新興宗教や芸能界の裏情報も扱う月刊誌「サイゾー」の編集部に突撃
明日18日に発売される9月号で100号記念となる月刊誌「サイゾー」の編集部へ取材に行ってきました。
テレビや新聞などに何故か出てこない事実や業界のタブーに迫った記事を多数掲載する月間総合情報誌「サイゾー」はどんな職場で作られているのか、クレームや圧力はあるのか、といった気になる点の話を株式会社インフォバーンサイゾー編集部 編集長の揖斐 憲さんに聞かせてもらいました。
◆サイゾーってどんな雑誌?
GIGAZINE(以下、Gと省略):
サイゾーの表紙には「タブー」や「裏側」といった刺激的なキャッチコピーが並んでいますが、雑誌のターゲットとしてはどういう層を狙っているんですか?
揖斐(以下、揖と省略):
年代や性別や世代で分けられる層としては考えていませんね。マスメディアで扱われる話題の本当のところ、マスメディアには載らないニッチな情報などを知りたい、という方に向けて作っています。インターネットと被っている所もありますが、時間をかけて企画を練ったり、取材をしたりというところでネットとは差別化したいと思っています。
G:
それは初期の頃から同じスタイルなのですか?
揖:
そうですね、あまり変わっていません。ただ、もう少しカルチャー色が強かったかもしれませんが、観点としては最初からテレビ批判がありました。今では関係者に取材をしてテレビには出てこないような情報を引き出したりしていますが、初期の頃は今ほど取材力がなかったので企画で勝負していました。
G:
どういう経緯でマスメディア批判といった路線になったんですか?
揖:
創刊した頃は「今までにない雑誌を作りたい」ということで、既存のメディアがやっていないことをやろうとしました。テレビや今までの雑誌ではやっていないけど各編集者が書いてみたい、ということを寄せ集めて作ったんです。だから、編集者によって企画毎に違うカラーが出ています。僕は創刊当初からテレビや芸能関係を揶揄するようなことを担当していました。版元がゼロから立ち上げた会社だったので、どこかの芸能プロダクションと付き合いがあったわけでもなく、しがらみがないから書けたんですよ。今の感覚で言うと、個人やインディペンデントな企業がやっているニュースブログに近いんだと思います。
100号記念となる9月号の表紙。
◆サイゾーの記事作成に至るまで
G:
話のネタはどうやって集めてくるんですか?
揖:
例えばオタク特集をやろうと思ったら、オタクに詳しいライターさんや業界に携わっている現場の人に声をかけてみます。直接、関係者と話してみる方が良いネタが出てきますから。
G:
スキャンダル的な内容が多く取り上げられていますが、苦情などは来ませんか?
揖:
直接苦情が来ることはほとんどありませんが、芸能関係でいえば、抗議はなくても、取材オファーを無視されたり、記者会見の場に入れてもらえなかったりといった陰湿なものはあります。しかし、宗教関係や大手芸能プロダクションについては、大手メディアがあまりにも情報を出さなさすぎる。うちのように事実や論評しか書かなければ、滅多にクレームなんか来るもんじゃありませんよ。でも、特にテレビはことなかれ主義でタブーが多すぎる。
G:
編集会議の様子はどんな感じですか?
揖:
最初に特集テーマを決めます。それから、テーマにそっていろいろ企画を挙げた中でサイゾーとしてやって面白いもの、独自性や意義のあるものを選んで、そこから編集者が数日で具体的なネタをかき集めてきます。実際に足で稼ぐ部分と、机上で考える部分と合わせて1人10本ぐらい出してもらって、そこから選び出していく感じです。最終的に1人が担当するのは、特集に関しては3~4本ですね。そのほか、カルチャーページやニュースページ、月替わりのインタビューや諸々の連載企画もあるので、若いのに血尿が出たり、ストレス太りしたり、切れ痔になる編集者がいるほど忙しいです。
G:
なるほど。企画自体は編集者だけで出すんですか?
揖:
編集者が各ライターに声をかけることもあります。毎回レギュラーで書いているライターさんに「こういうテーマになったんだけど何か考えてみて」と聞くこともあれば、特定の分野に強いライターさんや業界関係者を紹介してもらって、思わぬ企画が上がったり、ネタは入ることもあります。
G:
サイゾー編集部を支える、エース編集部員はいますか?
揖:
テーマによって違いますね。オタク関係なら、Yくんという、よく誌面に登場する段田安則似の編集者だったり。毎回、自然とその分野に強い人間が中心になります。特集をしているのは4人なので、誰か1人でも欠けると苦しくなりますね。
G:
「words by cyzo」という署名がありますが、一体誰が書いているんですか?
揖:
あれは編集者が書いています。ほかにも、編集者が本名を出したり、ペンネームを使って書く場合もあります。そのほうが、いっぱいスタッフがいるように見えるというのもあるし(笑)、情報元との関係上、署名を使い分けざるをえないこともあるんです。
G:
発行部数と実売部数はどれくらいですか?
