アメリカでは核戦争に備えて「核シェルターまで5マイル」「できるだけ速いスピードを維持せよ」といった道路標識が準備されている
アメリカの道路標識や信号機などの規格を定める統一交通制御装置マニュアル(MUTCD)には、「核シェルターまでの距離を示す標識」や「放射性物質が多いエリアを素早く通過させるために高速移動を要求する標識」といった核戦争を想定した道路標識が準備されています。
MUTCD 11th Edition - FHWA MUTCD
https://mutcd.fhwa.dot.gov/kno_11th_Edition.htm
If You Ever See This Speed Sign, You're Probably Going To Die - The Autopian
https://www.theautopian.com/if-you-ever-see-this-speed-sign-youre-probably-going-to-die/
2023年に発行されたMUTCD第11版に記された「核シェルターまでの距離を示す標識」が以下。この標識はMUTCD内の「緊急自体用の標識」を提示する章に掲載されており、生物兵器・化学兵器が使われた地域や放射性降下物で汚染された地域で使うことが想定されています。
また、「MAINTAIN TOP SAFE SPEED(安全を保てる最高速を維持せよ)」という道路標識も用意されています。この標識も放射性降下物などで汚染された地域を横断する状況を想定したもので、既存の速度制限標識の上から取り付けることも許されています。また、「MAINTAIN TOP SAFE SPEED」という標識が必要となる緊急事態では通常の速度区分に従うことが非現実的となるため、「最低制限速度を口頭で指示する」という運用が実施されるとのこと。この標識がある地点に長居することは好ましくない結果を生むため、とにかくアクセルを踏み込んで最速で通り抜ける必要があります。
これらの標識は冷戦中に策定されたもので、核兵器によって地上が放射性物質に汚染されるリスクが現実的なものとして議論されていたことを示しています。実際に、1971年版のMUTCDには「民間防衛のための標識」と題した長い章が設けられています。
なお、上記の標識の実際の使用例は報告されていませんが、アメリカには「爆撃訓練場の付近につき、飛行機からの落下物に注意」という警告表示が実在しているそうです。
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