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スペインに根付く「シエスタ」のライフスタイルを変えようとする動きが活性化

By ejbSF

スペインではお昼に2~3時間の休憩をとって昼寝をする「シエスタ」と呼ばれる文化が根付いていると言われていますが、その生活スタイルを終わらせて他の国々と同等の生活サイクルを取り入れることで、経済的な競争力を身に付けようという動きが、当のスペイン国内から湧き起こっています。

What's the Deal With the Crazy Spanish Workday? - CityLab
https://www.citylab.com/life/2017/07/say-goodbye-to-spains-glorious-three-hour-lunch-break/534120/

カタルーニャ地方の110もの専門機関は2017年7月中旬、2025年までに伝統的な長い昼休みを廃止して労働者が今よりも早い時間に仕事を終えるようにするプラン「Reforma Horària」(訳:「時間改革」)への賛同姿勢を明らかにしました。

Objectiu 2025 reforma horària


この動きが本格化するとスペインにおける「働き方」が大きく変化することになるものと見られています。スペイン特有といわれる2~3時間に及ぶ長いお昼休憩はスペイン特有の地理的条件や歴史的背景によって培われてきたものなのですが、その影響で労働者が仕事を終わらせる時間が遅くなるほか、その後の夕食や余暇の時間がどんどんと後送りにされてしまうことで、眠りにつく時間が遅くなっていると言われています。その結果、スペイン人の平均睡眠時間は他のEU諸国に比べて1時間も短いという統計結果もでているとのこと。

これを「労働環境の改善による経済的な競争力の強化」ととるか、「スペイン的生活の破壊」と受け取るかは人によってそれぞれと言えますが、必ずしもこれは「シエスタ文化の終焉」ということにはならないといいます。さもすれば「毎日3時間のお昼寝」とステレオタイプ的に受け止められているシエスタですが、実際にはその文化はもう何十年も前に終わっているといわれているためです。

現在のスペインの一般的な仕事のタイムテーブルは、朝の8時から9時の間に仕事を始め、正午から少し遅めの13時30分から14時30分頃からお昼休みを取るとのこと。そこから、人にもよりますが、最大で3時間の休憩時間をとった後に17時前後から仕事を再開し、20時ごろに仕事を終えて帰宅の途につくというパターンにます。今では、特にビジネスパーソンに分類されるタイプの人はこのパターンにあてはまらないこともあるそうなのですが、むしろ、20時ごろまでの勤務時間が一般化しているところに問題があるとされています。

By Franck Michel

そして、帰宅時間が遅くなることで夕食の時間が遅くなり、さらにその後にゆったりとくつろいだり、趣味や娯楽に費やす時間も遅くなる傾向にあるとのこと。そのため、スペイン人の多くは深夜になってやっと眠りにつく人が多いという傾向があるそうです。

この「シエスタ文化」が誕生したのは、スペインの地理条件に起因しているといわれています。他のヨーロッパ諸国に比べて南に位置しているスペインには強い日差しが照りつけるため、特に午後になると気温が高くなりすぎてしまい、まともに仕事をこなせないほどの状況になるとのこと。特に、多くの人々が農業を営んでいた時代に顕著な問題で、人々は暑すぎる昼間の時間帯には家に帰って長めの休憩をとり、気温が下がった頃を見計らって仕事を再開するという生活パターンに落ち着いてきました。


この生活パターンが生まれた頃は、勤務地は自宅の近くにあるというのが一般的でした。しかし、現代のように都市部で多くの人が働くという時代になると、自宅に帰るだけでも時間がかかるほか、多くの人々が移動することで都市部に渋滞が発生し、都市機能に悪影響を与えているとも言われています。また、シエスタが盛んに行われていた最盛期でも、実際には昼寝する間も惜しんで家事をこなしていたともいわれています。

さらに興味深いのが、スペインが採用しているタイムゾーンに関連する事実。スペインはヨーロッパでも最も西の地域に属しており、タイムゾーンとしてはイギリスやポルトガルなどと同じ西ヨーロッパ時間が適切といえますが、実際にはドイツやフランスなどの中央ヨーロッパ時間に属しています。つまり、スペインでは本来よりも1時間早く1日が始まり、1時間早く正午が訪れているという状態。これは、第二次世界大戦の際にナチスドイツと同じタイムゾーンを当時のフランコ首相が選択したことによるもので、その影響を今でも引きずっているというわけです。

By World Time Zone Map

このような生活サイクルを、特に平日を中心に変えていくことで、他のEU諸国が持つ仕事スタイルに合致していこうというのがReforma Horària運動の狙いとなっています。この運動は仕事だけでなく、学校の時間割をも変えることにもなるほか、午後の交通渋滞を解消し、お昼の間に閉められてしまう商店が減ることで、生活が便利になるという効果もあるとされています。また、現在はテレビのプライムタイム(ゴールデンタイム)が夜遅い時間帯になっているために、どうしても人々の就寝時間が遅くなってしまっていますが、帰宅時間が早まることでこの弊害が改善されるとも期待されています。

この動きがカタルーニャ地方で起こっているというのも興味深いところです。フランスとの国境に接し、スペインからの独立を目指しているカタルーニャ地方はスペイン北部に位置しているため、南部に比べて気候が穏やかなためシエスタの必要性がそれほど高くないとされています。そんな状況があること、そしてEU諸国のスタイルに合致しているとはいえないシエスタを廃止することで「脱スペイン・親EU」の姿勢を明確にするという狙いも込められているとみられます。なお、スペイン政府もシエスタからの脱却を目指す動きを示してはいるものの、実現に向けた具体的なタイムラインはいまだ示されていないのが実情。

しかし、実際にこのムーブメントが実現するかどうかは微妙な問題といえるとのこと。前述のように、スペインの時間は本来あるべき姿よりも1時間早く設定されているため、太陽が南中する本当の「正午」はスペイン時間で13時ごろにあたります。そのため、夜の訪れも本来より遅い時間となってしまい、連鎖的に夜更かしの傾向が強まってしまうという背景が存在しています。また、制度を整えても実際に人々の生活スタイルが変わるかどうかも別問題。シエスタおよび夜更かしの傾向は「必要だから」というより、むしろ「そうしたいから」という気持ちによるともみられています。人々の生活スタイルを変えるのは、一筋縄では行かないのかもしれません。

By Katja

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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