高性能なモバイル端末を実現する「Tegra 2プロセッサ」とは?NVIDIAが説明会を実施
NTTドコモの「Optiums Pad(L-06C)」やKDDIの「MOTOROLA XOOM Wi-Fi TBi11M」など、高い性能を実現したAndroid 3.0タブレット端末が続々とリリースされ始めていますが、いずれのモデルにも採用されているのがNVIDIAの「Tegra 2プロセッサ」。
「Tegraプロセッサ」はグラフィックボード「GeForce」シリーズなどでおなじみのNVIDIAが手がけているモバイル向けプロセッサですが、はたしてどのようなもので、どのような性能を実現しているのかなどについて、NVIDIAが説明会を実施しました。
説明会の内容やデモなど、詳細は以下から。
NVIDIA社内に展示されている同社の製品
QUADRO
TESLA
一般ユーザーにおなじみのGeForce
壁には同社のチップセットの写真。
こちらは世界で初めてPC市場向けに製品化されたGPU「GeForce 256」です。1999年に登場しました。
そしてプレスセミナーがスタートしました。
説明を行ったのはNVIDIA日本法人のテクニカル マーケティング エンジニア、スティーブン ザン氏
かつてはデスクトップパソコンを用いたパーソナルコンピューティングが中心でしたが、今はモバイル端末が主流へと移り変わりつつあります。
スマートフォンが一番身近なコンピューティングデバイスとなっていますが、現状ではユーザーのやりたいことを十分にカバーできていません。
そこで登場するのがNVIDIAのTegraプロセッサを採用した「スーパーフォン」というカテゴリ。
世界初のデュアルコアモバイル向けプロセッサ「Tegra 2」を搭載することで、高い性能を実現します。
初代Tegraプロセッサと1円玉や10円玉と大きさを比較したところ。
Tegra 2プロセッサはCPUやGPUに加えて、オーディオやビデオのエンコード&デコードといった特定のタスクを処理できる8つの独立したコアを搭載した「ヘテロジニアス マルチコア SoC(System-on-a-chip)」。1080pのH.264動画の再生もサポートしています。
デュアルコアCPUを搭載したことによる並列化により、パフォーマンスが向上。
クアルコムの第2世代Snapdragon「MSM8255」やTIの「OMAP3640」、Samsungの「PC110」といったモバイル向けプロセッサと比較しても、快適にマルチタスクを利用することができます。
なお、これらのプレゼンテーションは実際にTegra 2プロセッサを搭載した日本未発売のAndroidスマートフォンで行われています。
「Optiums Pad」を利用したデモ
パソコン並のブラウジングを利用しつつ……
YouTubeへのアクセスも可能
さらにゲームもプレイできるなど、マルチタスクを利用する際に高い性能を実現しています。
ブラウジング性能についてもTegra 2プロセッサが断トツという結果に。
AdobeとNVIDIAの協業によって最適化が施されていることで、AdobeのFlashを快適に利用できるのも大きな特徴。
もちろんFlashに代わる技術として注目を集めているHTML5にも対応。
GeForceシリーズのDNAを受け継いでいるため、グラフィック性能が高いのも特徴。
PCゲームを移植することもできるほか、PCと据置型ゲーム機、そしてTegra 2プロセッサ搭載端末のマルチプラットフォームゲーミングも可能です。
Tegra以前ではガクガクしたポリゴンでしたが、Tegra 2によって滑らかなグラフィックを実現可能に。
リアルな影の表現や、さらに繊細なディテールの表現も実現。
詳細な描画や光の表現などにより、ゲームの全体的な完成度を高めています。
片方のコアでチェスマスターレベルの人工頭脳の処理も可能。
モバイル端末向けにゲームを移植する際に、内容を削る必要もありません。
未公開のゲーム情報を見ることもできる「Tegra Zone」
Tegra 2向けに最適化されたゲームの紹介などが行われています。
未発売のゲームのスクリーンショットなども掲載。
ゲームをダウンロードしようとすると、自動的にAndroidマーケットに転送される仕組み。
Tegra 2の省電力技術に関する紹介。
デュアルコアになることで消費電力が上がるかと思いきや、同じ作業をシングルコアと比較して40%少ない消費電力で実行可能になります。
NVIDIAの公式サイトを閲覧した場合、シングルコアではフル回転になりますが、デュアルコアなら2つのコアに負荷を分散することで快適に閲覧できます。
デュアルコアとシングルコアの消費電力計算式。1GHz、1.1Vで駆動するシングルコアCPUと550MHz、0.8Vで駆動するデュアルコアCPUでは、デュアルコアCPUがおよそ58%の消費電力で駆動できる計算に。
電力制御機構の詳細。状況に応じて音楽再生や動画のデコードなど、各個のコアが独立して駆動。
ブラウジング時ではCPUが処理を行い、その後GPUが必要な描画のみを行う……というように、徹底した電力管理を取り入れることで、他社との差別化を図っています。
今後のTegraのロードマップ。今年登場する「KAL-EL」ではTegra 2プロセッサの約5倍にあたる性能を実現し、IntelのCore 2 Duo(T7200)を上回るほか、「STARK」はTegra 2の約75倍の性能となる予定です。
実機デモでもIntelのCore 2 Duo(T7200)を上回る結果に。
