まるで「第二の月」のように地球を回る天体の素性が明らかにされる
2016年に発見されていた天体「2016 HO3」の素性が明らかになりました。この天体はまるで月のように地球の周りを回っている「ナンチャッテの月」ともいえるものだったのですが、表面の組成や自転周期などが判明したことで人工物ではない「小惑星」であることが確認されました。
Earth Almost Has A New Moon - And We've Finally Gotten A Decent Look At It | IFLScience
http://www.iflscience.com/space/earths-newest-companion-is-definitely-an-asteroid-and-not-space-junk/
2016 HO3の調査を行っていたのは、アリゾナ大学のヴィシュヌ・レディ助教授らによる研究チームです。天体の存在自体は2016年に明らかになっており、その大きさが約30メートルから100メートルの範囲であることはわかっていたのですが、はたして実際にどのような物体なのかがはっきりとは確認されていませんでした。そのため、実は小惑星などではなく人間が打ち上げたロケットのエンジンである可能性も考えられていたのですが、今回の調査で他の小惑星と同じような物質で構成されている小惑星であることが確認されています。
「ナンチャッテの月」というのは、以下のムービーで示されたように、まるで月のように地球のまわりをグルグル回っているような運動をしているところに由来しています。2016 HO3は地球とほぼ同じ公転軌道と公転周期で太陽を回る小惑星ですが、その軌道が地球の公転軌道とクロスするため、ある時は太陽と地球の間に、そしてまたある時には地球よりも遠い位置に存在することになります。その動きを地球を基準に描いた以下のムービーを見れば、実際に2016 HO3が月のように地球のまわりを周回する動きを見せることがわかるはず。
Asteroid 2016 HO3 - Earth's Constant Companion - YouTube
2016 HO3と月の最も異なる点は、月は地球の重力圏に捉えられているのに対し、2016 HO3は太陽の重力圏に捉えられて公転しているというところ。そのため、2016 HO3は太陽を周回する「小惑星」であり、地球から見ればまるで月のような「準衛星」でもあるという、ユニークな性質を持っています。また、月が地球を回る公転周期は約27日であるのに対し、2016 HO3が太陽を周る公転周期は地球と同様にほぼ365日となっています。そのため、2016 HO3が地球を回る公転周期は「およそ365日」となっています。
2016 HO3は、地球に接近する軌道を持つ地球近傍天体 (Near Earth Object:NEO)の一つで、全部で5個確認されているNEOのうち2016 HO3は最も軌道が安定した小惑星であることがわかっています。ただし、最も地球に接近しても1400万km (=地球から月までの約38倍)という遠い場所にある最大で長さ100メートルという天体のため、その組成は不明とされていました。
レディ氏らのチームは、アリゾナ州にある天文観測施設「大双眼望遠鏡」 (Large Binocular Telescope:LBT)で2016 HO3を観測することで自転周期と天体の表面が反射する光のスペクトル分析を実施。その結果、2016 HO3の自転周期が28分であること、そして天体の表面が金属などの人工的なものではなく、他の小惑星のような自然な物質によって構成されていることが判明。ここから、2016 HO3は人工物ではなく小惑星であることが確認されています。
なお、2016 HO3と地球の距離は大きく変動しており、先述の通り最も近い地点でも地球から月の距離の38倍で、最も離れた時になると地球と月の100倍の距離となっています。LBTのクリスチャン・ヴェイレ氏は、「我々が知っているNEOの中でも、この種の天体は最も人間が到達しやすいものになるため、安定した探索の対象になるでしょう。LBTの2枚の直径8.4メートルの主鏡を持つ観測設備と、オハイオ州立大学の「MODS」 (Multi-Object Double Spectrographs)のような設備がもたらす非常に有用な画像およびスペクトラムデータを組み合わせられることで、LBTは2016 HO3のような地球に属する天体の研究に最適な設備となるでしょう」と語っています。
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