揖:
(公称)発行部数が12万部で、実売は6~7割です。いつも購読してくれている固定読者が結構いるので助かります。それに加えて、毎号異なる特集テーマに反応した人がプラスされる感じになります。ジャニーズ特集なんかやると、普段は絶対に買ってくれない十代の女の子も買ってくれる。そういう思い入れの強い人は、「いい加減なこと書くな!」とか、熱い抗議も多いですけど。
G:
今のサイゾーをさらに良くするためにやりたいことはありますか?
揖:
本誌自体でいえば、もう少し読者への間口を広げたいと思っています。今でも女性を表紙に起用して明るい感じにしていますが、週刊誌はスキャンダラスなイメージがあって読みたくないという人でも手に取りやすくしたいんです。マスメディアには出ない情報というのは山ほどあるのに、テレビや新聞の限られた情報だけで世論や国民の価値観が形成されていくっていうのは気持ち悪いじゃないですか。自分で情報を取捨選択して、自分なりの意見をもって生きていくほうが面白いじゃないかと。一応これでも、社会を啓蒙していこうという高い志があります(笑)。
◆サイゾー編集部の中の人たち
G:
サイゾー編集部に就職するのは、どんな人が多いですか。
揖:
サイゾーの読者だった人が多いんじゃないかな。というか、全員そうだと思います。まあ、サイゾーを知らなければ来ないでしょうから、当然ですかね。公募で来た人もいれば、職を転々として紹介で来た人もいるし、大学生の頃からサイゾーでアルバイトして卒業後は業務委託としてやってもらっている人もいる。皆サイゾーを読んでいて、サイゾーが好きだというのは共通しています。
G:
1日の平均的な編集部員のスケジュールを教えてもらえますか?
揖:
僕は基本的に9時か10時出社なんですけど、10時に来て他の編集者が居た試しがないですね。でも、取材などに直行する場合以外は11時~12時までには揃うので、他の編集部よりは早いかもしれません。仕事内容は会社に来たら、まず事務作業やメールチェック、入稿が終わって1週間から10日ぐらいはネタ集めの時期なので、アポイントを取って夕方以降に人に会いに行きます。入稿が始まって、それが終わるまでの1週間から10日ぐらいは会社に居る時間が多くなり、泊まることもあります。
G:
スタッフは何人いるんですか?
揖:
編集者は社員が僕を含めて4人。あとは業務委託の人が2人います。委託の人は20代前半で若く、社員は皆30才ぐらいと結構世代が分かれています。あとは、デザイナーも社内にいます。
G:
昼食や夕食、休息時のおやつなど、食べ物関係はどうしていますか?
揖:
時期によって違いますが、僕は、昼食はコンビニが多いです。仕事が夜遅くまであるので、夕食は24時間やってるような牛丼屋やラーメン屋に行ってます。若い編集者はいろいろ食べ歩いていて店を良く知っていますね。入稿の時期になると、深夜、誰となくせんべいを買ってきてシェアするといった、美しい日本的な編集部の風景も展開されます。買うメーカーも決まっていて、亀田製菓の3種類のせんべいが入っている大袋を必ず買ってくるんですよ。
G:
サイゾー編集部で働く上での自慢や変わったイベント等はありますか?
揖:
創刊者である元編集長、つまり弊社の会長がイベント好きで、たとえば、外部からプロの音楽業界の人を審査員として招いて、他の部署などと対抗でカラオケ合戦をやったことがあります。サイゾー編集部のみんなは、すごくやらされてる感がありますけどね(笑)。入稿終わってすぐイベントの時期が来るから、忙しい中、練習しに行かないといけなかったり。事前は皆不満ばっかりです。でも本番では、全社員本気になってすごく盛り上がる。自分も、イタイと分かっていながら尾崎豊を熱唱。皆、危険なぐらいテンションが上がりますね。人を楽しませたいという気持ちが根底にありますから(笑)。
カラオケ合戦のワンシーン。衣装も気合いの入り方が尋常じゃない。
しかも全員がそのテンションというスゴさ。
G:
サイゾーを毎号世に送り出していく中で、苦労したエピソードや伝説的エピソードはありますか?
揖:
今でもネタにしていますけど、創刊して間もなく、ある大手芸能プロダクションとテレビ局などの間で実弾、つまり現金が飛び交っていると書いたら、その大手芸能プロと傘下の芸能プロに嫌われてしまった。締め切りギリギリになって、すでに撮影したタレントの写真が使えなくなったので無理矢理別の写真(ストリップ劇場のフォトルポの1カット)をはめ込んだ事もありました。そのタレント自体は全然別の事務所だったんですが、大手芸能プロから「サイゾーには協力するな」と言われたみたいで。「本当にこんなこともあるんだなあ」と当時は思っていました。忘れられない出来事ですね。
これが急遽画像差し替えとなったページ。
G:
今後の方針や新展開などコッソリ教えてください。
揖:
サイゾー的な視点のニュースを毎日配信するニュースサイトを立ち上げる準備をしています。「明日○○のスキャンダルが出るらしい」といったような、リアルタイムで乗せないと意味がなくなってしまう情報が結構入ってくるので。一ヶ月後だと忘れられてしまうようなライブ感の高いニュースを日々発信できるようなサイトを立ち上げたいと考えています。
G:
本日はお忙しい中、時間を割いていただきありがとうございました。
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