なお、「KAL-EL」は世界初のモバイル向けクアッドコアCPUで、フルHD(1920×1080)を超える2560×1600の高解像度表示や1440pの動画再生をサポートするとのこと。
NVIDIAの将来のビジョン。
PC市場ではノートパソコンのシェアが伸びていますが……
スマートフォンやタブレットを加えると、これからのパーソナルコンピューティングはモバイル端末が非常に大きな存在感を発揮するようになることが分かります。
当然、現行のWindowsマシンに用いられているx86のCPUよりも、モバイルCPU「ARM」が圧倒的な出荷数を占めるようになるという予想に。
さらに次期WindowsはARMをサポートすることが正式決定。実際にデモが行われましたが、クアルコムやTIといった競合メーカーがWindowsのAeroインターフェースすら表示できなかったにもかかわらず、Tegra 2プロセッサはMicrosoft Officeなどのアプリケーションも動作するなど、高いパフォーマンスを実現。
また、NVIDIAは次期Tegraプロセッサ用にARM社とライセンス契約を締結しするなどしており、独自にCPUコアの強化を図る予定。
ちなみに同社がモバイル向けに提供している技術は、すでに「GeForce」などで回収できている技術をモバイルに落とし込んだもので、「下から上に上げる」という他社の発想と異なり、「上から下に落とし込む」という発想を行うことができる点に優位性があるとのこと。
また、「NVIDIAがモバイルビジネスに参入した」という声を聞くけれども、技術の進歩でニーズが同社に近づいたという、「市場がNVIDIAに近づいた」というのが実情であり、今後もサーバー、ゲーミングマシン、パソコン、PS3、タブレット端末、スマートフォンなど、あらゆるジャンルの製品に同社の技術を提供するとしています。
NVIDIAに対して行われた質疑応答は以下。
Q:
STARKの性能が75倍という話があったが、どのようなことができるのか?
A:
5年前のスマートフォンでは今のスマートフォンでできることを想像できなかったことを考えると、今では用途を想像できないかもしれませんが、スマートフォンなどのモバイル端末が唯一のコンピューティング端末として活用できるようになる可能性もあるなど、可能性は無限であると考えています。
「STARK」の詳細はまだ公開していないので具体的な部分を話すのは難しいものの、エンタープライズユーザーやコンシューマーの求めるスペックは「あって困ることはない」というのが現状ですね。
Q:
チップで消費電力を減らすことと、タッチパネルなどの他の部品の消費電力を減らすのとでは、どれくらい消費電力が変わるのか。
A:
デバイスメーカーでないと分からない部分はありますが、デバイス全体で言うとパネルのバックライトが占める割合が大きいですね。しかしどの部分の消費電力を落としても、全体の消費電力が下がることは変わらないと考えています。
クアッドコアにすると作業を分担できるので、さらに電圧は下がります。具体的な数字についてはまだ申し上げられませんが、同じ「2時間のHD動画を再生する」と言っても、デュアルコアとクアッドコアだと、クアッドコアの方がさらに消費電力は下がると考えています。
Q:
微細化のスケジュールは?どのくらいの製造プロセスで作るのでしょうか。
A:
ファウンドリーさんのスケジュールにより、それに合わせてロードマップを作成しています。
また、LG電子の次長 マーケティンググループ マーケティングマネージャー 尾花 圭介氏が1080pのフルHD動画を出力してプロジェクターで再生するなど、「optimus PAD」のデモを実施。
YouTube - 「optimus PAD」プレゼンテーション 動画再生
YouTube - 「optimus PAD」プレゼンテーション ゲームプレイ
Q:
アンドロイドのタブレットの差別化というのは難しい課題だと思いますが、ユーザーには実際にどう使ってもらうことを想定していますか。また、日本市場で特に要求される部分はどんなところだと考えていますか。
LG:
私たちの夢としては、1家に1台置いてもらいたいと思っていますが、まだそこまでの状況にはなっていません。「optimus PAD」では将来的に家族で使ってもらえるよう、エンターテイメントの部分を重視しており、「タブレットというのはこんなに楽しいんだ」ということを分かってもらうため、ゲームなどのコンテンツを充実させています。
日本市場で特にという部分では、魅力的なコンテンツを集められるよう努力しています。日本人のスタッフが、日本のベンダーに声をかけて、コンテンツの収集にあたっています。
ハード面ではレザーケースをドコモと共同開発し、手で持って使うだけでなく、立たせて使えるクレードルとしての機能も持たせています。また、海外だとシルバーのプレートが後ろに入っていて重くなっていますが、日本版では外して軽くしています。そのほかの点でも、可能な限り軽くできるように、各所を調整しています。
Q:
「LG world(LGのAndroid端末向けのアプリケーション紹介サイト、LGが電子書籍などをはじめとしたさまざまなコンテンツをコンテンツメーカーから買い上げ、ユーザーに対して提供)」で販売を行う予定はありますか?
LG:
現在のところ販売を行う予定はありません。書籍に関しては、試し読みしていただいた後で、気に入っていただければコンテンツを購入していただくという形をとっています。
NVIDIAのTegra公式ページは以下から。
Tegra | モバイル
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