サイエンス

細胞分裂による増殖が可能な人工生物が作り出される


正常な細胞と同じように細胞分裂して増殖する単細胞合成生物「JCVI-syn3A」を開発したと、J・C・ベンター研究所とマサチューセッツ工科大学、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)の合同研究チームが発表しました。

Genetic requirements for cell division in a genomically minimal cell: Cell
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(21)00293-2


Scientists built a perfectly self-replicating synthetic cell | Live Science
https://www.livescience.com/synthetic-cell-division.html


JCVI-syn3Aの顕微鏡映像が、YouTubeで公開されています。

Genes Necessary for Cell Division in Modern Bacterial Cells Identified - YouTube


人工の細菌を作り出す試みは今回が初めてではありません。J・C・ベンター研究所は、ヤギの感染症を引き起こすMycoplasma mycoidesという細菌から天然のDNAを取り除き、人間が編集したDNAを注入した「JCVI-syn1.0」を2010年に作りました。


さらに2016年、研究チームはこのJCVI-syn1.0を基にして、塩基配列(ゲノム)を実験用培地で増殖できる最小限まで減らし、合計473種類の遺伝子情報しか持たないDNAを注入したJCVI-syn3.0を作成しました。このJCVI-syn3.0は細胞分裂を続けて増殖することができましたが、細胞分裂が正常に行われず、増殖を重ねるたびに形態が大きく変化していくという問題がありました。顕微鏡映像を見ても、大きさがバラバラになっていることがわかります。


そこで研究チームは、JCVI-syn3.0に新しく19種類の遺伝子情報を追加することで増殖による形態変化を抑え、より正常な細胞分裂を行うような単細胞合成生物「JCVI-syn3A」を設計しました。


研究チームによれば、細胞分裂プロセスをより規則的に実行するのに関わっている遺伝子は7種類だけで、そのうち「ftsZ」と「sepF」という2つの遺伝子については、細胞膜の物理的特性を変化させ、適切な分裂を可能にさせる働きがあることがわかりました。ただし、細胞分裂のメカニズムにどの遺伝子がどう働きかけるかは完全に解明されておらず、研究チームはその解明を将来の研究課題としています。


研究チームは「私たちは生命の基本的な設計規則を究明したいと考えています。このJCVI-syn3Aがその設計規則の解明に役立つなら、私たちは一歩踏み出すことができます」と語りました。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1i_yk

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