ロボットを用いて農業を完全自動化するプロジェクトで大麦の種まき・世話・収穫に成功


トラクターは最初の商用自動運転車のひとつです。自動運転車の他にも、農薬散布用のドローンやセンサー満載のドローンなど、農業で使える自動ロボットの巨大市場が存在します。それでも農業はまだまだ人間の行う領分というイメージがあったのですが、ハーパー・アダムス大学では自動運転車とドローンだけを使い、1エーカー半(約6000平方メートル)という面積で大麦の種まき、世話、刈り入れを行うことに成功しています。

Autonomous Robots Plant, Tend, and Harvest Entire Crop of Barley - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/automaton/robotics/industrial-robots/autonomous-robots-plant-tend-and-harvest-entire-crop-of-barley

ハーパー・アダムス大学による農業と自動ロボットの可能性を探るプロジェクトの名前は「Hands free hectare」。このプロジェクトでは大麦の種まき・世話・収穫をロボットのみで行い、この間、畑に人間が足を運ぶことはありませんでした。

Hands free hectareプロジェクトでは研究の進捗状況がYouTube上で公開されており、以下のムービーでは自動運転技術を用いてトラクターで畑を耕す様子が見られます。

HFHa #28 - drilling, rolling and the crop now - YouTube


また、トラクターを用い、必要に応じて自動で殺虫剤・除草剤・肥料を散布することも可能。

HFHa #15 Tractor autonomously spraying in the Hands Free Hectare - YouTube


現代の農業では地面に種を落とせば勝手に植物が育つというわけではありません。農薬・除草剤・肥料の量や、収穫を行う時期などは、作物の状態に関するデータに依存しています。これらの決定を行うため、ドローンなどのロボットを用いて畑を調査してデータを収集しています。作物の様子を調査するために使用されるロボットの中には、サンプリング用の小さな自動運転ロボットもあり、車体に搭載された小さなシャベルで土や作物のサンプルを入手します。

HFHa #22 Robo Scout for plant sampling - YouTube


サンプリングには小型の自動運転ロボットの他に、ドローンも使用されています。以下のムービーで登場するドローンは大麦の穂が実ってから使用されるもので、穂から実をサンプルとして持ち帰ってくれます。

HFHa # 30 The Clam Grabbing Barley Samples - YouTube


そしてサンプルとして持ち帰った大麦が十分に乾燥していることが確認された場合、数日中にロボットを用いた自動収穫が実行されます。以下のムービーはロボットを用いた収穫の様子が見られるムービーで、実際には1エーカー半の収穫に約6時間がかかったそうです。

#34 'Ands It Off' Farmers weekley Harvest Live - YouTube


なお、プロジェクトでは1ヘクタールあたり4.5トンの大麦を収穫することに成功したそうですが、これは一般的な方法で栽培・収穫された場合の平均値である6.8トンよりも大幅に少なくなっています。Hands Free Hectareプロジェクトに参加した学生は「1ヘクタールあたりで言えば、これまでで最も高価な大麦」と語り、イギリス政府から20万ポンド(約2900万円)の予算を得ていることも明かしています。ただし、予算の大部分はトラクターや収穫用の機械などを購入するために費やされているため、整備がそろった今後は大幅に安く大麦を作ることができるようになるとのことです。


農業を完全に自動化することである程度の労力を節約できる可能性はありますが、他にも多くの利点があります。完全に自動化した農業用車両の場合、運転席に人間が座る必要がなくなるため、車両自体のサイズをよりコンパクトにしたり、車両全体をより効率的に使ったりすることが可能になります。また、ロボットを用いることで、最小限の労働力で24時間365日農場を維持することも可能となります。

Hands Free Hectareプロジェクトの他にも、DeepFieldTertillのような農業用のロボットが複数登場しているように、農業の自動化は増え続ける世界人口を養うための実用的な方法として少しずつ成長しているように思えます。

なお、Hands Free Hectareプロジェクトでは冬にも作物の収穫を計画しており、その間、収穫した大麦を用いてビールを造っているとのことです。

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in 乗り物,   サイエンス,   動画,   , Posted by logu_ii

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