北海のブレント油田などで採掘される原油は硫黄含有量が少なく、メキシコ湾などで採掘される原油は反対に硫黄含有量が多くなっています。

石油精製工場の役割は、この炭化水素やその他の分子の混合物を適切に処理することです。つまり、混合物を個々の化学物質または化学物質のグループに分離し、さまざまな化学反応を用いて、価値の低い化学物質をより価値の高い有用な化学物質に変換するわけです。
石油精製工場では原油を分離・処理するためにさまざまな方法を用います。中でも最も重要な工程が蒸留です。原油の中のさまざまな分子はそれぞれ異なる温度で沸騰し、異なる温度で液体に凝縮します。基本的に、小さくて軽い分子は低い温度で沸騰・凝縮し、大きくて重い分子は高い温度で沸騰・凝縮するわけですが、この沸点範囲は蒸留曲線で表すことが可能。
以下が蒸留曲線で、原油のどの部分がどの温度で沸騰するかを示したものです。以下の場合は摂氏350度で原油の半分が沸騰し、摂氏525度で約80%が沸騰することがわかります。原油の種類によって含まれる分子は異なるため、蒸留曲線も異なるものになります。

原油から得られる物質は、沸点範囲によって定義される「化学物質の混合物」であるケースが多いです。例えば、ガソリンは単一の化学物質ではなく、主に炭素原子が4個から12個の分子からなる炭化水素の混合物です。アメリカのエネルギー情報局は、ガソリンを「10%留出温度でカ氏122~158度、90%留出温度でカ氏365~374度の沸点範囲を持つもの」と定義しています。
石油精製工場では、この沸点と凝縮点の範囲を利用して蒸留することで、原油を石油とその他の化学物質に分離します。蒸留過程ではまず塩分が除去され、その後、カ氏650~750度まで加熱され、大部分が蒸気になります。この蒸気は、高さの異なるトレイ(液体で満たされた)に送られ、高温の蒸気が上昇するにつれてそれぞれのトレイで冷却され、液体に凝縮。沸点が最も高い重い分子は最も低い位置にあるトレイで凝縮し、軽い分子は最も高い位置にあるトレイで凝縮します。これにより、異なる分子を分離することができるようになるわけです。

石油精製工場では蒸留塔で原油をさまざまな留分に蒸留しますが、分離される留分の種類は精製所によって異なります。シンプルな石油精製工場の場合、この最初の蒸留ステップである「大気圧蒸留(常圧蒸留)」のみで終わるケースもあるそうです。しかし、ほとんどの石油精製工場は留分をさらに処理するために、さらなるプロセスを経ます。
大気圧蒸留を行う蒸留塔から出てくるガスは、プロパン・メタン・ブタン・イソブタンなど、いくつかの異なる軽質分子の混合物です。この混合物を構成ガスに分離するために、石油精製工場はガスプラントにガスを送ります。ガスプラントは混合物からさまざまな物質を凝縮するよう設計された蒸留塔を複数持っており、まず初めにブタン・プロパン・その他の軽いガスを分離し、その後ブタンとプロパンを分離。すると、蒸留塔の上部からは軽いガス、下部からは重い液体が出てきます。蒸留によって蒸発することなく残る重い分子は残留物と呼ばれ、それほど価値がありません。

続けて、石油精製工場では重油をガソリンなどのより価値の高い留分に分解する接触分解(クラッキング)が行われます。クラッキングは同量の原油からより多くのガソリンを抽出するための方法として、20世紀初頭に発明されました。クラッキングの手法は日に日に進化を遂げており、今日ではほとんどの石油精製工場が何らかのクラッキングを行っているそうです。
大気圧蒸留で得られた重質留分を触媒と混合し、熱と圧力を加えることで、重質分子をより軽い分子に分解。その後、触媒はサイクロン分離機を用いて混合物から分離されます。つまり、混合物を回転させることで、より重い触媒を残りの混合物から分離し、洗浄して再利用するわけです。なお、クラッキングされた油は、別の蒸留塔に送られ、さまざまな留分に分離されます。
石油精製工場ではクラッキング以外にも、さまざまな分子の化学構造を変化させるためのプロセスが用いられています。接触改質ではナフサ留分を触媒の存在下で熱と圧力にさらし、ガソリンの精製に用いられる改質油と呼ばれる新しい化学物質の混合物を生成。異性化プロセスでは、ブタンなどのさまざまな分子の物理的な配置を変化させ、化学式は同じであるものの構造配置が異なる異性体を生成します。水素化処理では、触媒の存在下でさまざまな原油留分を水素と反応させることで、不純物を除去し、品質を向上させます。
これらの工程で発生するさまざまな原料や生成物を貯蔵するため、石油精製工場にはタンクファームと呼ばれる膨大な数の貯蔵タンクがあります。この貯蔵タンクには数百万ガロンもの液体を貯蔵することが可能。プロパンやブタンなどのガスは、通常、加圧された液体として、地上タンク、地下の空洞、または岩塩ドームに貯蔵されます。

ポッター氏は石油精製について、「石油精製プロセス自体は少なくとも概念的には驚くほど単純な場合が多いです。私が驚かされるのは、その規模の大きさです。石油精製が費用のかかる事業であるのは、必ずしもプロセスが複雑だからではなく、処理しなければいけない原油の量が膨大だからです。例えば、シェブロンがリッチモンドに作った石油精製工場は小さな都市ほどの大きさです」と語っています。
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in サイエンス, Posted by logu_ii
You can read the machine translated English article What is the mechanism of an oil refinery….







