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「3Dプリンターが新型コロナウイルス感染者の命を救った」という報告


2020年3月16日の段階で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療法は確立されておらず、行われている治療はウイルスが増殖することで生じる発熱や咳を緩和する対症療法限られています。そんなCOVID-19の対症療法に追われる医療現場でのトラブルが、3Dプリンターによって解決したと報じられています。

Coronavirus and 3D printing - 3D Printing Media Network
https://www.3dprintingmedia.network/covid-19-3d-printed-valve-for-reanimation-device/

COVID-19に対する治療法が確立されていないため、記事作成時点でCOVID-19を治療できるのは「人体に備わる免疫システム」のみといえます。しかし、COVID-19は低酸素血症などを引き起こして人体にダメージを与えるため、体内の免疫システムを十全に稼働させるためには人工呼吸器などの医療機器によるサポートが必要です。

各国でCOVID-19の感染が拡大する中、イタリアは1日のCOVID-19による死者数がこれまでの最多となる368人を記録。同国内でも北部イタリアのロンバルディア州知事は病床と人工呼吸器の不足を警告しました。

イタリア、新型コロナで新たに368人死亡 州知事は病床不足を警告 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3273505


そんな渦中のロンバルディア州ブレシア市の病院で、集中治療に使われる人工呼吸器の「弁」が壊れるという事件が2020年3月13日に発生しました。病院は人工呼吸器の納品業者に部品供給を依頼しましたが、納品業者にも在庫がありませんでした。

偶然にもこの病院を取材していた地元紙Giornale di Bresciaの記者であるNunzia Vallini氏は、直ちにイタリアで3Dプリンターの普及に努めるMassimo Temporelli氏に連絡。Temporelli氏はインダストリー4.0のプロモーターを勤めているだけでなく、3Dプリンターのワークショップであるファブラボをミランに創立した3Dプリンターの専門家でした。

Temporelli氏は独自の連絡網を生かしてこの状況を打破することができる人を捜索。この連絡によって、ブレシア市近隣で3Dプリンター関連のビジネスを運営するIsinnovaの創設者であるCristian Fracassi氏が3Dプリンターを持って病院に到着、Fracassi氏はわずか数時間で人工呼吸器の弁を3Dプリンターで作り上げました。以下が壊れた弁(左)とFracassi氏が3Dプリンターで作り上げた弁(右)。大きさや形状などが微妙に異なりますが、十分使用できるものだったとのこと。


3Dプリンターはその後も弁を複製し続け、現地時間2020年3月14日の時点で10人の患者が3Dプリンターで製造された弁を使った人工呼吸器を使用しているそうです。同じくブレシア市を拠点とする機械加工製造元のLonati S.p.A.はレーザーを用いた粉末床溶融結合法を使って、問題の弁の大量生産を行っています。


このニュースを報じた3D Printing Media Networkは、「パンデミックがどのようにグローバルサプライチェーンに影響を与えるかが未知数であるため、3Dプリンターがどのように新型コロナウイルス感染症の諸問題に貢献できるかは明確ではありません。しかし、サプライチェーンが崩壊した場合、3Dプリンターはすぐに役立つといえます」とコメントしています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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