ハードウェア

高画質を追求してきたカメラは今後「見えない物を撮る」方向へと進化していく


デジタル化が進んだカメラ技術は、高画素化などの「画質」を高めるための進化を続けてきました。しかし、今後、カメラ技術は、画質とは別のベクトルである「直接見ることのできない物を見る」という観点でも技術的に進化していくことが予想されています。

The next generation of cameras might see behind walls
https://theconversation.com/the-next-generation-of-cameras-might-see-behind-walls-90258

一般的なデジタルカメラは単一光源によって照らされる光景をとらえるために多くの受光素子(ピクセル)を持つセンサーを使って記録します。これに対して、「シングルピクセルカメラ(1画素カメラ)」は、その名の通り1つのピクセルで光の情報を記録します。


シングルピクセルカメラでは、1つの画像を作るために多くの照明からの光情報を得なければならないという大きな欠点があります。しかし、シングルピクセルカメラを使うことで、霧が立ちこめたり雪が降ったりしていて見通しが悪い状況でも被写体をはっきり映し出す技術が開発されています。また、動物の視覚システムと同じように一部分の解像度を高めることで状況に応じて情報量を増やせる技術などが開発されています。

さらに、シングルピクセルカメラの技術と「量子もつれ」の概念を融合することで、被写体とやりとりをしていない光子から被写体の画像を得ようとする研究も行われています。

シングルピクセルカメラとは別の方向性として、「マルチセンサーイメージング」技術も開発されています。マルチセンサーイメージングとは異なる波長で撮影された複数の画像を組み合わせて一つの合成画を得るもので、代表的な例はハッブル宇宙望遠鏡です。宇宙望遠鏡だけでなく、Lytroのような焦点の後から変更するためにもマルチセンサーイメージングは活用されています。

ピント合わせも露出調整も後から自由自在な「LYTRO ILLUM」は以前の「Lytro」に比べ進化しまくっていました - GIGAZINE


このように、画質を上げるのとは別のカメラ技術が開発されてきており、この延長線上に、「見えないものを見る」という新しい技術がカメラに適用されるという予想もあります。例えば、ヘリオット・ワット大学では曲がり角の先にある隠れた物体を検出する技術を開発中です。

Laser camera can track hidden moving objects around corners | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/dn28628-laser-camera-can-track-hidden-moving-objects-around-corners/

レーザーを使って隠れた物体を見るカメラの仕組みは、以下のムービーで解説されています。

Seeing around corners using lasers - YouTube


コーナーで隠れた被写体を映し出すカメラの研究を行っているのはヘリオット・ワット大学のダニエル・ファシオ博士の研究チーム。


コーナーに遮られて直接見ることができない物体を、カメラで検出しようという試みです。


隠れた物体を見るために使うのは「レーザー」


レーザーポインターで床を照射しています。


床に到達したレーザーからは、ごく少量の光子がエコーのように球状に反射し広がっていくとのこと。


反射して物体に到達した光子は、再び反射して返ってきます。


通常のカメラでは光子を検出することは不可能ですが、光子の位置を毎秒200億フレームで検出できる特殊なカメラを使用することで、物体から跳ね返る光子の情報から、物体の形状や動きを検出しようというわけです。


周波数6700万Hzのレーザーパルスから出た反射光子の信号の「差」から、物体の位置を計算できるとのこと。


この技術を発展させることで、救助を待つ建物を調べたり、見えない角から突然現れる自動車を検出したりする技術への応用が期待されています。

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in ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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